【医師監修】逆子と発覚!原因とリスク・治し方とは
赤ちゃんは妊娠中期まではおなかの中で回転していますが、たいていは頭を下にした「頭位」に落ちつきます。妊婦健診で頭を上にした「逆子」だと言われたらどうすればいい? 外回転術や逆子体操の有効性、分娩方法の決め方などを解説します。
逆子ってどういう状態?
赤ちゃんがおなかの中で、頭が下向きになった状態のことを「頭位(とうい)」といい、頭が上でお尻や足を下に向けていることを「骨盤位(こつばんい)」、一般には「逆子(さかご)」といいます。
初期には逆子の状態でも、後期になると多くの赤ちゃんが頭位に落ち着きます。最終的に、逆子の状態になる赤ちゃんは全体の3~4%[*1]で、まれに横向きの「横位(おうい)」、斜め向きの「斜位(しゃい)」の赤ちゃんもいます。
逆子になりやすい人はいるの?
逆子は、何らかの原因で赤ちゃんが自分で回転することが妨げられて逆子の状態のままになると考えられています。例えば子宮の形の異常や胎盤の位置の異常など、母体側の原因で起こるものや、早産(低出生体重児)、多胎妊娠、羊水過多など、胎児側の原因で起こるものがありますが[*2]、多くの場合の原因は不明です。
また、一人目の赤ちゃんが逆子なら二人目も逆子になりやすい、ということもありません。
逆子の分娩がむずかしいわけ
逆子のままでも経腟分娩(けいちつぶんべん)が可能な場合もありますが、現在、日本では頭位以外の赤ちゃんの経腟分娩は帝王切開による分娩に比べてリスクが高いと判断され、多くの場合、あらかじめ帝王切開と決めておく「予定帝王切開」での分娩になっています[*1]。
赤ちゃんにどんなリスクがあるの?
赤ちゃんは分娩のとき、狭い産道を進まなくてはなりません。そのとき、体の中で比較的大きくて、丸くて固い頭が下にあるときは、頭が子宮の壁とピッタリ密着するため、頭が子宮頸部を圧迫刺激することで、産道が広がりやすくなります。
ところが、お尻や足が下だと子宮の壁との間にすき間ができ、破水した時にすき間からへその緒が外に出てしまい(臍帯脱出)赤ちゃんが危機的な状況になる、やわらかいお尻が下にあると子宮口への刺激が小さく微弱陣痛で分娩に時間がかかる、分娩時に赤ちゃんが骨折する、などの危険があります。
中でも危険なのは、赤ちゃんの体が出た後でへその緒が赤ちゃんの頭で圧迫され、赤ちゃんの血流が止められ、低酸素状態になることです[*4]。
「骨盤位外来」に行ったほうがいい?
近年、産婦人科の医療機関の中に、逆子の赤ちゃんとママを専門に診る「骨盤位外来」を開設しているところがあり、36週ごろの妊婦に逆子を頭位に戻す「外回転術」が実施されています。外回転術はお腹の上から赤ちゃんの体を手でつかむようにして、ゆっくり体の向きを変える手技です。
外回転術の成功率は医療施設によって違いますが、60~70%と言われています[*5][*6]。
ただし、外回転術自体にもリスクがありますし、逆子なら必ず外回転術を受けなければいけないわけではありません。また、赤ちゃんがトラブルを抱えている、帝王切開の既往がある妊婦さんである、など状況によっては受けられない場合があります。また、現状では骨盤位外来は数が少なく、かかりつけ医の紹介状が必要、あるいは同じ病院内の産婦人科にかかっている人しか診ていないというところもあります。
逆子の出産で不安なことがあれば、まずかかりつけ医に相談しましょう。
妊娠初期は頭が上でも、ほとんどは自然に直る
赤ちゃんは羊水の中で自分で回転する
妊娠初期~中期までの赤ちゃんは、子宮のスペースに余裕があるため、羊水の中で頭を上にしたり下にしたりして、自由に回転しています。その後、妊娠後期までに多くの赤ちゃんが頭を下にした状態で落ち着きます[*7]。分娩直前に頭位になる赤ちゃんもいます。なので、逆子の予定帝王切開で入院した場合でも、入院の時に逆子であることを再確認しています。
「胎位矯正」(いわゆる逆子体操)で自己回転を促すのは?
妊娠30週になっても頭位にならない場合に、赤ちゃんの自然回転を促す体位をとる「胎位矯正」「逆子体操」があります。しかし、やってもやらなくても回転する確率が変わらないことがわかったため、最近は医師・助産師も勧めていません。
35週を過ぎても逆子が直らないときは
かかりつけの先生の説明をよく聞きましょう
妊娠35週ごろまでは、赤ちゃんがおなかの中で自己回転して、自然に頭位になるのを待ちましょう。それを過ぎても逆子のままという場合は、経腟分娩にするか、帝王切開にするか決めなくてはいけません。もう一つの選択肢として、「外回転術」を36週ごろに行い、逆子を頭位にして経腟分娩する方法があります[*8]。
どの方法にするかは、赤ちゃんの胎位や成長度合、ママの体の状態、産科の人員や設備などを総合的に検討して判断しなければなりません。
それぞれの安全性とリスクについて、よく説明を聞き、どの方法にするか考えることが大切です。
まとめ
お腹の中で頭を上にしていることを、一般的に逆子といいます。通常は頭を下にして生まれてきますが、逆子のまま出産となると、危険を回避するために様々な対応が必要となります。しかし、どんな分娩も100%安全が保障されているわけではないというのは、赤ちゃんが逆子の場合も頭位の場合も同じです。経腟分娩でも、分娩中に何らかの理由で帝王切開に切り替わることがありますし、外回転術が早産の引き金になり、帝王切開に至ることもあります。不安があったらかかりつけ医に相談し、予想外のトラブルをできるだけ少なくするためにも、定期的な妊婦健診を必ず受けるようにしましょう。
(文:山崎ひろみ/監修:太田寛先生)
※画像はイメージです
[*1]『Baby+お医者さんがつくった妊娠・出産の本』p47 日本産婦人科学会 監修
[*2]『病気が見える 産科 Vol10』第3版 p277 メディックメディア
[*3]『CG動画でわかる!肩甲難産・骨盤位への対応』序文 編集 竹田省ほか メジカルビュー社
[*4]『病気が見える 産科 Vol10』第3版 p278 メディックメディア
[*5]日本産科婦人科学会ガイドライン産科編 CQ402 P246
[*6]『病気が見える 産科 Vol10』第3版 p280 メディックメディア
[*7]『暮らしの実用シリーズ 最新版 初めての妊娠・出産』P85 学研パブリッシング
[*8]『病気が見える 産科 Vol10』第3版 p279 メディックメディア
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます