【医師監修】妊婦のスクワット<写真で解説>|時期別のやり方とおすすめの運動
妊娠後も適度に体を動かした方がいいとよく聞きますが、老若男女問わず人気のスクワットなどの運動は妊娠中も行っていいのでしょうか? 出産に備えて体力づくりを考えている妊婦さんに知っておいてほしい運動に関する情報をまとめました。
妊娠中のスクワットのやり方
スクワットは正しくやらなければ効果が少なく、しかも種類によっては結構ハードな運動です。そのため「負荷の強い筋トレNG」の妊娠中には、負荷が大きく動きが激しいタイプのスクワットは行えません。
しかし、妊娠期間によりやり方を工夫すれば、出産に備えた体力づくりにスクワットを取り入れることができます。筋トレではなく体力づくりであることを忘れないで、無理なく続けられるように動きを軽減してください。
また、ご紹介する回数はあくまで目安です。回数にはこだわらず、正しい動作・ポーズを意識してやってみましょう。
妊娠期間別、スクワット活用法
妊娠前から運動習慣のある人もいれば、ない人もいます。運動に対する体のポテンシャルは一人一人違うので、一概にいうのは難しいのですが、出産に備えて、体力づくりにスクワットを取り入れるならどのようにすべきか、松峯先生に妊娠期間別の注意点をお聞きしましたので参考にしてください。
・妊娠初期
まだお腹も大きくなっていない初期は、ついつい動きが激しくなってしまう危険があるので、運動効果より体調優先し、スクワットを始めるのは中期以降で。運動したいときはウオーキングや階段上りなどをして過ごしましょう。
・妊娠中期から31週ごろ
主治医からとくに注意を受けていない人は、無理のない範囲で次項で紹介する「ゆっくりスクワット」をやってみましょう。ほかにも軽い有酸素運動を行うのもOKですが、無理は禁物です。
・32週〜37週未満ごろ
「正期産」(37週以降に生まれた場合)となるまでスクワットは念のためお休みするか、動きを軽減し、転倒予防に十分な配慮をしましょう。ウオーキングや階段上りなど、軽い有酸素運動は無理のない範囲で続けられます。
・正期産に入ってから(37週以降)
体調がよく、主治医からもとくに注意がない場合は、軽い有酸素運動を続けることができます。とはいえ体はもう出産準備に入り、いつ陣痛や破水が起きてもおかしくない状態に変わっていることを心に留めて、安全と体調に配慮して行ってください。
「ゆっくりスクワット」のやり方
本来、筋トレのスクワットでは地面と太ももが平行になるまで上体を下げますが、妊婦さんの場合は無理して下げようとすると転倒の危険があります。無理のない、安全な範囲で下げる程度でも、正しい姿勢で行うと十分な運動になります。
ゆっくりスクワットの基本姿勢
・広げる足幅は肩幅と同じくらいに
・つま先は正面に向け、親指の付け根・小指の付け根・踵への体重が同じくらいになるように立つ
・背筋を伸ばし、正面を見る
・腕は机などにつかまるか、壁につく
ゆっくりスクワットの正しいやり方
1. 基本姿勢をつくる
2. 息を吐きながら、股関節と膝を一緒に曲げる。
※背中はまっすぐのまま、腰骨を太ももに近づけるように、股関節から折り曲げ、椅子に腰掛けるようにお尻を後ろにひくイメージ。
※膝はつま先と同じ方向を向くように注意。
※この時常に、足の裏では、親指の付け根・小指の付け根・踵への体重が同じくらいになるように意識。
3. 一度息を吸い、息を吐きながら膝が伸びきらない程度に立ち上がる
4. 2〜3を10回繰り返す
5. 1分休む
6. 残り2セット行う(目安は10回 × 3セット/日)
(スクワット指導・監修:近藤加那先生)
臨月に行う際の注意点
松峯先生は「37週以降にゆっくりスクワットをするのは、お産のときにはたらく下肢の筋肉を動かすことができ、出産への準備体操としてもいいこと」とする一方で、臨月にスクワットをすると陣痛発来・促進の効果があるという通説については「医学的な根拠はありません」と否定しています。
「ゆっくりスクワット」は出産に備えた体力づくりとして行うもの。臨月は転倒予防として必ず「何かにつかまる」「壁に手をつく」などして、くれぐれも安全最優先で行ってください。
妊娠中、運動した方がいい理由
妊娠中に行う運動の効果とはどのようなものでしょうか? また、運動してはいけない場合についても、覚えておきましょう。
妊娠・出産にいい運動習慣とは?
度な運動は健康づくりに欠かせない要素のひとつですが、妊娠による自然な体の変化(体重の増加、体を巡る血液量の増加、関節の緩みなど)はどちらかといえばスポーツには不向きな変化なので、負荷の強い筋トレや競技的性格の強いスポーツなど激しい運動をするのは妊娠期間にかかわらず厳禁です。
では、妊娠中の適度な運動とは、どのようなものでしょうか?
それは全身の筋肉を使い、酸素を十分に取り入れる「軽い有酸素運動」です。
軽い有酸素運動はリフレッシュ効果があるほか、早産のリスクを増加させずに筋肉や柔軟性を養って、血行を促し、体力をつけることや、低出生体重児(赤ちゃんの出生体重が2,500g未満となること)のリスクを増加させずに巨大児(赤ちゃんの出生体重が4,000g以上となること)出生のリスクを下げることが医学的な研究で明らかになっています[*1]。
目安として1回60分以内の軽い有酸素運動を週に2~3回行うとよいと考えられています[*2]が、体調次第で軽減し、無理をしないことが大切です。
とくに妊娠初期と臨月直前(32週〜37週未満)は運動効果より体調(妊娠経過)を大切に考えましょう。
そして、日頃から運動習慣のなかった人は、「赤ちゃんのため」と思ってがんばりすぎてしまわないように、よく注意しながら運動習慣を定着させていきましょう。
医師から運動制限を伝えられている場合は指示に従う
主治医からとくに運動を禁じられていない場合は、先に紹介したウオーキングなどの軽い有酸素運動をすることができます。次のような場合は主治医から運動が禁じられることがあります[*1]。
・心疾患、呼吸器疾患など、切迫流産、切迫早産、妊娠高血圧症候群、性器出血、前期破水のほか妊娠経過に影響する可能性のある症状やそのリスクがある場合
妊婦におすすめの運動
妊婦さんにおすすめできる軽い有酸素運動にはどのようなものがあるでしょうか。
軽度の有酸素運動No.1のウオーキング
「妊娠中期以降は、腰にかかる負担を軽減できるので、浮力がはたらくプールでの水中ウオーキングもいいでしょう」
マタニティプログラムのあるヨガやピラティス
深い呼吸とともに体を動かすヨガやピラティス、また、エアロビクス、スイミングなどのマタニティプログラムも、妊娠期間に合わせた体の動きやポーズについてアドバイスがもらえて、人気があります。
暮らしの中でできるお産にいい運動!
「お産のときにはたらく下肢を鍛えることができる動きなので、通勤や買い物などでの外出の際にも気軽にできるとすすめています。 特別に運動の時間をとらなくても暮らしの中で“隙間運動”でき、十分な運動になります」
まとめ
運動して体力をつけることは大切ですが、無理は禁物です。健康を保ち、出産に備える体力づくりのために、無理のない範囲で適度な運動を続けましょう。
「自分に適した運動については、主治医にアドバイスをもらうのもいいかもしれませんね」
※画像はイメージです
参考文献
[*1]日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―産科編2017」
[*2]一般社団法人 日本臨床スポーツ医学会, 妊婦スポーツの安全管理基準に関する提言, 2003
内外出版社「妊娠・出産パーフェクトBOOK」(宋美玄著)
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます