【医師監修】妊娠中期のイライラ・苛立ちはどうして? 4つの対処法
お腹のふくらみがわかりやすくなり、胎動も感じ始める妊娠中期。赤ちゃんがいることを実感する日々を送りつつも、どうしてもイライラした気持ちが止められないときがあります。今回はそんな「妊娠中期のイライラ・苛立ち」について考えてみましょう。
妊娠中期はどんな時期?
妊娠初期(~妊娠13週)は、つわりで「食事すらままならない」など、つらさを感じる人も多いです。また、妊娠後期(妊娠28週~)は大きくなったお腹の重みなどで、腰痛やむくみなどマイナートラブルも増加します。
一方、妊娠中期(妊娠14~27週)は、お腹もさほど大きくなっておらず、つわりの症状もよくなってくる時期。俗に「安定期」と呼ばれる妊娠中期は、他の時期に比べると、身体面では安定しているころでしょう。
イライラって、具体的にはどんなもの?
それでは、イライラ・苛立ちはどんな時に感じるものなのでしょうか。
自分の思うようにならず、気が焦る様子を「イライラしている」「苛立っている」と表現しますが、その原因は、以下のように大別できます[*1]。
〇ホルモンバランス的イライラ:自分の意思とは全く関係なく生じる
〇精神的イライラ:思い通りに事が運ばないときに生じる
〇両者の合わさったイライラ
では具体的に、妊娠中のイライラの原因について考えてみましょう。
妊婦がイライラする原因は?
「妊婦さんは心穏やか」というイメージがある人もいるかもしれませんが、実は妊娠中はイライラして当たり前の状況なのです。
女性ホルモンの影響
妊娠中のイライラの背景に、女性ホルモンの分泌量の変化があります。
妊娠中はホルモンのバランスが不安定になります。女性ホルモンバランスの変化は脳がストレスに耐える抵抗力を低下させるので、ストレスを処理しきれずに脳が機能不全に陥ります。そうすると、些細なことでイライラしたり絶望するなど、ものごとを悪くとらえる傾向が強くなるのです[*2]。
妊娠によるホルモンバランスの変化は、妊娠のためには大切なものですが、その変化によってイライラを感じやすくなるということです。
さまざまな制約
妊娠中は、控えなければいけない食べ物・飲み物なども多く、また体重やその他の検査値などから、産院で生活指導を受けることも少なくないでしょう。
ホルモン変化同様、これらも、すこやかに赤ちゃんを育み無事出産するために大切なこと。しかし、気をつける事項が多岐にわたることが精神面で負担になり、イライラを感じる人もいます。とくに妊娠中期はつわりから解放されて、久々の「飲食の喜び・楽しみ」を感じる時期なので、希望と制約のギャップが苛立ちにつながることもあるかもしれません。
妊娠によって生じた悩み
赤ちゃんを授かる喜びがある反面、妊娠することで新たに生じる悩みもあります。
例えば、パートナーや義理の親との関係が上手くいっていない、計画外のタイミングで授かったなどのケースのほか、出産後の保育所・仕事との両立・家事分担はどうするかといった悩みが、妊娠週数を重ね、出産が現実味を帯びてくると浮上してくることもあるでしょう。
こういった心理的なストレスが、イライラ、不安、抑うつ(気分が落ち込む、ものごとへの興味・関心が薄くなる)といった反応として現れるのです。
妊娠中のイライラ対策
では、妊娠中のイライラにはどのように向き合っていけばいいのでしょうか。
1. イライラして当たり前と開き直る
イライラしてしまう自分に「どうしてこうなんだろう」と思い、余計に苛立ってしてしまうことも。妊婦はイライラするもの、自分だけではないんだ、ということを認識して、気楽に構えましょう。
2. 「絶対ダメ」と「ほどほどに」のラインを知る
妊娠中は気をつける事項が多い一方で、「絶対ダメだ」と思い込んでいるものの中には「ほどほどであればOK」ということもあるものです。
例えば、カフェインに関して「妊婦はコーヒーを飲んだらダメ!」ということはありません。もちろん、飲みすぎはいけませんが、カフェイン200~300mg/日程度が妊婦の上限とされていて、コーヒー1~2杯を楽しむ分には問題がないでしょう[*3]。
ダメなことばかりに目を向けず、可能な範囲で、今に自分にできることを楽しむ工夫をするといいでしょう。
3. ストレス対処法を見つける
妊娠中は食事だけでなく、旅行などの行動にも気をつけなければなりません 。そうすると、妊娠前のストレス解消法が実行できないこともあるでしょう。
ストレスを解消できないまま抱え込むのではなく、ストレスと上手に付き合う方法(ストレスコーピング)を工夫することも効果的です 。
ストレスコーピングは大きく2つに分けられます。
①問題焦点コーピング:ストレスの基となっている人・物事に直接働きかけ、変化を促して解決する
②情動焦点コーピング:ストレスの基そのものに働きかけるのではなく、自分の捉え方(考え方、感じ方)の変化を促して解決する
全ての問題で①の方法が可能なわけではないので、時には②のように自分自身の「物事の捉え方」を変えることが、 ストレスからくるイライラ・苛立ちの改善に奏効することもあります。
4. 打ち明けられる人・サポーターを作る
妊娠・出産で心の中に葛藤があっても、他の人に打ち明けることなく、日常生活を送っていることが心の状態を悪くしていることもあります。
妊娠中の今だけでなく、産後も精神面で不安定になることが少なくありません。産褥期の精神障害のひとつに「産後うつ病」がありますが、孤独な育児で周囲のサポートがない環境は疾患を発生させる因子になりえます。
相手はパートナーに限りません。家族、友人、医療者、支援センターなど、思いを打ち明け、相談できる先を今のうちから作っておくことも大切です。
◆妊娠や出産に関する悩みを相談できる先の例
東京都:妊娠相談ほっとライン
https://www.fukushihoken
神奈川県:妊娠SOSかながわ
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/cz6/cnt/f533186/
埼玉県:にんしんSOS埼玉
https://sos.saitama.jp/
千葉県:にんしんSOSちば
https://sos.chiba.jp/
その他の道府県:全国の女性健康支援センター
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000569211.pdf
まとめ
一般的に体調が安定して生活しやすい時期である妊娠中期ですが、不安定なホルモンバランスや妊娠中期特有の制約などによって、それほど妊娠初期はイライラしなかったのに、中期に入ってからイライラしてしまうことも少なくありません。苛立つ気持ちを一人で抱え込むのではなく、ひとつひとつ具体的な対策を打って、気持ちを楽にしていきましょう。
(文:マイナビ子育て編集部/監修:宋美玄先生)
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※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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