【歯科医師監修】子供にむし歯が! その原因と治療、予防について
赤ちゃんの口の中にかわいい歯が見えてきたり、子供の歯が生えそろってきたりするのは、親にとって嬉しいわが子の成長です。でも、歯が生えると心配になるのが、むし歯ではないでしょうか。今回は、むし歯の原因と治療、そしてむし歯にしないための予防法などを詳しく解説します。
- 子供のむし歯はどうしてできるの?
- むし歯の原因は?
- むし歯ができやすいのはどこ?
- むし歯になりやすいのはどんな人?
- むし歯になると歯にはどんな変化がある?
- 子供のむし歯の予兆は?
- むし歯の段階と症状は?
- 子供のむし歯の治療はどんなふうにするの?
- 治療は進行具合によって変わるの?
- 子供のむし歯の治療に行くタイミングは?
- 子供のむし歯予防はどうしたらいい?
- 歯みがきのやり方
- 歯みがき以外の予防方法
- 子供のむし歯 Q&A
- Q.むし歯はうつるって本当?
- Q.乳歯は永久歯に生え変わるのに、乳歯のむし歯は治療が必要?
- Q.乳歯のむし歯治療で銀歯をかぶせました。永久歯への影響は?
- Q.歯みがきに使う歯ブラシは、どのようなものがいいですか?
- まとめ
子供のむし歯はどうしてできるの?
むし歯がなぜできるのか、何となく知っているけれど詳しくはわからない、という人も多いのでは?まずは、むし歯になるメカニズムやむし歯になりやすい人などについて説明します。
むし歯の原因は?
むし歯の原因の前に、まず歯の構造がどうなっているかを知っておきましょう。私たちの歯は、中心に神経や血管で構成される歯髄があり、その上に象牙質、さらに表面はエナメル質という硬い組織でおおわれています。
細菌の塊、プラーク
口の中にはいろいろな種類の細菌が数多く住んでいて、中には食べた物に含まれる糖分を栄養にして増え、その際にネバネバの物質を放出して歯の表面に付着する細菌がいます。そのネバネバにおびただしい数の細菌が集まってかたまりとなったのがプラーク(歯垢)です。
プラーク中の細菌がむし歯を作る
プラークの中の細菌は、砂糖や炭水化物を分解して酸を作って歯の表面のカルシウムを溶かしていきます。その結果、歯に穴があいてできるのがむし歯です。そして、酸を作り出す原因となるむし歯菌の代表が、ミュータンス菌です。
むし歯ができやすいのはどこ?
むし歯はプラークがつきやすい場所にできやすいのですが、プラークは白っぽく、歯に近い色なので見逃しやすいのです。そのため、歯みがきでみがき残しをしやすい場所、とくに奥歯のしわや溝などへこみのある場所や、歯の根元で歯茎に近い場所、歯と歯の間などは、プラークを取り除くために念入りにしっかり磨くことが必要です。
むし歯になりやすいのはどんな人?
むし歯のなりやすさは、食生活と歯みがきによるプラークコントロール、生まれ持った歯の質、唾液の量や質(pH)などが影響します。
「間食が多い」「だらだら食べ続ける」はハイリスク
何かを食べると、プラーク内の細菌によって糖分が分解されて、口の中は酸性に傾きます。ふつう、口の中の環境は唾液の働きによって食後30分くらいで中性に近くなります。
しかし、たびたびお菓子食べたり、ジュースやスポーツドリンクなどを飲んだり、長時間だらだら食べたりするといった食生活を送っていると、むし歯菌が歯を溶かす酸を作り続けることになってしまい、唾液が酸性に傾いて、口の中を中性にコントロールするという唾液本来の働きができなくなるため、むし歯になりやすいのです。
噛む回数や食事内容も影響
歯みがきがうまくできなくて、口の中にプラークが残ったままになっているような状態は、もちろんむし歯になりやすいものですが、さらに、甘くてやわらかいパンなどばかり食べていると、噛む回数が少なくなるため噛むことで分泌される唾液の量も少なくなり、食べ物やプラークが流されず残り、むし歯になるリスクが高くなります。
それとは逆に、野菜など繊維質の多い食べ物は、食べながらも歯の清掃に役立つといわれています。
むし歯になると歯にはどんな変化がある?
「むし歯」と聞くと、茶色い穴があいた歯などをイメージするかもしれませんね。でも、そのような状態になるまでに、初期からいくつかの段階を経て徐々に進行が進んでいきます。
子供のむし歯の予兆は?
歯の表面はエナメル質という硬い組織でおおわれていて、健康な歯のエナメル質は透明感のある白い色をしています。 むし歯ができ始めると、その部分のエナメル質が不透明な白色になってきます。
また、歯みがきをしてもとれない「ホワイトスポット」という白い斑点や白い線、シミが歯にできるのが、いわゆる初期むし歯です。この段階ではまだ痛みなどはありません。
なおホワイトスポットは、遺伝や全身疾患、栄養障害などによるエナメル質形成不全が原因でできる場合もあります。
むし歯の段階と症状は?
むし歯は、ごく初期から末期まで以下のように5つの段階に分けられています。最初は痛みもなく、削る治療は不要ですが、ひどくなると神経まで進行してはげしい痛みや腫れが生じることもあります。さらには抜歯が必要になってしまうこともあります。
1.C0(ごく初期のむし歯)
歯の表面のエナメル質が解け始める「脱灰(だっかい)」が起こります。この段階はまだ痛みはなく、削る治療は必要ありません
2.C1(エナメル質が溶けたむし歯)
初期のむし歯で痛みはなく、治療もほとんどの場合は麻酔は使いません。
3.C2(神経近くまで進行したむし歯)
むし歯が象牙質まで進んだ状態です。歯に穴があき、冷たいものがしみて痛みも感じるようになります。治療には局所麻酔が必要になることが多くなります。
4.C3(神経まで侵されたむし歯)
むし歯がかなり進んでいるため、冷たいものだけでなく熱いものもしみて、激しい痛みを伴います。進行具合によっては、神経を取り除く根管治療が必要になることもあります。
5.C4(末期のむし歯)
歯の歯茎から出ている部分がむし歯に侵され激しく痛むようになります。さらに進行すると神経が壊死してしまうと痛みは感じなくなりますが、化膿して根に膿を持つようになると強い痛みと頬まで腫れたりすることがあります。そこまで進行すると、歯を抜かないとならないこともあります。
子供のむし歯の治療はどんなふうにするの?
むし歯も軽いうちなら削る治療は不要ですが、ひどくなると抜歯が必要になることも。嫌がったり怖がったりする子供に治療を受けさせることは親子ともに大きなストレスになりますから、早期発見・早期治療が何より大切です。
治療は進行具合によって変わるの?
むし歯の進行状況は子供も大人も5段階に分けけられているので、その段階やむし歯の状況によって適切な治療が行われます。
・C0:歯みがきの指導やフッ素などの塗布をするだけで、歯を削る治療は必要ありません。
・C1:むし歯部分を削り、歯と同じような色の修復材を詰めるという簡単な治療ですみます。治療はたいてい麻酔なしで行い、1回の治療ですむことがほとんどです。
・C2:むし歯部分を削って取り除きますが、痛む場合は麻酔が必要になります。削った部分には金属やレジンという歯と同じような色の詰め物などで元の歯の形に修復します。乳歯の治療にはセラミックはほとんど使うことはありません。
・C3:この段階になると、神経と炎症部分を取り除く根管治療が必要になります。穴が大き
いと金属冠などを全体にかぶせることもあります。状態によっては治療回数も長期になることもあります。
・C4:C3と同様に、根管治療を行ったうえで歯全体をおおう金属冠をかぶせることが多いですが、ひどい場合には、抜歯が必要になることもあります。永久歯に生え変わるまでの時期により対応が変わります。
子供のむし歯の治療に行くタイミングは?
子供の歯に、歯みがきしてもとれない白い線やシミのようなものができていたら、ごく初期のむし歯が疑われます。特別な治療をしなくてもすむよう、できるだけこの段階のうちに早めに受診したいものです。
もし、見た目でわかるような穴が歯にあいている場合は、かなり進行している状態です。子供が痛みを訴えるだけでなく、フロスを使ってみて引っかかったり、食べ物がよく詰まるような場合も、進行したむし歯のサインと考えましょう。
子供のむし歯予防はどうしたらいい?
むし歯予防と言えば、まずは歯みがきです。歯が生え始めたら、まずは口の中をさわることから始めて、正しいやり方で歯みがきをする習慣をつけていきましょう。
歯みがきのやり方
まずは慣れることから
歯が生えたらすぐにむし歯予防を始めるのが理想です。 まずは、親が口の中をさわることに慣らし、慣れたら乳児用歯ブラシでみがいて親が仕上げみがきをするといいでしょう。
みがき方ですが、赤ちゃんの場合はいきなり歯ブラシでみがくのではなく、頭を親のひざのうえに乗せてあお向けに寝かせ、清潔にした親の指を口に入れて中を観察することから始めます。
歯ブラシを使い始める前に見せたり、触れさせることも大切です。赤ちゃんだからわからないだろうと思わずに、「このブラシで歯をきれいにするのよ」などと声をかけて見せてあげましょう。こうして、まずはあおむけの姿勢になって、口の中をさわられることに慣らします。
歯が少ないうちはガーゼなどで拭う
歯の本数が少ないうちは、口の中をさわる練習を兼ねて、授乳後や食後にガーゼで歯をふきとるといいですね。また、おっぱいやミルクを飲んでいる時期の赤ちゃんは、上唇の内側にカスがつくことがあります。上唇の内側は唾液で汚れを落としにくいので、上唇をめくってカスがついていたら、ガーゼなどでふいてあげましょう。
歯ブラシに挑戦!
口の中をさわることに慣れてきたら乳児用の歯ブラシを使いますが、最初は1~2回軽く歯に触れることから歯みがきの練習を始めます。歯ブラシを口の中に入れることに抵抗がなくなり慣れたら、歯1本につき5秒程度でいいのでやさしくみがきます。
「食べたら、歯みがき」が習慣になり、子供が自分でみがきたがるようになったら、歯ブラシを持たせてやらせてあげましょう。ただ、歯ブラシをくわえたまま動いてしまうと、何かの拍子に転ぶなどして歯ブラシでのどを突く危険があります。事故予防を考えた形態の歯ブラシもありますが、歯ブラシを持ったら、歩いたりせず、静かにみがくよう教えましょう。
小学生低学年ぐらいまでは仕上げみがきを
なお、子供が1人でしっかり歯をみがけるようになるのは、永久歯の奥歯が生えそろう小学校中学年ごろになってからです。それまでは、仕上げみがきもしっかり続けて下さいね。
歯みがき以外の予防方法
歯みがき以外にも、むし歯予防には方法がいくつかあるので知っておきましょう。また、以下の方法のほか、歯の原料となっているミネラルを添加した歯を丈夫にする効果が期待できるペーストも、最近ではよく勧められています。
キシリトール
キシリトールは、糖アルコールという甘味炭水化物の一種で、白樺やかしの木などからとれる天然素材の甘味料です。歯を溶かす菌が作られないようにしたり、菌が増えるのを防ぐ働きがあるとされています。キシリトールが使われているチョコレートやグミ、ガムなどのお菓子も多いので、子供のおやつに取り入れてみるのもいいでしょう。
フッ素
フッ化物は歯を硬くする働きがあり、乳歯・永久歯ともに生えてきたらすぐに塗るのが効果的とされて、子供のむし歯予防法として歯科医院や保健所などで広く行われてきました。多くの歯みがき剤にも含まれています。
ただし、フッ素を塗ったり、フッ素入りの歯みがき剤を使っていれば、むし歯にならないというわけではありません。フッ素の使用についてはまず歯科で相談するといいでしょう。
シーラント
歯みがきでは十分きれいにするのが難しく、むし歯になりやすい奥歯の溝に詰め物をする方法がシーラントです。 「シーラント材」はほとんどの場合フッ素が添加されていて、それを詰めることでむし歯が発生したり進行したりすることを予防します。
ただし、シーラントをしても、むし歯にならないというわけではありません。また、シーラントをしても一部が欠けたりとれたりすると、その部分からむし歯になりやすくなることがあります。そのため、シーラント材を詰めた場合には定期的に小児歯科を受診し、シーラントの状態をチェックしてもらうことが必要です。シーラントに興味がある場合は、かかりつけの小児歯科に相談を。
子供のむし歯 Q&A
子供のむし歯に関して、よくある疑問にお答えします。
Q.むし歯はうつるって本当?
A.本当。唾液を介してうつります
むし歯は人から人にうつる細菌感染症です。身近な家族にむし歯が多い家庭では、子供がむし歯になるリスクも高くなります。
むし歯のある人が子供に対し、食べかけを食べさせる、使用済みのスプーンやストローを使わせる、コップやペットボトルを回し飲みするなどのことで、唾液を介してむし歯菌がうつってしまうのです。日常生活でついしてしまいがちなことばかりですが、家族にむし歯がある場合はとくに気をつけて接し、子供にむし歯をうつさないようにしたいものですね。
Q.乳歯は永久歯に生え変わるのに、乳歯のむし歯は治療が必要?
A.さまざまな悪影響があるので、必ず治療を!
乳歯のむし歯は進行が早く、神経まで進行してしまうと永久歯が生えようとしているのに乳歯がうまくとれなくなることがあります。また、「どうせ抜け替わるのだから」と歯に穴が開いたままでいると、歯並びが悪くなってしまう可能性もあります。むし歯を放置するということは、口の中にむし歯菌を飼っているようなものなので、当然、永久歯もむし歯になりやすくなってしまいます。ですから、乳歯がむし歯になった場合もできるだけ早く受診しましょう。
Q.乳歯のむし歯治療で銀歯をかぶせました。永久歯への影響は?
A.永久歯への影響は心配いりません
むし歯が神経まで進行していた場合には、永久歯への生え代わりがうまくいかなくなることもあります。そのため、永久歯が生えるまでのスペースを確保する必要から、銀歯をかぶせることもあります。
銀歯自体が永久歯に影響することは、まずありません。金属アレルギーの心配や何か気になる症状がみられたときは、治療をした歯科医に相談しましょう。
Q.歯みがきに使う歯ブラシは、どのようなものがいいですか?
A.ヘッド部分が小さい乳幼児用を選びましょう
赤ちゃんや子供用の歯ブラシは、月齢・年齢に応じた乳幼児用のものを選んでください。毛の長さが歯の幅2本分くらいでヘッド部分が小さく、毛先が丸く加工してあるものがおすすめです。仕上げみがき用の歯ブラシは、柄が長めのものなら大人も持ちやすいでしょう。いろいろな製品が市販されているので、ドラッグストアやネットショップなどで見比べて、使いやすそうなものを選んでください。
まとめ
くり返しますが、むし歯は細菌感染症です。生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には、むし歯菌はいません。むし歯菌が両親や祖父母など身近な家族から感染しないように注意し、まずは3歳までむし歯にさせないことがとても大切です。そのためには、家族もむし歯を作らないよう、規則正しい食生活や正しい歯みがきを心がけましょう。
もし、子供にむし歯の兆候が見られたときには、早めに受診してください。できれば、むし歯ができる前から定期的に歯科を受診しておくことをおすすめします。歯みがきも、やみくもにブラッシングするだけではむし歯予防の効果はあがりませんから、歯みがき指導をしてもらうためにも、むし歯を早期発見するためにも、日ごろから歯科医に相談しておけると安心です。そのためには、歯に関するさまざまなことを気軽に聞ける、かかりつけの歯医者さんを見つけておくと心強いですね。
(文:村田弥生/監修:石塚ひろみ先生)
※画像はイメージです
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます