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2022年06月27日 06:41 更新

【対談】第3回:戸棚の鍵が壊れている園は危ない? 幼稚園・保育園の経営者が考える子どもの安全対策とは #保育園・幼稚園の頭のなか

子育て中の家庭にとってなくてはならない、保育園と幼稚園。今回は東京と埼玉で複数の園を運営されているお二人に、3つのテーマについて話し合ってもらいました。第3回のテーマは「保育における安全について」です。

東京と埼玉で人気の幼稚園・保育園経営者2名による対談連載。第2回目では、「保育におけるコミュニケーションの取り方」をテーマに、中村さん・野上さんが運営する園のコミュニケーションの手法などについてお話をお伺いしました。

最終回の第3回目は、「子どもを守るための、保育における安全性」をテーマにお届けします。

ご協力いただいた方々

<左>野上美希(のがみみき)さん
学校法人 野上学園社会福祉法人 風の森を運営。久我山幼稚園、認可保育所picoナーサリ、アフタースクール久我山キッズなどを展開している。基準の2倍以上の職員配置で、保育の働き方改革を実施中。

<右>中村敏也(なかむらとしや)さん
株式会社SHUHARIを運営。埼⽟県志⽊市・朝霞市・新座市に「保育園 元気キッズ」(認可保育所・⼩規模保育所)を展開している。そのほか、病児保育、学童保育、児童発達支援事業、保育所等訪問支援事業、相談支援事業などを開設。著書に『発達が気になる子どもへの関わり方を教えてください! 発達障がい、グレーゾーン…』『保育園運営の教科書 保育・療育で地域オンリー1になる』(ともにかざひの文庫)がある

手洗いを教えるのに使うのは、ブラックライト!?

中村さん(以下、中村):新型コロナウイルス感染症が流行してから、どのような対策をされていますか?

野上さん(以下、野上):どこも同じだと思うのですが、やはり全職員・子どもたちが登園時に必ず検温し、手洗いをこまめにしています。また送迎の保護者の方にも、体温チェックなどは徹底していただくようお願いしています。

中村:マスクはどうされていますか? うちは職員及び保護者の方は必須ですが、子どもは義務化していません。特に2歳までは窒息の恐れなどもありますし。

野上:うちも2歳まではしていませんが、3歳以上はマスクをすることもあります。アフタースクールの小学生、職員や保護者の方は必須です。今後は屋外等では規制が緩和されそうですね。

中村:屋外で距離が離れている場合は必須じゃなくなると、暑い時期の外遊びもしやすいですね。うちはそのほかにパーテーションを設置したり、手洗い後はタオルではなくペーパータオルで拭くようにしています。SDGsには逆行していますが、感染対策のためです。
ペーパータオルを使用して、感染予防(イメージ)
野上:うちの園も同じです。 そうそう、以前、子どもは特に手洗いが適当になりやすいので、ブラックライトを使って、サッと洗っただけでは汚れが落ちないことを教えたんですが、すごくびっくりしていました。あとは看護師さんたちから感染予防について話してもらうこともあります。

中村:ブラックライト! それは楽しく手洗いを学べそうですね。

午睡時や食事時の事故を防ぐには?

野上:保育における安全といえば、まずお昼寝時のSIDS(シズ:乳幼児突然死症候群)対策ですよね。SIDSは原因不明なので家庭においてと同じく完全に防ぐことはできませんが、なるべくリスクを軽減するために内閣府が出している保育施設向けのガイドラインがあります。

中村:そうそう、布団は柔らかすぎないようにする、顔にタオルケットや布団がかからないようにする、うつぶせ寝にさせない、0歳児は5分・それ以上は10分おきに呼吸を確認する、顔色等がわかるよう部屋のカーテンは少し開けて暗くしすぎない、などですね。今は保育用アプリ内にチェック項目がありますし、ほとんどの園ではきちんとチェックして記録を残していると思います。

野上:窒息は、食事のときの誤嚥でも起こり得ますよね。うちの園では丸くて滑りやすい巨峰やミニトマトなどは必ず切る、詰まりやすいパンなどは適量を口に入れているかどうか見守るなどの対策を取っています。あとは、かえって咀嚼しないと食べられないものにすると誤嚥しづらかったり、よく噛む練習にもなったりしますね。

中村:咀嚼、大事ですね。しっかり噛まないと顎が発達しませんから。うちの園でも、子どもたちによく噛むよう声掛けしています。そうそう、食事といえばアレルギーも要注意ですよね。食物アレルギーのある子どもは食器への記名やトレイの色を変えたり、ほかの子から席を離したりして、間違えないよう細心の注意を払っています。
アレルギー園児への対応として、元気キッズではトレイとスプーンは別の園児と違うものを使用、ほかの園児と同じ食器になる場合は記名シールを貼る、食べる際にはひとり用テーブルを使用するなどの対策を徹底している(提供:元気キッズ)
野上:確かに、それも大事です! やはり小さいと食物アレルギーの病識があるわけではないので、アレルギーのある子がほかの子のご飯を勝手に取って食べてしまったり、ほかの子がアレルギーのある子に自分の食事をあげてしまうリスクも考えられるので、見守りが欠かせません。

置き去りや事故をなくすために

中村:少し前、福岡県で送迎バス内に取り残されたお子さんが熱中症で亡くなるという非常に信じがたい事件がありましたね。

野上:親御さんやお子さんの無念さを思うと、大変つらい事件です。普通、園バスって運転手さん以外に保育者も乗っていて乗車時と降車時に人数や名前を確認しますし、子どもたちが降りてから忘れ物や落し物がないかどうか車内チェックもすると思うんですが。

中村:そうですね。また教室に行ってからも点呼があり、欠席の連絡がないのに人数が足りないとなると、その時点で大捜索することになるだろうと思います。

野上:本当に誰でもうっかりすることはあるので、複数人での確認及び点呼は絶対に必要です。園内でも定期的に点呼を取るべきですし、外出時も少なくとも出かける時・目的地に着いた時・帰る時に必ず点呼を取らないといけません。

中村:うちはそれぞれの子どもたちの希望に合わせて複数の公園に分かれて出かけることもあるので、必ず何度も確認しています。やはり安全が第一ですから。
中村敏也さん
野上:これからの季節はプールもあります。子どもたちの夏の楽しみでもありますが、やっぱり水の事故には要注意です。以前、幼稚園や保育園のプールでの溺水事故が続き、今では子どもたちと一緒にプールに入る保育士(指導役)だけでなく、監視に専念するスタッフ(監視役)がいないといけないとガイドラインにも書かれています。

中村:子どもが溺れるときはとても静かだといいますから、監視が必要なんですよね。スタッフの確保は大変ですが、子どもたちの安全を守るには、やはりガイドラインに沿った見守りや点呼などが重要です。

戸棚の鍵が壊れている園は危ない?

中村:ところで、ときどき「園選びで、もっとも大事なのは何でしょうか?」と聞かれることがあるんですが、野上さんだったらどう答えられますか?

野上:私は、保育でもっとも重要なのは「先生」だと思っています。だから「園を選ぶときは必ず見学に行って、先生たちに会ってみてください」と答えます。先生方がイキイキと保育をされているかどうか、また子どもたちが楽しそうかどうか、ここが一番大切です。

中村:同感です。先生たちが明るくあいさつをしてくれるか、子どもたちへの対応はどうか、現場に行かないとわからないですもんね。子どもたちの発信をちゃんと受け止めてくれる先生や園かどうかを見極めていただけるといいなと思います。
野上:子育て中は忙しいので、どうしても「駅や自宅から近い」などの利便性を最優先したくなりがちです。でも、その園の先生たちに大切な我が子を託せるか、人生の基礎となる時期に毎日一緒に過ごしてもらいたいかどうか、ここを最優先してもらえたらいいだろうと思います。

中村:そうですね。あとは園がきれいかどうかも大切だと思います。建物や施設が新しいとか古いとかではなく、きちんと整備や整頓がされているかどうかです。乱雑な園は何もかも雑ですし、床に物が落ちていたりすると事故が起こりやすいでしょう。また、よい園は戸棚の鍵が壊れているとか不用意で危険な死角はなく、あえてテントなどを置いたりして子どもが危険なく隠れられるようになっていたりします。

野上:すごくよくわかります。そういったことは、ウェブサイトの写真だけだとわからなかったりしますよね。やはり見学してもらうと、一目瞭然だと思います。

中村:そうなんです。ただ保育園は特に、どこに入れるかわからなかったりもするので、なるべくたくさん見学に行って、申し込み時には第5~6希望くらいまでしっかり順位づけをして書き込むことをおすすめします。

〜子育て中の親御さんたちへのメッセージ〜

Lazy dummy

野上美希さん

特に初めての子育てでは、お父さんもお母さんも、さまざまな疑問や不安をお持ちだと思います。先生方はたくさんの子どもをみてきている保育のプロですから、専門家としての知識をお伝えできるはずです。何か悩みなどがあれば、ひとりで抱え込まず、ぜひ園に相談していただけたらと思っています。また、園で出会った他の保護者とも横のつながりをぜひ作っていただけたら、子育てがより楽しくなると思いますよ!

Lazy dummy

中村敏也さん

今の時代は、子育てに関する情報がたくさんありますが、なかには不正確だったり偏っていたりするものもあります。だから、いろいろ調べるうちに迷ってしまう親御さんも多いのではないでしょうか。みなさん一生懸命調べられていて素晴らしいですが、ぜひ園の先生や地域の人にも頼ってください。結構みんなウエルカムだと思いますし、どんどん質問したり相談したりして、つながりをつくっていきましょう!

中村さん、野上さんのお話をお伺いして、保育現場の最前線を知ることができました。子どもたちが過ごす環境やカリキュラムについてはもちろん、経営者の視点として先生たちの働く環境や、地域との関わり合いにまで目を向けているところが印象的でした。

これから幼稚園・保育園を探そうとしている人は、ぜひ参考にしてみてください。

(取材・文:大西まお、撮影:佐藤登志雄、編集:マイナビ子育て編集部)

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