【2022年9月】絵本のプロが選ぶ 0~5歳年齢別おすすめ6冊『くつくつあるけ』ほか
東京は神保町にある絵本専門店「ブックハウスカフェ」が全面協力! プロが選ぶおすすめの絵本をセレクトして、毎月紹介します。
0歳向け
『くつくつあるけ』(作:林 明子/福音館書店)
「くつくつ あるいた ぱた ぱた ぱた さんぽに おでかけ」
赤ちゃんの小さい靴がお散歩に出かけます。走ったり飛んだり、靴はどんどん歩いていきます。
主人公は赤ちゃんの「靴」。白くて小さい靴は、深いブルーとグリーンの背景に映えるように描かれ、赤ちゃんの視線が靴にいくような工夫が施されています。ぱたぱた走ったり、つま先をとんとんしたり、ぴょんぴょん飛んだり……リズミカルな擬音といろいろな動きが合わさって、まるで子どもが歩いている姿を見ているようです。
歩き始めの前に読めば靴と仲良くなれる準備にもなりそう。靴をはくようになったら、この絵本にもっと親しめそうです。「歩く」ことに興味を持ち始めた子どもたちにオススメしたい絵本です!
1歳向け
『さんぽ』(絵:杉浦 さやか/フレーベル館)
♪ あるこう あるこう わたしは げんき~
映画「となりのトトロ」のテーマ曲「さんぽ」が、人気イラストレーターである杉浦さやかさんのイラストを添えて、一冊の絵本になりました。
この歌の作詞を担当したのは中川李枝子さん。『ぐりとぐら』シリーズや、『いやいやえん』(いずれも福音館書店)のお話を書いた方です。
子どもの頃に耳でなんとなく覚えて歌っていた歌詞を、この絵本でしっかり読んでみると、散歩道の景色が浮かんできます。坂道や曲がり道を通ったり、いっぽん橋を渡ったり、蜘蛛の巣をくぐったり……。テンポの良いメロディーに合わせて、さまざまな道をどんどん歩いていく様子は、たくましい子どもの歌に聞こえてきます。道中でトカゲやヘビ、キツネやタヌキと出会って、「ともだち たくさん うれしいな」と最後まで元気いっぱい! そこにカラフルであたたかい杉浦さやかさんのイラストが加わり、歌をどんどん盛り上げてくれます。
「気分が上がらないな」という日は、ぜひこの絵本を開いてみてください。一曲歌い終わった後には楽しい気分になりますよ!
2歳向け
『ぞうくんのさんぽ』(作・絵:なかの ひろたか、レタリング:なかの まさたか/福音館書店)
ある天気の良い日。ご機嫌なぞうくんは散歩に出かけました。
途中でかばくんに出会ったぞうくん。散歩に誘います。
「せなかに のせてくれるなら いっても いいよ」とかばくん。
力持ちのぞうくんは、かばくんを背中に乗せて歩き出しました。
次にふたりは、わにくんに出会い、散歩に誘います。「それじゃあ ぼくも のせてよ」
力持ちのぞうくんは、かばくんとわにくんを背中に乗せて散歩は続きます。
すると、次にかめくんと出会いました……。
表紙をみると、なぜか縦に並んだ動物たち。読み進めていくと、ぞうくんが散歩の途中に出会った動物たちを背中に乗せて散歩するという、とってもユニークなお話でした。
「みんなを背中に乗せて本当に大丈夫?」と少しドキドキしながら読み進めると……予想通りの展開に! 最後は笑ってしまうこと間違いなしです。途中で何が起きても、最初から最後までご機嫌なぞうくん。ハラハラドキドキのお話でも子どもたちが繰り返し楽しめるのは、きっとぞうくんのどっしりした姿に安心感があるから。ラストを知っていても何度も読み返してしまう、どこかやみつきになる一冊です。
3歳向け
『はるとスミレ』(著:eto/偕成社)
はるちゃんはお花が大好きな女の子。ある日、はるちゃんは庭に咲いていたスミレのお花を鉢植えに植え替えて、お部屋に飾りました。大好きなスミレといつも一緒にいられるようにです。
今夜は紫色の満月の夜。お月さまの光に照らされたスミレは、ゆっくりと動き出すと、「はるちゃん、つきよのおさんぽにいきましょ。」とはるちゃんを誘います。2人の特別なお散歩に出発です。
植木鉢から動き出したスミレの花と、植物が大好きな女の子のはるちゃんが、特別な夜に仲良くなるお話です。薄紫色で描かれた夜の風景は、涼やかで柔らかな雰囲気で怖さを感じないので、安心して読み進めることができます。裸足になって大好きな植物と根っこを通じてお話ししたり、原っぱに寝そべって草たちのささやきを聞いたりと、全身で植物と触れ合うはるちゃん。自分も、はるちゃんのように自然を感じたいなと思わずにはいられないほど、気持ちのいい風を感じることのできる作品です。
輝くような黄色や、あたたかみのある紫色の重なり方やかすれ具合など、独特な風合いで描かれた絵はリソグラフという手法で描かれたもの。ぜひ、じっくりと味わってみてください。
4歳向け
『おつきさまのおさんぽ 新版』(作・絵:カワチ・レン/学研プラス)
ある夜、街へおりてきてお散歩をすることにしたお月さま。
お月さまが通るたび、街の明かりが増えていきます。車庫で寝ていた電車たちも起きてきました。車たちもみんなお月さまとおしゃべりしたくって並んでいます。街をどんどん進んでいき、たどり着いたのはお客さんに忘れられた古い遊園地。遊園地の乗り物たちはお月さまを見て元気に動き出し、お月さまを先頭に大行進が始まります!
とうとう海にやってきて、船に乗り込むお月さまたち。すると……ばっしゃ~ん!なんと海の底へ落ちてしまいました! お月さまと遊園地の乗り物たちは、一体どうなったのでしょう?
シンプルな線で描かれたポップな絵は、読み始める前から楽しい気分に。色が少ない夜の場面から、どんどん明るくなって、終盤の海のシーンではびっくりするようなカラフルな世界が待っています。夜が終わる頃にはお月さまもお家へ帰るストーリーになっているので、おやすみ前の絵本としてもオススメです。
巻末には探し絵や星について書いてあるページも。お月さまがお散歩している間に起こったいろいろな出来事を探してみたり、宇宙にいるお月さまの仲間にはどんな星がいるのかを知ったり、最後まで盛りだくさんな一冊です。
5歳向け
『スモンスモン』(作・絵:ソーニャ・ダノウスキ、訳:新本 史斉/岩波書店)
スモンスモンはゴンゴン星に住んでいます。ある朝、スモンスモンはトントンに乗って川を下り、ロンロンの実をもぎに出かけました。
ロンロンの実をトントンいっぱいに積み込んで、ヨンヨンで結わえます。ロンロンの実を運んでいたその時、スモンスモンはゾンゾンに落ちてしまいました!困ったスモンスモンを助けてくれたのはクロンクロンたちでした。
独特な雰囲気の表紙を開くと、そこにはもっと不思議な世界が。
「スモンスモンはのこりひとつになったロンロンをオンオンのとなりにヨンヨンでつるすと、トントンでかわをくだっていきました。」
読み手は「何の話?」と感じますが、一回落ち着いて、もう一度読み直してみましょう。わたしのオススメは指差ししながら「スモンスモンはこれ」「これはロンロン」「こっちがヨンヨン」と読むこと。子どもと一緒に一つひとつ確認しながら、ゆっくりと読んでみてください。
すると、不思議なことにスモンスモンがどんどん愛らしく思えてきたり、ゴンゴン星をもっと知りたくなったり。どんどん絵本の世界に入っていくような不思議な感覚を体験できる絵本です。スモンスモンは途中、ハプニングに見舞われつつも、やさしい仲間たちに助けられながらゴンゴン星を旅していきます。きっと、今まで味わったことのない新しい絵本体験ができることでしょう。子どもも大人もぜひ、スモンスモンと一緒にゴンゴン星の世界をお楽しみください!
まとめ
朝晩涼しい日が増えて、お散歩が楽しい季節。今回はお散歩がテーマのオススメ絵本を紹介しました。
絵本の主人公たちのように、いろんな道を通ってみたり、歌ってみたり、植物を観察してみたりしながら、日常と絵本の両方でお散歩を楽しんでみてくださいね。