意外と要注意!飲みやすいエナジードリンクや缶コーヒーによる子供の「カフェイン中毒」
意外と様々な飲料に含まれているカフェイン。子供は、このカフェインの許容量が少なく、中毒になりやすいそう。そこで小児科医の森戸先生に、どのくらいの量にすべきか、どんなことに気をつけるべきかを聞きました。
最悪の場合は命にかかわる「カフェイン中毒」
少し前、1本に200mgのカフェインを配合した缶コーヒーが発売され、ネット上には子供の購入を危惧する声があふれました。というのも、子供が大人向けのエナジードリンクやコーヒーなどを飲むと、カフェイン中毒になる恐れがあるためです。
カフェインはアルカロイドの一種で、強い興奮作用を持ちます。そのため、眠気覚ましなどに効果が期待できるのです。でも、一方で過剰に摂取すると、不安、震え、不眠、吐き気や動悸、めまい、けいれんなどが起こり、最悪の場合には命を失うことさえあります。
その血中濃度が最大になるのは、摂取後30〜60分頃。その後、肝臓で代謝されて、成人では3〜7時間、小児では3〜14時間かかって半減します。が、過剰摂取の場合は、カフェインがスムーズに代謝されず、子供だと影響がより長引くことも。
では、過剰摂取とは、どのくらいの量でしょうか。子供の場合、体重1kgあたり20mg程度で嘔吐などの中毒症状が起こるとされています。つまり、体重10kgの子供であれば、200mgで中毒症状が起こる恐れがあるというわけです。
日本では、1日に摂取しても問題が起こらないだろうカフェイン量の目安が示されていませんが、カナダ保健省は4〜6歳で最大45mg、7〜9歳で最大62.5mg、10〜12歳で最大85mgまでにするよう提言しています。ちなみに健康な成人(妊娠・授乳中でない)では、1日に最大400mgです。
子供に「カフェイン」のリスクを教えよう
日本小児科学会のインジャリーアラート(傷害速報)には、8歳11カ月の子供が自動販売機でエナジードリンクを見つけ、見た目に魅力を感じて購入し、17時頃に一気に飲んだところ、18時半頃から吐き気が現れて、そのまま日付が変わるまで治まらなかったため、救急外来を受診したというケースがあります[*1]。
このケースでは幸い状態が悪くなかったため、自宅で経過観察となり、翌朝には回復したようです。カフェインの血中濃度は測定しなかったものの、このエナジードリンク500mlには、カフェインが210mgも含まれていたとのことでした。
子供はコーヒーやエナジードリンクなどにカフェインが含まれていて、それが自分たちの体にどう作用するかわかっていません。しかも、必ずしも苦い、飲みづらいというわけではなく、子供でも飲みやすいものも多いので、こうしたケースがあるのでしょう。
また、受験勉強などの時に眠くならないようカフェイン入りの飲料や錠剤を飲む子供もいます。錠剤の「眠気防止薬」は、より多くのカフェインを手軽に摂ることができるので非常に危険です。日本中毒予防センターによると、眠気防止薬の過剰摂取に関する相談は10〜20代からのものが多いことがわかっています[*2]。
本来、こうした高濃度のカフェインが含まれる食品や薬は、簡単に子供が手に取ることができないようにしないといけないでしょう。でも、現実的には様々なところで売られています。ですから子供たちには、カフェインには注意が必要であることを伝える必要があります。
子供には、やっぱり水や麦茶がおすすめ!
そもそもカフェインがどんな飲み物に、どのくらい含まれているかをご存じでしょうか? 有名なコーヒーだけではなく、玉露、紅茶、コーラなどの様々な飲料に含まれています。それぞれ100mlに含まれるカフェイン量は、以下の通りです[*3,4]。
<100mlあたりのカフェイン含有量>
エナジードリンク 約32〜300mg
玉露 約160mg
コーヒー 約60mg
インスタントコーヒー 約57mg
紅茶 約30mg
煎茶 約20mg
烏龍茶 約20mg
玄米茶 約10mg
コーラ 約10mg
ココア 約10mg
(※カフェイン量は浸出方法などによって異なります)
ただし、注意が必要なのは、これはあくまでも100ml中の含有量だということ。カップ1杯なら200mlくらいですし、ペットボトルなら500mlということもあり得ます。何か飲料を摂る際は、ぜひカフェインの摂取量を計算してみましょう。
こうしたカフェインの過剰摂取を防ぐために大事なのは、「嗜好飲料は楽しむものとして飲み、水の代わりにはしない」ということ。これは大人でも同じですが、子供は特に普段はカフェインを含まない麦茶や水などを飲むのがおすすめです。
たまに野菜ジュースやスポーツ飲料などは嗜好飲料ではないと思っている人もいますが、水以外はほとんど嗜好飲料です。野菜ジュースは野菜の代わりになりませんし、スポーツ飲料は経口補水液(OS1など)と違って脱水の治療に使えるということもありません。特に禁止する必要もありませんが、どんな飲み物も適度に楽しむようにしましょう!