子どもの偏食「これって大丈夫?」心配になるけど……苦手な食材があるのは当たり前のことだった!
子どもの「食」に関して悩んでいる保護者は多いもの。特に「食べない」「好き嫌いが多い」というのは、成長のためにバランスよく栄養を摂らせたいからこそ心配になりますね。子どもの偏食について、小児科医はどう捉えているのでしょうか。
子どもに苦手な食材があるのは当然のこと
子どもの食事について悩んでいるお母さん、お父さんはとても多いものです。特に少食であること、それから好き嫌いがあることについては、診察室でもよく相談されます。
確かに、成長の途上にある子どもにこそ、できれば多種多様な食品をしっかり食べさせたほうがいいでしょう。そのほうが栄養バランスを取りやすいし、食中毒やアレルギーなどのリスクも分散できます。そして、子どもがなんでも食べてくれたほうが料理を作る保護者もラクです。
もちろん、人間は雑食ですから、例えば主食だけ、野菜だけ、肉だけ、魚だけを食べていても、短期的には支障なく生きられます。でも、長期的にはなんらかの栄養が不足して健康を損なう懸念もあるでしょう。
例えば白米だけを食べ続けていると、ビタミンB1が不足して脚気になります。肉・魚類などの動物性食品をとらないとビタミンB12が不足して悪性貧血になったり、乳製品等をとらないとカルシウムが不足して骨の成長に影響が出たり、将来的に骨粗しょう症になったりすることもあるかもしれません。動物性タンパク質を含む離乳食やキノコ類を食べずに母乳だけを飲み続けると、ビタミンD、カルシウムが不足して低カルシウム血症やくる病になることもあります。やはりバランスのよい食事は健康の源であり、とても大切なのです。
けれども、食べられないものが多いのは子どもの特徴の一つです。子どもは体に悪いものを避けるための「触覚防衛反応」が強いもの。例えば大人でも同じですが、青梅を拾って食べたら、最悪の場合は死に至ります。こうした危険から身を守るための本能なのです。
ですから、幼い頃に、腐敗や毒の可能性がある味や匂いである苦味、酸味、辛み、強い香りなどを嫌がるのは当然です。食べたことがないものを警戒することもあるでしょう。また、子どもは言葉でうまく説明できないけれども、じつは軽度の食物アレルギーがあって、口の中や消化管の不快感などを感じるために嫌がっているケースもあるでしょう。
栄養が摂れたら食べられない食材があってもOK
こうして子どもに好き嫌いがあったり、あまり食べなかったりする場合、どうしたらいいでしょうか。
本人が好む食材や食べられる食材を使って、できるだけ栄養バランスのとれた食事を提供するのがいいでしょう。例えば、白米が嫌いな場合はうどんやパンを主食にし、人参が嫌いな場合はほうれん草などでビタミンAを摂る、といったふうにします。
大事なのは、体に必要な栄養がきちんと摂れているかどうかですから、別に苦手だったり食べられなかったりする食材はあってもいいんです。大人にだって好き嫌いくらいあります。
ただ、子どもの場合は年齢が上がるにつれて食べられるものが増えることが多いでしょう。ですから、まだ食べられない時期に無理強いして、その食材に対して嫌な記憶やイメージを持たせないほうがいい場合もあると思います。あまり厳しくすると、食事自体が嫌いになって、より少食になったり、好き嫌いが激しくなることもあるのです。
一方、嫌いな食材が食べられるようになっているかどうかは、食べさせてみないとわかりません。ですから、どうしても無理なもの以外は「一口だけチャレンジしてみよう」と伝えて時々食べさせるのもいいと思います。食材と栄養の種類や役割、大切さを教えてあげたりすることも必要でしょう。
以前、SNSのX(エックス)で「離乳食で味付けごはんを頻繁にあげると、白ごはんなど味付けのないものを嫌がることにつながる」というような投稿が話題になりました。
子どもが味付けごはんに慣れると、本当に味付けのないものを嫌がるようになるでしょうか。そうとは限らないでしょう。
また、味付けされた料理以外を好まないと困るのかという視点でも、特に困らないのではないでしょうか。子どもの塩分許容量は大人より少ないので注意する必要はありますが、出汁をきかせたり、おかずの味付けを少し薄くすれば問題ありません。
極端に好き嫌いが多くて栄養が偏る場合は?
子どもがどうしても食べられるものが少ない場合は、とにかく何も食べないよりはマシなので、食べられるものをあげましょう。少しずつ食べられるものを増やしていく、少しずつ食べられる量を増やしていくのを目標とします。
ただし、「肉や野菜の入ったうどんしか食べない」のであればともかく、長期間にわたって「素うどんしか食べない」などといった極端な場合は、栄養が不足している可能性が高いので、必ず小児科を受診しましょう。
小児科では、まず問診を行い、体重や身長を計測します。会話ができる年齢であれば、お子さん本人に普段食べているものを聞き、必要な栄養について知ってもらえるよう説明します。まだ難しい場合は保護者に聞いて、ご説明します。
栄養の偏りが軽度の場合は、例えば鉄分不足の場合は貧血にならないよう鉄剤を、ビタミンD不足の場合はくる病にならないようビタミンD製剤(アルファカルシドール)を処方されることが多いでしょう。
一方、食事がとれない理由として、発達障害があるケースもあります。通常、子どもは大人が思わぬような食材の見た目や音、食感ーー例えばイチゴのブツブツ、リンゴを噛んだ時のシャリシャリという音、野菜のグニャグチャした食感などーーを嫌うことが多いのですが、発達障害の子では、特にその傾向が顕著に現れやすいのです。
その場合は、発達障害や摂食障害を専門とする小児科医、管理栄養士がいる病院を紹介してもらって通院するといいと思います。親御さんだけで悩まないようにしましょう。