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2024年03月24日 10:01 更新

家事経験ゼロで結婚した夫が、家事・育児の「当事者」になった理由 内山夫妻の場合 #共働き夫婦のセブンルール

世の共働き夫婦は、どう家事を分担して、どんな方針で育児をしているんだろう。うまくこなしている夫婦にインタビューして、その秘訣を探りたい。そんな想いから、スタートした企画。それぞれの家庭のルールやこだわりを7つにまとめ、その夫婦の価値観を紐解いていきます。

【左】内山英人さん(仮名/40歳/メーカー/営業)
【右】内山祥子さん(仮名/39歳/メーカー/労務)

同じ部署の先輩後輩だったふたりは、社内恋愛の末に結婚。現在も同じ会社で働きながら、2人の元気いっぱいの男の子を子育て中だ。祥子さんは第2子妊娠前に営業から内勤に異動し、現在は時短で週の大半を在宅勤務でこなしている。

英人さんは営業として、ほぼ毎日出社する日々。必然的に家事・育児の中心は祥子さんが担っているが、英人さんも平日や週末にできる限りの役割を果たしている。

育児中の共働き夫婦は忙しすぎてギスギスしてしまうことも少なくないが、なんと内山夫婦は今でもときどき出勤前に「今日もかわいいよ!」「今日もかっこいいね!」と声をかけ合うことがあるという。

私の場合、この声がけ自体は真似できそうにないけれど、夫婦仲の良さは見習いたい! ということで、円滑な夫婦関係を可能にしている内山家のセブンルールを伺った。

7ルール-1 家事分担はきっちり決めず、何となくで良い

内山家では、基本的に料理まわりと洗濯が祥子さん、食後の片付けとゴミ捨て、風呂掃除が英人さんの役割。園への朝の送りは英人さん、迎えは祥子さんが担っている。

もともとはきっちり役割分担を決めていたが、お互いにモヤモヤすることが多かったそう。

「タスクの分担が決まっていると、相手がやっていなかったり、取り掛かるのが遅かったりすると『いつやるつもり!?』とイライラしてしまって。自分のタスクをやってもらったときにも、申し訳ない気分になっていたんですよね」(祥子さん)

それならば、と、家事分担はなんとなく決めるだけで、「気づいたほう、できるほうがやる」というルールに変えてみたら、お互いに気持ち良く助け合えるようになったという。

ただ、このルールだと家にいる時間が長い祥子さんのほうが、どうしても多めに負担することになる。それでも、「『やっといたよ』アピールはしっかりして、夫からの『ありがとう』を引き出しているから気になりません。食後の片付けとか、夫が後からでもできることはそのままにしておいて、やってもらうようにしています」と祥子さん。

もともと、相手がやってくれたことに対しては、文句は言わないようにしている。

「夫は結婚前まで実家暮らしで家事をしたことがなかったこともあり、結婚直後は完全に私任せ。でも、会社での仕事ぶりを見ているので『この人はきっとやり方を知らないだけだろうな』と思い、子どもが生まれる前まで2年かけて、一緒に家事をしながら少しずつ覚えてもらいました」(祥子さん)

並んで洗濯物を干し、英人さんが干したシャツの袖が入ったままでも、靴下が丸まったままでも、文句は言わずにそっと直す。水切り籠に並べた皿が超難解なパズルのように積まれていても、できるだけ努力して解くようにして、折を見て「危ないからパズルは控えてね(笑)」とやさしく言う。これを日々繰り返すことで、夫の家事スキルを根気よく上げてきたのだ。根気強い!

パートナーが家事をしない人だった場合、あきらめるか、文句を言う人が多いのではないだろうか。横で苦笑しながら聞いていた英人さんも、妻の言うことを素直に聞いて、成長したのはすばらしい。

「実家がそうだったので、なんとなく家事はすべて妻がやってくれると思っていたんです。ただ、そうすると何か妻がイライラしていて、『あ、違うんだな』と察しました(笑)。それからは、教えてもらったことは実践するようにしてきました」(英人さん)

特に大きな転機となったのが、2人目の妊娠中。つわりで動けない祥子さんに代わって、英人さんが上の子の食事を作るしかなかった。

「いろいろ調べたみたいで、私が普段作らないようなものを作るから、息子も喜んでいましたよ」と祥子さんは振り返る。

「子どもができてからは、やるしかなくて覚えたよね」と英人さん。

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家事経験ゼロで結婚した英人さん。子どもができたことで「やるしかない」とスイッチが入り、今ではすっかり『手伝う人』から『当事者』に

下の子が生まれて、祥子さんが復職してからはさらに忙しくなり、お世話で手が離せない祥子さんの分まで少しずつ英人さんが担うようになった。ただ、祥子さんとしては同僚だからこそ理解できるところもあれば、「もうちょっとできるでしょう」と思ってしまう部分もある。

「半年に一度のペースで、私が爆発するんです。『私はこんなにいろいろやっているのに、当たり前だと思ってるよね!』って、もう言うことも毎回まったく同じ(笑)」(祥子さん)

「そうだね(笑)。その爆発で何度も言われて、僕もだんだん、家事・育児を『手伝う人』から、『当事者』に変わってきたよね」(英人さん)

なるほど。最初からできたわけではなく、長年の歴史と経緯があってこその、お互いを思いやる家事ルールということだろう。

7ルール-2 スケジュール共有はきちんとする

結婚生活の中で家事分担は緩くなったが、より厳密になったものもある。お互いに仕事を抱えながら、スムーズに子どもたちの送り迎えをこなすためのスケジュール共有だ。

「基本的には夫が朝の送りをしているのですが、夫が早朝に出なくてはいけない日もあるので、共有できるカレンダーアプリのTimeTreeに仕事の予定も園の行事もすべて入れるようにしています」(祥子さん)

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自分の予定も家族の予定も一括管理することで、情報共有がスムーズに

祥子さんも出社する日は「出社」と書き込み、急なお迎えが必要なときには動けるほうが対応する。英人さんが「商談」と書いているときには、抜けられないことがわかっているので祥子さんが動くようにしているという。

どちらかが書き込みをすれば通知が届くように設定しているため、見逃すことはほとんどない。使いやすいツールを見つけたことで、ルールがより機能するようになったようだ。

7ルール-3 スポーツ系の習い事担当は夫(送迎含む)

息子たちのスポーツの習い事に関しては、子どものころから野球をしていて今も草野球を続けているという英人さんの担当だ。子どもの興味に応じて習い事を探すのも、見学に行ったり、習い始めてからの送迎をしたりするのも、英人さんが担っている。

「もちろん、妻と情報共有は必ずしますが、基本的には僕の担当です。スポーツが好きなので、見ているのも楽しいんですよね。最近は会社の昇格試験が近いので、子どもの習い事が終わるのを待つ間にテキストを読んだりもしています」(英人さん)

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平日はどうしても忙しい分、週末の習い事はパパと息子くんとの貴重な時間!

平日は夫婦とも働いているため、習い事は週末になる。つまり、子どもたちが英人さんと一緒に習い事に出ている土曜の午後、祥子さんは貴重なフリータイムだ。

「その時間はドラマを観たり、勉強したりしてゆっくり過ごしています。毎週同じ時間で、夫が行ってくれることになっているので、計画的にリフレッシュできていいですね」(祥子さん)

英人さんは平日夜の飲み会でリフレッシュしているため、週末は祥子さんにひとりの時間を楽しんでもらっているそう。

ほかの家事・育児は「できるほうがする」スタイルでも、これについては明確に決まっているほうがお互いに納得できるようだ。

7ルール-4 寝る前は必ず「おやすみ! 大好きだよ!」と声をかける

内山家の仲良しぶりが伝わるのがこのルール。特に意識して始めたことではないそうだが、内山家ではお子さんたちが寝る前にこう言って寝室に行くのが当たり前になっているそうだ。ある日、オンライン飲み会をしていてその現場を目撃した友人から「なにそれ! 素敵! かわいいこと言うね~」と言われ、初めてほかの家ではしていないことに気づいたという。

「もともと、お互いに良い気持ちで仕事に向かうために夫婦で『今日もかわいいよ!』とか、『今日もかっこいいよ!』と言い合っていたんです(笑)。今でも気が向いたときには言いますが、子どもが生まれたら、子どもに対しても寝る前に『大好きだよ』と声をかけるようになりました。それが習慣になったようで、子どもたちも毎日、私たちに『おやすみ。大好きよ~』と言っています」(祥子さん)

長男は成長して最近、少し恥ずかしそうに言うようになったが「今だけだと思って、こちらから『大好きだよ』と言うようにしています」と祥子さん。

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やわらかい雰囲気のお二人からは信頼し合っていることが伝わってきて、言葉にして伝え合うことの大事さを実感した

英人さんは日頃から「自分が言った言葉が、本当になるんだよ」と子どもたちにも話しているとのこと。お互いへの気持ちを伝えることを、挨拶にして習慣にすれば、確かに気持ちが深まりそうだ。

7ルール-5 家族写真を撮る

子どもが小さくて、親といつも一緒にいる時間は、あっという間に過ぎていく。だからこそ、親はかわいい子どもたちの写真をたくさん撮るのだが、気づけば子どもの写真だけで、家族写真はほとんどない、ということも多い。

「子どもの写真だけだと、そのとき親の私たちが一緒にいたことが残らない。子どもたちにも家族で過ごした時間を覚えていてほしいので、できるだけ家族写真を撮るようにしています」(祥子さん)

お食い初め、ハーフバースデー、1歳の誕生日。小さいころに目白押しのイベントごとには、写真館で家族写真を撮り、アルバムを作ってきた。

「下の子になるとだんだん写真が減っていきそうになるので、上の子のときと同じように写真館で撮ってもらいました。今でも、どこかに出かけたときなどになるべく家族写真を撮るようにしています。観光地などで写真購入がある場合は、必ず撮って購入していますね。どうしても『子どもだけ』や『親ひとりと子どもだけ』の写真が多くなるので、意識して家族写真を撮っています」(祥子さん)

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テーマパークの写真はちょっとお高いが、家族みんなの思い出が形に残せることを考えれば「買い」!

後から家族みんなで写真を見返し、「この時こうだったね~」と一緒に思い出せるのもいい。「写真館の思い通りといえばそうですが(笑)、これからも続けたいと思っています」と祥子さんは言う。

「近所の公園にピクニックに行って、すっぴんで髪が乱れていても、家族写真を優先します! 見た目がどうこうより、そのときの家族の思い出を大切に残しておきたいと思っています」(祥子さん)

7ルール-6 【夫】子どもがやりたいと言ったことを尊重する

子どもがやりたいと言ったことを尊重し、それができる環境を整えてあげたい――。それが、英人さんの親としての一番の思いだ。

今は子どもたちが2人とも「やりたい」と言ったスイミングと、長男はバレーボールを習っている。英人さんが探してきた、2ヶ月ごとにさまざまなスポーツを体験できる教室に通うなかで、長男自身が選んだのがバレーだった。

「僕はできるだけいい環境を選んで、応援するだけです。始めるまでに見学に行ったり体験したりして十分な時間をとり、『やるからには、あきらめないでやろうね』と話しています。よっぽどのことがあれば、子どもの意見を尊重しますけどね」(英人さん)

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野球を長くやってきた英人さんだからこそ、習い事やスポーツから得られることの大きさを実感している

取材中、隣で遊んでいた長男くんが「僕はバレーをしているの!」と元気に答えてくれた。楽しく続けているようで、英人さんの思いは伝わっているのだな、と感じた。

7ルール-7 【妻】「ありがとう」「ごめんね」を必ず伝える

「相手が身近であればあるほど、恥ずかしくて言いづらいこともありますよね。実は私自身、子どものころは親に『ありがとう』や『ごめんね』が言えない人間だったんです」(祥子さん)

なんと。結婚して10年経っても夫に「今日もかっこいいね!」と言える祥子さんなのに、これは意外だった。

「だからこそ、夫や子どもが何かしてくれたときには、意識的に『ありがとう』と言うようにしています。子どもにも『ありがとう、は言われて嫌な気持ちになる人はいない、魔法の言葉なんだよ』と伝えています」(祥子さん)

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自分の母親に「ありがとう」が言えなかったことを後悔している分、今は家族や周りの人にたくさん伝えているという祥子さん。誠実な人柄が伝わってくる……!

「ごめんね」も、もちろん重要だ。でも、「ありがとう」のほうが、日常に埋もれて、うやむやになってしまうことが多い。だからまずは「ありがとう」を欠かさない。

「夫に家事をしてもらったときも『ありがとう』を言いますし、時短勤務で負担をかけている同僚にも『ありがとう』を言うようにしています」(祥子さん)

彼らの7ルールを一言で言うと……?

内山夫婦の7ルールを支えているのは、「思いやり」だ。

当たり前のことを当たり前と思わない。
食事ができているのも、服が洗濯されているのも、誰かがやってくれているから。

そもそも、ごく当たり前のように聞こえる「思いやり」自体が、日々に忙殺される共働きでは簡単なことではない。

入籍記念日や結婚記念日にケーキでお祝いをしたり、季節のイベントごとを家族で楽しんだり。内山家ではそういった節目も大事にしているけれど、何より当たり前の日常において相手を思いやることを忘れずに、言葉にして伝え合う。それが習慣になっているからこそ、いつも笑顔でいられるのだ。

夫婦が子どもたちによく言っていることがもうひとつある。
それは、「生まれてきてくれてありがとう」。

その気持ちは、きっと子どもたちに伝わっている。

(取材・文:中島 理恵、撮影:梅沢 香織、イラスト:二階堂 ちはる)

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