不妊治療はいつまで続ける? 子どもを産みたくないと思っていい? 女性の質問に高尾先生が答える<心がフワッと軽くなるヒント#1>
子どもを望むのになかなか授かれない人、2人目不妊で悩む人、挙子について夫婦で意見が食い違う人、子どもを産みたくないと思う人……その立場や考えはさまざまで、それぞれに抱える悩みが深いケースも少なくありません。
今回は「子どもを産むこと」について考えてみたいと思います。
「妊活中のメンタル維持は?」
「不妊治療はいつまで続ける?」
「子どもを産みたくないと思ってもいい?」
など、女性たちの質問に対して産婦人科医・高尾美穂先生の答えを、著書『こうしたらきっとうまくいく 心がフワッと軽くなる82のヒント』(扶桑社)よりお届けします。
<質問>妊活中のメンタルを保つコツは?
37歳、タイミング法で妊活中。次も生理が来ると思うと時間が過ぎるのが長くて耐えられず、生理が来るとさらに落ち込みます。メンタルを保つためにできることは?
■高尾先生のアンサー
タイミング法というのは、排卵の時期に性交渉のタイミングを合わせる方法です。もしタイミング法を始めて半年以上たっているのであれば、37歳という年齢を考えると次のステップに行くのも一つの選択肢だと思います。次のステップは、体外受精や顕微授精です。もちろん、それで100%妊娠できるとは言えませんが、より妊娠できる可能性の高い取り組みをすることで、自分なりに納得でき、前向きになれるのではないかと思います。
そして、もう一つ大切なことは、自分の頭の中を妊活だけでいっぱいにしてしまわないことです。自分の好きなこと、たとえば、好きなアイドルや俳優のことでもいいですし、心の癒やしになるものを生活に取り入れ、ほかのことが忘れられるような時間をもっていただけるといいと思います。
もちろん、しっかり睡眠時間を確保する、生活におけるストレスを少しでも減らす、仕事を詰め込みすぎないようにするなどを意識することはとても大事だと思います。さらに妊活以外のことに向き合う時間をしっかり確保して、できればパートナーと共有して、いい時間を過ごしていく中で、妊娠が成立できたらいいですよね。また、私たちの人生は、子どもを望む方に子どもができたらもちろん喜ばしい訳ですが、子どもができなかったからといって、最高の人生にしていけない訳ではない、という考え方ももっていただけたらと思います。
頭を妊活だけでいっぱいにせず、心の癒やしになる好きなことをする時間をもちましょう
<質問>不妊治療はいつまで続ければいいの?
子どもが欲しくて不妊治療をしているけれど、なかなか妊娠せずつらいです。不妊治療はいつまで続ければいいのでしょうか。
■高尾先生のアンサー
不妊治療はとてもストレスフルなことです。経済的な負担もありますし、検査や処置の際の痛みなど肉体的にも負担がかかります。自身の年齢が上がること自体もストレスになり得ることですし、周囲からのプレッシャーやパートナーとの熱量の違いなど、さまざまな精神的負担もあるでしょう。
不妊治療をされている方に多いのが、「いつまで続ければいいの?」というお悩みです。不妊治療は一部保険適用になりましたが、自費でおこなうものが多く、医師の方からこのあたりでやめましょうと提案されることはほとんどないのが現状です。とはいえ、年齢が上がるにつれて赤ちゃんが元気に生まれる可能性が下がるのは事実で、いつまでも続けられるものではありません。また、続ける年数が長いほど費用もかさみます。ですので、不妊治療を始めるにあたってあらかじめ予算と続ける年数を決めておくことをおすすめします。
そして、もう一つ私からお伝えしたいのは、不妊治療のゴールを「子どもができること」にしないということです。妊娠するか、どんな子どもを授かるか、どんな分娩方法になるかといったことは、自分で選べることではありません。不妊治療のゴールを「子どもができること」にすると、できなかったときに大きな挫折を経験することになり、心が折れてしまいます。「自分が納得のできる人生を送ること」をゴールにして、そこにもし新しい家族が加わったら素敵だよね。そんな思いで妊活や不妊治療を進めていただけたらと思っています。
妊娠がゴールではなく、自分が納得できるいい人生を送ることをゴールに。期間と予算は決めておきましょう
<質問>子どもを産みたくないと思ってもいい?
子どもの頃から赤ちゃんをかわいいと思えず、子どもを産み、育てたいと思えません。身近で、産後母子ともに亡くなるといった例を見てきたことが影響しているのかも。
■高尾先生のアンサー
昭和の初めから戦後にかけての時代は、女性は子どもを産むのがあたりまえ、子どもを育てて一人前、こんなイメージが世の中にあったと思います。今、私が多くの女性と婦人科外来で話して知ったのは、今の時代、女性だからといって皆が皆、子どもを欲しいと思っている訳ではないということです。
今の女性たちをグループ分けするとすれば(もちろんグループ分けなんて必要ないでしょうが)、まず子どもを産むことをまったく考えていない人たちがいます。今回の方のように子どもが苦手な方もここに含まれるかと思います。あと、子どもは欲しいけれども性交渉が苦手だから子どもは考えていないという方もいらっしゃいますね。
二つ目は、子どもを産んで子どもと一緒の人生をどうしても送りたいと思っているグループ。産婦人科医の立場からは、今の時代であれば人生設計を前倒しにしていくと授かる可能性を高くすることができるのではないかと思います。3つ目は、そこまで強く望んではないけれど授かったらいいなというグループ。この中には、仕事が忙しくて今はそれどころじゃないという方や、子どものいる生活でもパートナーと二人の生活でもどちらでもいいという方もいらっしゃると思います。こんなふうに考え方はさまざまで、皆子どもが欲しいと思う訳ではないことを知っていただければと思います。
また、この方のように、なにかしらの経験を基に判断がなされているということは往々にしてあると思います。私たちがする判断は経験が生み出すと日頃から感じていますので、この方がおっしゃっていることは、私にはスーッと理解できます。
子どもをもつかもたないか、について考えはさまざまな時代です
※高尾美穂 著『こうしたらきっとうまくいく 心がフワッと軽くなる82のヒント』(扶桑社)より一部抜粋・再編集