過干渉な親、金を盗む父、酒癖の悪い夫…縁を切ってもいい? 女性の質問に高尾先生が答える<心がフワッと軽くなるヒント#2>
人生を歩んでいると、素晴らしい出会いもあれば、つらい人間関係にがんじがらめになることもあります。中でも、親子や夫婦の縁はおいそれとは断ち切れるものでもなく、ますます追い詰められることも……。
今回は「つらい家族関係からの解放」について考えてみたいと思います。
「過干渉で頑張ることを求める親から逃げるには?」
「父から逃れ、自由になってもいい?」
「酒グセが悪い夫と離婚すべき?」
など、女性たちの質問に対して産婦人科医・高尾美穂先生の答えを、著書『こうしたらきっとうまくいく 心がフワッと軽くなる82のヒント』(扶桑社)よりお届けします。
<質問>過干渉で頑張ることを求める親から逃げるには?
私は小さい頃から褒められたことがなく、親の口グセは「頑張って」。中学生の娘がいるのですが、転校後、無気力になった娘にも両親は理解を示さず過干渉で、私にも娘にも頑張ることを求めてきます。
■高尾先生のアンサー
ご両親が小さい頃から過干渉で、親になって子育てをしている今もそれが続いているという状況なのかなと思います。このご相談の中でいちばん気になったのが「頑張って」というご両親の口グセです。「頑張って」という言葉は、普通に使われる言葉ですが、じつは私はこの言葉はまず使わないんです。なぜかと言うと、たいてい皆すでに頑張っているから。本当に頑張っている人に、さらに「頑張って」という言葉をかける必要はあるのかなと思うんです。
「頑張って」という言葉は、この方が幼かった頃、ある意味無責任に発せられ続けてきた言葉なのだと思います。この方は頑張っているのにそれを認められてこなかったという気づきがあり、だからこそ、自分の娘にはあえて「頑張って」という言葉は使っていないのでしょう。でもご両親は、今また孫であるこの方の娘さんに対しても同じことをしている。この負の連鎖はここで断ち切りたいですよね。ご両親には「あの子はよく頑張っていますから、『頑張って』ではなく、『よく頑張っているね』と声をかけてあげてください」という言葉を伝えて、娘さんを守ってほしいなと思います。ご両親に伝えるのは、難しいことだと思います。でも、ここはあきらめたくないところです。
そして、娘さんに対しては、自分がこういう言い方をされたらうれしかったと思う言葉をかけていただきたい。それが親からの負の連鎖を自分の代で断ち切ることになるのではないでしょうか。
親からの負の連鎖を断ち切るために自分の子には言われてうれしい言葉を
<質問>父から逃れ、自由になってもいい?
病弱な母のもとに生まれ、父にもたくさんの問題があり、私はしなくていい悲しい思いをしてきました。昨日また私の口座から勝手にお金を引き出していた父。遠くに移住して自由になりたいです。
■高尾先生のアンサー
突然ですが、私は靴べらが大好きです。なぜかというと、あたりまえですが、靴べらがあるとすごく靴を履きやすいから。玄関には二つ置いていますし、必要なときは持ち歩いているぐらいです。このことは、人生におけるいろんな出来事に対する対応に似ていると思います。ラクにできる選択肢があるなら、私たちは、もっとラクに生きるという選択を自分に許したらいいのではないでしょうか。
この方のように、もって生まれた環境がつらい方は確かにいらっしゃいます。つらいけれど、逃げていいんだろうか、そんなことをしてはいけないんじゃないか、私のがまんが足りないんじゃないか。そんな思いが生まれることはわからなくもありません。でも、逃げるのは悪いことじゃない。ここでは逃げるということは自分にとってよい選択です。自分で自分に逃げることを許す。そういう気持ちをもってもいいんじゃないでしょうか。私たちはもっとラクに生きていい。遠く離れて住むという選択肢は、すぐに実現することは難しいかもしれませんが、近い将来にそうしたいというアイデアを頭に置いておくことは大事だと思います。
いろいろなケースはあるにせよ、もっとラクな状況があるならそれを選ぶ。これは靴べらから人生の過ごし方まで共通することなんじゃないかと思います。ぜひ、次の一歩を選ぶ際には、自分がもっとラクに生きるための選択になっているかどうかで選ぶ、そういう視点をもっていただきたいと思います。
逃げるのは悪いことではない。私たちはもっとラクに生きていいのです
<質問>酒グセが悪い夫と離婚すべき?
私は非正規で働く51歳です。夫は誰からも優しい人と言われますが、毎日お酒を飲み、飲むと人格が変わります。高校3年と大学4年の子どもたちは夫には話しかけません。離婚したいですが、母は亡くなり、父は離婚に反対。どうすればいいか悩んでいます。
■高尾先生のアンサー
この状況では、離婚したいという気持ちはとても率直な思いだと思います。お子さんは大学4年生と高校3年生ですので十分にこの状況をわかっている。だからお父さんには話しかけないのでしょう。
環境はご自身の人生にものすごく大きな影響を及ぼすので、ぜひ自分がいいと思えるような環境で過ごしていただきたいと思います。ですので、離婚できるなら離婚するのがいいともちろん思いますが、ご本人としては非正規雇用の状態で働いていることが懸念事項なのでしょう。
今回の場合は、明らかにアルコール依存ですので、本来であれば、精神科を受診していただくのがよいのですが、それを伝えたところで本人は意に介さないという状況であれば、「距離をとる」のが賢明です。初めから離婚という選択もありますが、まずは一つステップを置くという意味で、住む場所を変えて、物理的に距離をとるのがよいでしょう。それでどれぐらい相手が変わるのかを確かめることも、できることの一つかと思います。距離を置くことで見えてくる部分もあると思うのです。
物理的な距離をとらないのであれば、根本的な原因であるパートナーがお酒を飲むということ自体を変えていくアクションを。アルコール依存であることを本人が認識して治療を受けられるよう、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
「距離をとる」のが賢明です。距離をとることで見える景色が変わるはず
※高尾美穂 著『こうしたらきっとうまくいく 心がフワッと軽くなる82のヒント』(扶桑社)より一部抜粋・再編集