小中高生の自殺者数は“過去最多”527人。子どもに「死にたい」と言われたとき、精神科医が“絶対にやめてほしい”と止めるNG対応は
「死にたい」——わが子の口からその言葉が出たら、思わず「そんなこと言ってはいけない」と強く叱ってしまう親がほとんどではないでしょうか。厚生労働省・警察庁の統計では、2025年の小中高生の自殺者が532人に達し、2年連続の最多更新となったことが報告されています。
こうした情報を耳にする中で、我が子の不安定さを感じ取った保護者が動揺するのも無理はありません。もし実際に子どもが「死にたい」と言ったとき、親が取るべき行動とは何でしょうか。本記事では、精神科医が警告する「絶対に避けたいNG対応」と、子どもの命を守る寄り添い方を解説します。
※厚生労働省 自殺対策推進室・警察庁「令和6年中における自殺の状況」
\子どもの“困った”行動に悩むすべてのママ・パパに/
YouTube登録者数10万人超、SNSでも注目を集める児童精神科医・さわ先生が、発達ユニークな子どもたちが感じている「困りごと」と、周囲の大人にできる関わり方をやさしく教えてくれる一冊です。
今回は、“生きづらさ”を抱える子どもたちについて、書籍『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』(日本実業出版社)から一部抜粋してお届けします。
「死にたい」「消えてしまいたい」と思うのを止められない
子どもの困りごと
希死念慮にもつながる“生きづらさ”
心のなかで思うことは、だれにも否定されなくていい
発達ユニークな子たちと接していると、生きづらさに苦しんでいる子が少なくないことを感じます(もちろん、発達に特性があってもなくても、苦しみを抱えている子はたくさんいます)。「生きるのがしんどい」「死にたい」「消えたい」と思い詰めている子どもたちです。
なかには、リストカットをして「手首の痛みのほうが心の痛みよりまだましだ」と言う子や、「手首を切ることで、生きていることを実感するんだ」と打ち明けてくれる子もいました。
わが子や身近な人がそんな苦しみを抱えているとき、まわりの人にやめてほしいことは、「命は大切だから、死にたいなんて言うのをやめなさい」と正しさを押しつけてしまうことです。
「命を大切にしなさい」という言葉が決してまちがっているわけではありません。けれども、その言葉がかえって子どもを追いつめてしまうことがあるのです。
なぜなら、「死にたい」と打ち明けてくれた子どもに、「そんなことを言うのをやめなさい」と言うと、子どもはかえって心を閉ざし、その後は正直な思いを打ち明けなくなってしまうという可能性もあるからです。
実際、だれにも「助けて」と言えないまま1人で苦しみ、もう「死ぬしか方法がない」と思い込んで最終的に死を選んでしまう子どもたちもいるのです。
自分で自分を責めないで
「消えたい」「死にたい」と思いながら生きているときに、「こんなことを思ってしまうなんて、自分はダメな人間だ」とさらに自分を責めてしまっている子のほうが多いのです。
「せっかく命を授けてもらったのに、死にたいと思っている自分はなんて親不孝なんだろう。こんなことを思う自分は、やっぱり生きている意味がない」。そんなふうに自分を追いつめてしまう子がいるということを、多くの人に知っておいてほしいのです。
それに、「命を大切にしよう」と思えるのは、その人自身が「大切にされている」と感じられた経験があってこそ思える感情なんだと私は思っています。
だれかに守られ、大切にされたという経験があってはじめて、人は自分の命の大切さを感じることができます。
大切にされた実感がないまま、「大事な命を粗末にしてはいけない」と言われても、ただ責められているようにしか感じないのです。
ですから、私は診察室で「死にたい」と言われたときも、「そんなこと思っちゃダメだよ」とは絶対に言いません。
「死にたいと思う自分を責めないであげてね。そう思いながら生きるときがあってもいいと先生は思っているよ」と伝えています。
心のなかで思うことは自由
そもそも人の感情というのは簡単にコントロールできるものではなく、常によいことだけを考えられるわけではありません。
私自身も、ポジティブな感情だけではなく、なにかがいやだとか、だれかが憎いというネガティブな感情が湧いてくることもあります。
でも、それぞれが心のなかで思うことは自由で、だれにも止められません。
たとえそれが「死にたい」という感情であったとしても、そのことで自分を責める必要はないのです。
ですから、「死にたい」という子には、そう思ってもいいけれど、それを行動には移さないでほしいということだけは伝えています。
そして、もうどうしようもないと感じるほど追いつめられている子がいたら、「また相談に来る」という約束だけはしてほしいと話しています。
精神科医にとって「死にたい」と言う患者さんを家に帰してもいい条件は、「また必ずここへ来る」という約束ができたときだけです。
「死にたいって思いながら生きててもいいんだよ。でも、来週までは生きてここでまた一緒に話そう」
その子には、そういう話を慎重に、ていねいに続けていきます。
まずは話してくれたことをやさしく受けとめる
もしも、わが子から「死にたい」と言われるようなことがあったら、だれでも動揺して「そんなこと言わないで」とか「死ぬなんて、言っちゃダメ」と言いたくなるかもしれません。
でも、まずは子どもの思いを否定せず、「よく話してくれたね」とやさしく受けとめられるといいですよね。
そして、その子が死にたいと思うほど追いつめられている過程に、丁寧に寄り添ってあげてほしいのです。
ときどき、子どもが「死にたい」と言うのは本気ではなく、親を試しているだけだと言う人もいます。リストカットなどの自傷行為をした子に対しても、「そんなのは試し行為だ」と決めつける大人もいます。しかし、その考えはとても危険です。
そういうことをする子どもは、しない子に比べて何十倍も自殺をするリスクが高いのです。「試しているだけで本気ではない」などと断定することはできません。
人はだれでも追いつめられると、あせりを感じるようになりますが、とくに子どもは視野が狭く、大人から見ればそんな状況でなくとも「死ぬしか解決方法がない」と思い込んでしまうこともあるのです。
以前、「私は、好きなマンガの連載が終わったら死ぬと決めています」と診察室で私に打ち明けてくれた中学生の女の子がいました。
その子は発達障害があり、日常生活でさまざまな問題を抱えるうえに、幼少期からの父親の厳しいしつけや人格を否定する言動によって追いつめられ、不登校になっていました。
一時は、ただひたすら、その日がこないことを祈るばかりでした。通院のたびに「来週も来る」という約束をなんとか取りつけ、翌週に無事な姿を見ては、ひそかに胸をなでおろしていました。
それでも、本人が地道に通院を続けてくれるうちに、少しずつですが家族が本人の特性を理解するなどまわりの環境もよくなり、本人のそういった気持ちも落ち着いていきました。
その後、その子は不登校の状態が続いていましたが、高校・大学にも進学しました。
そして今、「先生とカウンセラーのおかげで救われました。生きるのもわるくないかなと思ってます」と伝えてくれたときは涙があふれました。
私たちは、どんな感情を持っていてもいいし、自己肯定感が低いままでも、生きていていいんです。
「死んでしまいたい」「消えてしまいたい」という感情を抱きながら、それでも生きていていいんだよ。追いつめられている、その苦しみも否定されるべきではありません。
また、学校に行けるから価値があって、学校に行けないから価値がないということもありません。
学校に行けても行けなくても、勉強ができてもできなくても、その子はその子のままで価値のある人間なのです。
それが、「死にたい」と必死の思いで伝えてくれる子どもに、私がいちばん伝えたいことです。
児童精神科医のつぶやき
たとえ学校に行けなくても、死んでしまいたいと思っても、あなたは価値ある存在。そのことを全力で子どもに伝えてください
続きはぜひ書籍でご覧ください。
※本記事は、『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』<著:精神科医さわ/日本実業出版社>より抜粋・再編集して作成しました。
