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2026年03月10日 16:31 更新

「好きなことはできるのに、嫌なことはできない」誤解されがちな“過集中”の正体を、人気児童精神科医が解説

子どもが好きなことにだけ強く集中し、嫌なことには全く手がつかない——単なるわがままに見えるかもしれませんが、実は発達特性による行動差である場合があります。総務省の発達障害者支援に関する調査では、発達障害は「アンバランスな能力ゆえに周囲から理解されにくい障害」とされ興味の偏りやこだわりが強く見られることが指摘されています

また、文部科学省の全国調査では、通常学級在籍児童の8.8%が学習・行動面で著しい困難を示すとされ、その中には“特定のことに極端に集中しすぎる”“切り替えが苦手”といった特性が含まれることも報告されています(※2)。

こうした特性は誤解されることも多いものの、適切な理解と環境があれば子どもの強みとして活かされることがあります。本記事では、子どもの“過度な集中”が生まれる背景を解説し、周囲にできる寄り添い方のヒントを紹介します。

※1 総務省「発達障害者支援に関する行政評価・監視」
※2 文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)」

「発達ユニークな子」が思っていること,日本実業出版社

\子どもの“困った”行動に悩むすべてのママ・パパに/
YouTube登録者数10万人超、SNSでも注目を集める児童精神科医・さわ先生が、発達ユニークな子どもたちが感じている「困りごと」と、周囲の大人にできる関わり方をやさしく教えてくれる一冊です。

今回は、「興味のあること」と「興味のないこと」の差が大きい子どもが抱える困りごとについて、書籍『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』(日本実業出版社)から一部抜粋してお届けします。

自分の興味以外のことには関心を持てないんだ

子どもの困りごと
好きなことに過度に集中する。周囲から誤解されやすい

「好きなこと」や「興味のあること」には驚くほど関心が強いことも

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発達ユニークな子は興味や関心の幅が狭い一方で、自分が好きなことや興味を持ったことに対しては、驚くほどの集中力や探求心を発揮することがあります。

たとえば、好きな電車のことだったり、ゲームだったり、なにかの技術だったり、歴史上の人物だったり、特定の分野への探求心やモチベーションが非常に強い子がいます。

このような特性は小さなころから見られることがあり、就学前の子どもが大人も知らないような専門知識を披露して周囲を驚かせる、という場面も珍しくありません。

一方で、こうした特性を持つ子どもたちは、自分の興味のないことにはあまり関心を示さない傾向もあります。

この「興味のあること」と「興味のないこと」のギャップが大きく、親や周囲の大人にとって理解が難しい場合もよくあります。

さらに、「過集中」と呼ばれる状態が見られることもあります。過集中はASDだけでなく、ADHDにも共通して見られることがあり、ADHDの"集中できない”特性と共存するかたちであらわれることがあります。

過集中というのは、自分が好きなことに没頭しすぎて、ほかのことがまったく目に入らなくなる状態です。

たとえば、好きなことをやっているときは名前を呼ばれても返事をしなかったり、食事や入浴を促されても気持ちの切り替えができず、場合によっては激しく抵抗したりすることもあります。

好き嫌いで行動がちがうから、誤解されやすい

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もちろん、どんな子どもでも、自分の好きなものに対しては夢中になることはあります。

でも、発達障害がある場合は、この特性が強くあらわれることが多く、ASDとADHDの両方が併存しているお子さんでも、よく見られる傾向です。

特定のものごとに素晴らしい集中力を発揮できるという面はありますが、まわりの人からは理解されにくい面もあります。

たとえば、ふだんは大きな音をこわがる子でも、好きなゲームの音やゲーム大会の会場の騒がしさには耐えられるとか、いつもは電車に乗ることに困難を感じて騒いでいる子が、好きなイベントに行くときには電車に乗ることができるなど、「好き」や「楽しみ」が不安や苦手を上回るとできることもあります。ただし、それがほかの人には「わがまま」や「怠け」だと思われてしまうことがあるのです。

親御さんのなかには、こうした特性にとまどい、「好きなことは我慢できるのに、学校や勉強は我慢できないのは甘えではないか」「我慢を教えなければ、将来まともな大人になれないのでは」と心配される方も少なくありません。

クリニックの診察室でも、「先生はこの子に我慢をさせるなと言うのですか。それは、ただ甘やかせということですか」と、厳しい口調で問われることがあります。

たしかに親御さんの心配もわかりますが、これは判断の難しいところです。定型発達の子どもにとっては、たとえ、いやなことや苦手なことがあっても、周囲に合わせて我慢することができますが、発達の特性が強ければ強いほど、その子にとって困難となるのです。

そのため、一般的に「これくらいは我慢できるだろう」とされることでも、その子にとっては大きな負担となり、我慢させようとすることでかえってストレスや不安を増幅させてしまうことがあります。

逃げ場がなくなると、追いつめられてしまう子も

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とくに、逃げ場がない状況に追い込まれると、心理的な負担は大きくなります。

たとえば、学校に行くのを苦痛に感じていたある中学生の男の子は、親御さんに「学校に行かないならゲームを捨てる」と言われ、実際にゲームを取り上げられた結果、「もう学校にも行かないで飛び降りる」と言い出しました。

その子は、人間関係の悩みや感覚過敏など、さまざまな理由があって学校を苦しい場所だと感じていたので、自分の好きなことを取り上げられて逃げ場がなくなってしまったのかもしれません。

その子にとって学校は苦しい場所であり、大好きなゲームは唯一の安心できる場所だった。それを失ったことで、自分の居場所や生きる意味を見失ってしまったのでしょう。もちろん、すべてのケースでこうなるわけではありませんが、そういうことも起こる可能性があることを知ってほしいのです。

世の中には「いやなことから逃げてはいけない」「我慢をすることで鍛えられる」と教える大人もいますが、ときには逃げることも大切です。

とくに子どもたちの世界や価値観は非常に狭いため、「ここでうまくやれない自分には、生きている価値がない」などと思いつめてしまうことは少なくありません。

そのため、完全に学校から逃げる必要はないとしても、ここでも子どもたちが安全に感じられる場所を確保することが大事なのです。

好きなことをやっている時間によって「挑戦する心」が育まれることも

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実際に、“好きなことだけやっている”ように見えても、それはその瞬間だけ“安全が確保されている”ということもあるのです。じつは、その安心感があってこそ、次の挑戦へ進む余力が生まれます。

たとえば、家で好きなことを自由にする時間をつくるだけでも、子どもたちは安心感を得て、少しずつほかのことにも取り組む意欲が湧いてくることがあるのです。

その反対に、不安やストレスが強い環境では、感覚過敏やこだわりがさらに悪化し、癇癪やパニック、さらにはうつ症状や自傷行為にまで発展することもあります。

周囲の大人が子どもの特性を理解して、その子の受け入れられる範囲を尊重することが、子どもたちが自分らしく成長するための第一歩になります。

ときに、「世間一般の正しさ」や「ふつう」から離れることを大人は強く不安に思うこともあるかもしれませんが、「ふつう」にあてはめることが子どもにとって苦痛であるというのを少しずつ近くにいる大人が理解すること、それが子どもの心理的安全につながるのです。

児童精神科医のつぶやき

“逃げる”ことは“甘え”ではありません。安心してすごせる場所があるからこそ、子どもは挑戦できる心が育まれるのです

続きはぜひ書籍でご覧ください。

児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること
(2026/03/10時点)

※本記事は、『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』<著:精神科医さわ/日本実業出版社>より抜粋・再編集して作成しました。

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