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2026年05月18日 10:31 更新

「部活がなくなる?」「休日の部活が変わる」全国で模索が進む中、鯖江市がいち早く始めた“地域クラブ”の新しい形

2026年度より、市立中学校の休日の部活動が地域団体に完全移行された福井県・鯖江市。市内にある3つの中学校の生徒を中学校区の総合型地域スポーツクラブが受け入れ、市内の小学校・高校とも連携した、新しい地域活動のカタチをレポートします。

背景には、全国的に進む部活動改革の流れがあります。文部科学省は、少子化や教員の働き方改革を背景に、従来の学校主体の部活動から、地域全体で支える「地域展開」への転換を推進。2026年度以降は、休日の部活動について原則として地域で実施することを目指しています。

一方で、その地域展開は現在も各自治体の状況に応じて段階的に進められており、学校と地域クラブが併存するケースも少なくありません。こうした中で鯖江市は、早い段階から地域連携のあり方を模索し、実践を重ねてきました。

十種競技のオリンピック出場経験者・右代啓祐さんによる指導会を開催!

鯖江市では、3つの市立中学校区で個々に地域クラブを設立するのではなく、総合型地域スポーツクラブが協議会を作り、市内全域で一つの地域クラブを立ち上げ。これにより生徒のつながりをつくるとともに、部活動と地域クラブで綿密なネットワークを築いて指導方針に差が生まれないようにすることなどを目的に掲げています。

始まりとなる2026年度は、一流講師を招いて質の高いコーチングを取り入れることで、子どもたちの技術向上だけでなく、指導者自身のスキルアップも図ることも目指しています。

2026年4月26日、鯖江市内の陸上競技場にて、陸上十種競技でオリンピックに2大会出場を経験している陸上競技選手の右代啓祐さんを招いた指導会が開催されました。参加したのは、鯖江市の中学校に通う中学生を中心とした生徒たちです。

右代さんが登場すると、参加者たちからは自然と歓声があがります。自己紹介に続いてまず最初に伝えられたのは、ウォーミングアップの重要性。「ケガをしにくい体づくりには、基礎トレーニングが大切」という言葉とともに、指導はアップ運動から始まりました。

どこの部位に効いているのかを意識しながら行うストレッチ、リズムや動きを変えながらのダッシュ、メディスンボールを使ったトレーニングなど、30分以上かけた丁寧な指導が続きます。

「選手だけでなく、指導者にもトレーニングの考え方を伝えていきたい」と語る右代さん。見守る教員や地域クラブの指導者たちも、真剣な表情でメモを取っていました。

参加した中学生からは、「トレーニングは大変だったけれど、一流の講師から学べる貴重な時間でした」「これからどんなトレーニングを教えてもらえるのか楽しみ」といった声が聞かれました。

地域クラブと学校が連携する新しい形へ

指導会に先立ち、右代さんと鯖江市の地域クラブ関係者、小学校・中学校・高校の指導者によるミーティングも開催されました。

右代さんは、「全国的に地域クラブへの地域展開が進む中で、トップアスリートが継続的に関わる取り組みは初めて聞きました。十種競技で培った視点から、走る・投げる・跳ぶといった基礎動作を通して、子どもたちや指導者の役に立てれば」と話します。

また、地域クラブ代表の牧野さんは、「これまで関係者同士で何度も話し合い、学校の指導者とも連携しながら進めてきました。トップアスリートの知識や技術に触れることで、子どもたちはもちろん指導者側のスキルアップにもつなげ、鯖江市で運動をする子どもたちの成長に貢献したい」と語ります。

鯖江中学校の林校長は、「楽しく運動したい子も、上を目指したい子も、それぞれのニーズに応じた受け皿があることは大きい」と期待を寄せました。

午前中には小学生SC会員向けにも指導会を開催。

「地域で育てる」部活動へ

部活動改革は、単に活動の場所が変わるだけではありません。

学校だけで支えてきた活動を、地域全体で支える仕組みへと変わっていく中で、指導者、地域団体、学校がどのように連携していくかが問われています。

まだ模索の途中ではあるものの、鯖江市の取り組みからは、「地域で子どもを育てる」という新しい部活動の姿が少しずつ見え始めていました。

「吹奏楽のまち」でもある鯖江【鯖音フェス!】が大盛り上がり

この日、指導会が行われた会場に隣接する東公園芝生広場では、音楽イベント「鯖音フェス!」も開催されました。

鯖江市は、国産メガネフレームの生産シェア90%以上を誇る眼鏡産業の中心地であり、「めがねのまち」として全国的に広く知られています。一方で、「吹奏楽のまち」としての特色も有する鯖江市。「鯖音フェス!」は、鯖江高校吹奏楽部の学生が中心となって企画・運営した新たな試みで、演奏ステージのほか楽器体験コーナーや探究学習の成果を展示するブースなどが並びました。

楽器体験コーナーでは、子どもから大人まで多くの来場者が参加。初めて触れる楽器に戸惑いながらも、音が出た瞬間に笑顔が広がります。

また、鯖江市が2019年度から実施している幼児期の視力不良の早期発見や目の健康増進を目的とした「眼育プロジェクト」の一環で制作したかるたや絵本の紹介・体験型ブースのほか、ものづくりが盛んな鯖江市ならではの、眼鏡の素材のキーホルダー作り、レース素材のリボン作り、ゴミ箱作りの体験ワークショップブースもあり、親子連れで大いに賑わっていました。

さらに、鯖江高校探究科では、経済や経営に関心のある生徒が、地域活性化に貢献しようとカフェを運営。この日もイベントを盛り上げるために「サバコーカフェ」を出展。スムージーやアイスコーヒーを求める来場者の長蛇の列ができるなど、高校生たちが主体的に地域と関わる姿が見られました。

市の関係者は、「高校生が地域の大人と関わる機会をつくることで、地域への愛着を育てていきたい」と話します。

地域活性化に興味のある学生たちは、鯖江市にある商店街で提供されている商品の販売&PRブース「サバコーカフェ」を出展。コーヒーやジュースを販売しながら、地域の商店街についての解説もしていました。

イベント運営を通してまちづくりの担い手育成

「鯖音フェス!」は、単なる音楽イベントではなく、高校生たちが自ら考え、企画し、多くの人と関わりながら創り上げた“まちづくり”の実践の場となっていました。

来場者に喜んでもらうために意見を出し合い、悩みながら準備を進める中で、生徒たちはイベントを創り上げる達成感や、人と地域をつなぐ楽しさを実感していました。

こうした経験は、地域への愛着や主体性を育み、「自分たちがまちをつくっていく」という意識につながる大切な一歩に繋がります。

「若者が地域と関わり、挑戦できる舞台を創出する」という鯖江らしい取り組みが地域の活性化に繋がっていくことが期待されています。

(マイナビ子育て編集部)

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