成績が上がらない……安易な「転塾」の前に親がすべきこと。中学受験のプロが教える見極めのサインは?
「うちの子、今の塾に合っていないかも……」中学受験の成績不振に悩む親御さんの中には、転塾を考える方もいるでしょう。しかし、安易な決断は子どもへの大きな負担になります。成績が伸び悩む本当の理由や、転塾すべき「赤信号」のサイン、忙しい親にもできるサポートについて、個別指導塾SS-1の田畠 靖大先生に詳しく伺ってみました。
中学受験で成績が伸び悩む「3つの本当の理由」
塾に通っているのに成績が上がらない時、親は「塾を変えれば状況を打破できるのでは?」と考えがちです。しかし、田畠先生によると、塾の指導自体が成績不振の直接の原因になるケースはそこまで多くないといいます。
先生が長年の経験から分析する「成績が伸びない原因トップ3」は、以下の通り。
1位:学習量(宿題の取捨選択ができず、こなすだけになっている)
2位:学習方法(子どものタイプと塾の教え方のミスマッチ)
3位:メンタル・生活面(モチベーションの源泉のズレ、家庭内不和など)
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
【学習量】宿題は全部やらなくていい?「取捨選択」の重要性
近年、集団塾の宿題量は昔に比べて格段に増えています。真面目なご家庭ほど「全部やりきらなくては」と無理をしがちですが、これが成績低迷の大きな引き金になるそうです。 「宿題をこなすことが目的になると、文章の論理を読み取ったり問題の本質を考えたりせず、短時間で答えを当てる『短絡的な作業』になってしまいます」と田畠先生は警鐘を鳴らします。
具体的には、国語であれば「本文中にこの言葉があったから、多分これが正解だろう」と、選択肢の文章を読み込まずに回答するという悪習慣など。その結果、いくら量をこなしても本質的な学力が身につかなくなります。
上位クラスの成績優秀な子どもたちは、夜遅くまで勉強しているわけではなく、就寝時間をしっかり守っています。親御さんは塾の先生などプロの意見を仰ぎながら、「やらなくてもいい問題」を大胆に削り、本質的な勉強ができるよう学習量をコントロールしてあげることが大切です。
「終わるまでやらせる」のではなく、例えば「夜10時半になったらおしまい」といったルールを設け、睡眠時間の確保を最優先にすることが求められます。
【学習方法】「解法暗記」か「本質理解」か。子どもの学習タイプを見極める
塾によって、教え方のカラーは大きく異なります。最短ルートで解法を教えるのが得意な塾もあれば、根本的な理由や本質から教える塾もあります。ここで重要になるのが、「子どもの学習タイプ」との相性です。
●解法重視型:「とりあえず解き方を早く知りたい!」というタイプ
●本質理解型:「なんでそうなるの?」と理由が気になり、腹落ちしないと先に進めないタイプ
先生や親が「とりあえず覚えちゃおう」と押し付けても、理由を知りたい子は先に進めず、応用問題が解けなくなってしまいます。
子どものタイプに合わせた環境選びや指導が大切で、場合によっては個別指導塾で理由を補足してあげるなどのサポートが必要です。
【メンタル・生活面】保護者と子どもの「タイプのズレ」が家庭内不和を生む
子どもによって学習タイプが異なるように、何でモチベーションが上がるのかは人それぞれです。「自分が立てた目標を達成した時」に喜ぶ自己軸タイプもいれば、「親や先生からすごいね!とほめられた時」に頑張れる他者評価タイプもいます。
親がここを勘違いし、目指した点数に届かず落ち込んでいる自己軸タイプに「前回より上がったじゃない」と言ったり、ほめられたい子に「悔しい!と思わなきゃダメ」とプレッシャーをかけたりすると、心に全く響かずモチベーションが低下してしまう原因に。
ありがちなのが「自分が悔しさをバネにする性格だったから、子どももそうなはず」と思い込んでしまうこと。親子であってもモチベーションのタイプは異なることを理解し、その子に合った声かけをすることが大切です。
安易な「転塾」はNG! 本当に塾を変えるべき「赤信号」とは
親は成績が下がるとすぐに転塾を考えがちですが、テキストも教え方も変わる転塾は、子どもにとって非常に大きなストレスとなります。田畠先生は「まずは宿題の量を減らしたり、親の接し方(叱るのをやめてほめるなど)を変えたりして、今の環境でできることを試すべき」と語ります。
ただし、以下のような「赤信号」が出た場合は、早急な対応や転塾の検討が必要です。
●塾に行きたがらない・泣き出す:テストの席順などで自己肯定感が下がり、精神的に限界を迎えている場合は、無理に行かせるべきではありません。
●テキストが全く理解できていない:基本問題の最初の時点でつまずき、授業が9割理解できていないような場合は、塾の難易度が決定的に合っていません。
●月単位のテストで2回連続の不調:組み分けテストなど、1ヶ月に1度行われるテストで2回連続で成績が落ちた場合は、一時的な不調ではなく「悪い学習習慣」が定着しているサインです。
なお、特定の教科の先生との相性が悪いだけの場合は、転塾ではなく「別校舎への変更」で解決することも多いそうです。
忙しい親でもできる! 今日から始める3つのサポート
共働きなどで学習にずっと付き添うのが難しいご家庭でも、実践できる効果的なサポートがあります。
「今日何を習ったか」を聞く
食事の時などに、子どもに塾の授業の内容を説明させましょう。親が「理解するまで真剣に聞く」ことが、子どもにとって最高の言語化・アウトプット練習になります。途中でダメ出しをしたり否定したりしないことが鉄則です。
塾のノートをチェックする
誰も見ないと、子どものノートは乱雑になります。夜遅く帰宅した親御さんが「昨日より字が丁寧だね」と声をかけたり、メッセージを書いた付箋を貼ったりするだけでも、子どもは「見てもらえている」という安心感を得られます。
思い切って「休ませる」判断をする
成績の良いお子さんがいる家庭ほど、我が子が疲弊している時には思い切って塾を休ませる大胆さを持っているもの。詰め込みすぎず、リフレッシュさせる勇気を持つことが、結果として成績向上に繋がるのです。
1人で抱え込まず、プロという「伴走者」を見つけよう
中学受験は親の悩みも尽きません。成績が落ちると「こんな成績ではどこも受からない!」と焦ってしまいがちですが、成績低下の背景には悪い習慣やミスマッチなど、必ず何かしらの理由が潜んでいます。
転塾という子どもにとって重い決断を下す前に、まずは個別指導塾などのプロに「困っているんです」と気軽に相談してみるのも解決の近道になるかもしれません。
第三者の客観的な視点を取り入れることで、親も子も納得して前へ進めるヒントがきっと見つかるはずです。一人で突っ走らずに、まずは信頼できる「伴走者」を探してみてはいかがでしょうか。
(取材・文:マイナビ子育て編集部)
田畠 靖大(たばた やすひろ)先生 プロフィール
中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1(エスエスワン)関東副代表・渋谷教室長。国語・算数を担当する中学受験専門のプロ講師として、SS-1渋谷教室を中心に多くの受験生を指導し、毎年難関中学への合格を実現している。
SS-1筆頭講師の一人として、これまで難関中をはじめとする数多くの第一志望合格を実現。中学受験全般に通じ、子どもの特性に合わせた指導法にも明るく、講師研修や外部講演も担当する。
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