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- 2026年07月12日 08:12
子どものアトピー性皮膚炎は3歳・6歳・12歳が節目! その理由は?「知っているかどうかで選択肢が変わる」
子どものアトピー性皮膚炎は、年齢とともに症状の出方や生活上の困りごとが変わります。特に3歳・6歳・12歳は、園や学校生活、自己管理の面で環境が大きく変わる節目。現在の治療で困りごとが残っていないか、見直すきっかけになります。
アトピー性皮膚炎は、子どものおよそ10人に1人にみられる身近な病気
7月1日に都内で行われた、サノフィ主催「小児アトピー性皮膚炎」のセミナー。前半では、国立病院機構三重病院 小児科臨床研究部長・長尾みづほ先生がアトピー性皮膚炎についての講演を行いました。
アトピー性皮膚炎は、「かゆみのある湿疹が繰り返し現れる」ことが特徴の慢性の皮膚の病気です。子どもに多い病気で、乳幼児期~学童期では、子どものおよそ10人に1人にみられます。
アトピー性皮膚炎と乳児湿疹を見分けるポイント
特に乳児期は、肌トラブルが多い時期でもあります。乳児期のアトピー性皮膚炎は、生後1~2カ月頃にみられる乳児湿疹と見分けがつきにくいこともあるそうです。見分け方はあるのでしょうか。
「アトピー性皮膚炎と乳児湿疹を見分けるポイントは、『湿疹を繰り返す』ことや『強いかゆみ』があること。抱っこされた人の体に頬をこすりつけるようなしぐさをしたり、お風呂の前に服を脱がせたときに体をかくようなしぐさをしたりするとアトピー性皮膚炎の可能性があります。
アトピー性皮膚炎は血液検査だけでは診断できず、皮膚の状態や症状の経過を総合的に見て診断します」(長尾先生)
年齢によって湿疹が出やすい場所が変わる
ひとくちにアトピー性皮膚炎といっても、年齢によって湿疹の出やすい場所には特徴があるそうです。
「乳児期は頬や顔に湿疹が出やすく、幼児期は肘の内側や膝の裏などに出やすくなります。学童期以降は体幹(胸・背中など)や全身に広がることもあります。3歳くらいまでに改善することもありますが、年齢が上がるにつれて、中等症以上の比較的症状が強い患者さんの割合が増えてきます」(長尾先生)
本来、皮膚は外部刺激から体を守る役割を果たしていますが、アトピー性皮膚炎ではそのバリア機能が弱くなっている状態です。
「バリア機能が弱まると肌が乾燥しやすくなり、刺激を受けやすくなってかゆみが生じます。そしてかくことでさらに皮膚が傷つき、炎症が悪化し、ますますかゆくなる……という悪循環に陥ってしまいます」(長尾先生)
アトピー性皮膚炎がきっかけになることもある「アレルギーマーチ」とは
「近年は、アトピー性皮膚炎が皮膚だけの問題ではないことも分かっています。食物アレルギーや喘息、アレルギー性鼻炎など、ほかのアレルギー疾患との関連も指摘されており、次々にアレルギー疾患が発症する流れは『アレルギーマーチ』と言われます」(長尾先生)
アレルギーマーチはアトピー性皮膚炎の患者さんすべてに起こるものではないですが、アトピー性皮膚炎をきっかけに見られることがあり、ほかのアレルギー疾患にも注意して経過を見ていくことが大切だということです。
「かゆみ」は子も親もつらい。ケアの負担から保護者が自分を責めてしまうことも
アトピー性皮膚炎のつらさは、湿疹そのものだけではありません。大きな問題の一つが「かゆみ」です。
「かゆみが強いと眠れなくなり、睡眠不足につながります。夜中に何度も起きてかいてしまう子どもも少なくありません。睡眠不足は翌日の機嫌や活動量に影響するだけでなく、集中力の低下や疲労感、不安感などにつながることもあります。
そして、子どもの困りごとはそのまま保護者の負担にもなります。毎日の保湿、薬の塗り分け、通院、肌状態のチェックなど……。共働き世帯も増えるなか、これらのケアを継続することは簡単ではありません。夜中に子どもがかゆがれば、保護者も睡眠不足になりますよね。そんな中『ちゃんとケアしているのに治らない』『自分の管理が悪いのでは』と自分を責めてしまう保護者も少なくありません」(長尾先生)
3歳・6歳・12歳で治療を見直したほうがよい理由
アトピー性皮膚炎のような慢性の病気では、一度治療を始めると、治療内容などを見直さないまま、同じ治療を長期にわたって続けることがあります。しかし、子どもの成長の過程において生活環境が大きく変わるタイミングで、治療を見直すことが大切です。
「3歳、6歳、12歳は子どもにとって生活環境が大きく変わります。なかでも3歳は重要な節目とされています」(長尾先生)
3歳が重要な節目だとされる理由は大きく2つあるそうです。
「保育園では、2歳児クラスと3歳児クラスで先生1人が受け持つ子どもの人数が大きく変わり、(先生が子ども一人ひとりを細かくみることが難しくなるため)日中の着替えなどのケアの状況が変わります。また、3歳になっても症状が続いている場合は、それ以降も長く続くタイプのアトピー性皮膚炎の可能性があります」
3歳のほか、6歳、12歳も治療を見直す節目になります。
「小学校へ入学する6歳以降は、集団生活で日焼け止めの使用やスキンケアのタイミングなどについても制約があるでしょう。中学校に進学する12歳は、思春期にさしかかり、医療を継続するためのコミュニケーションが取りにくくなることがあります。
このように、3歳、6歳、12歳のタイミングで、生活環境の変化によって症状が悪化していないかを確認しつつ、治療を見直すことが大切です」(長尾先生)
治療の見直しといっても、必ず薬を変えるという意味ではありません。湿疹やかゆみ、睡眠、園・学校での困りごと、薬や保湿が続けられているかを医師と確認し、必要に応じて生活や治療内容を調整することが大切だということです。
治療の目標は“湿疹がほとんどない状態”を維持すること
アトピー性皮膚炎治療の基本となるのは、皮膚を清潔に保ちしっかり保湿するスキンケアと、必要に応じて抗炎症薬を使う治療です。加えて、この数年で治療の選択肢は増えています。
「2018年頃まで治療の中心は保湿剤とステロイド外用薬で、それ以外の選択肢は限られていました。そのため『悪くなったら薬を塗る』『よくなったらやめる』を繰り返す状況が少なくありませんでした。
現在は考え方が変わり、目標は単に悪化している状態を乗り切ることではなく『湿疹がほとんどない状態を維持すること』です。かゆみが少なく、よく眠れ、家族の負担も軽い状態を長く保つことが重視されています。新しいタイプの外用薬が登場し、さらに重症例では飲み薬や注射薬による全身療法も選択できるようになりました」(長尾先生)
近年では、治療の幅が広がったことで、子どもの年齢や症状、生活状況に合わせた治療が可能になっています。
「大切なのは『治らないから仕方がない』とあきらめないことです。アトピー性皮膚炎は皮膚だけの病気ではなく、睡眠や食事、園・学校生活、家族の暮らしにも影響します。だからこそ、困りごとは家庭で抱え込まず、ぜひ医療機関に相談してほしいです」(長尾先生)
辻希美さん「知っているかどうかで選択肢が大きく変わる」
イベント後半では、5人の子どもを育てるタレントの辻希美さんが登壇し、長尾先生とトークセッションを行いました。
辻さんは、子育ての中で赤ちゃんの肌トラブルに触れる機会が多いことに触れ、「赤ちゃんのころは湿疹が出ることが多いと感じます」と、ママの目線から語りました。
トークでは「アレルギーマーチ」についても話題に。辻さんは「アレルギーマーチという言葉を初めて聞きました」と驚いた様子を見せました。辻さんと同じく、調査では約7割の保護者がこの言葉を「初めて知った」と回答しており、まだあまり認知されていないことがうかがえます。
長尾先生から「アレルギーの連鎖を断ち切るためには、最初に起こるアトピー性皮膚炎の症状をしっかり改善していくことが大切」と説明を受けると、辻さんは「子育て中は毎日バタバタしていて、どうしても目の前のことしか見えなくなりがち。今だけではなく将来も見据えて考える必要があると感じます」と話しました。
さらに「3歳・6歳・12歳は治療を見直すタイミング」という考え方について、辻さんは「子どもが5人いると、アレルギーを持っている子もいます。入学や卒業など環境が変わることで、症状の変化を感じることもあります」と自身の子育て経験を交えながら話しました。長尾先生も「生活環境の変化によって症状に影響が出ることがある」とし、成長の節目に治療や生活を見直す大切さを改めて伝えました。
また、長尾先生は、治療の選択肢が増えたことによって「症状がほとんどない状態を目指せる時代になりましたが、その情報がまだ十分に知られていないことが課題です」と指摘。辻さんは「知っているかどうかで選択肢が大きく変わると思います。1人でも多くの保護者の方に、この情報が届いてほしいです」と語りました。
(取材・文:早川奈緒子/マイナビ子育て編集部)
