【医師監修】妊娠初期のおなかの張りはどんな感じ?張る場所と注意したい症状
妊娠がわかってすぐのころは、まだふくらんでいないおなかのことがいつも気になりますね。ちょっとした変化にも敏感になるもの。ちょっとおなかが張っているみたい……そんなとき、どんなことに気をつけたらいいのか知っておきましょう。
妊娠初期に「おなかの張り」はどん感じに起こる?
妊娠中は「おなかが張る」という言葉をよく聞くようになります。それはいったいどんな感じで、何が起こっているのでしょうか。そして、それは妊娠初期でも起こるものなのでしょうか。
初期の「おなかの張り」は太ももの付け根あたりに違和感
赤ちゃんの居場所である子宮は、ほとんどが筋肉でできた袋状の器官です。この筋肉は外からの刺激で収縮しやすいと言われています。また、自律神経のほか、性ホルモンの影響でも収縮する特徴があるとされています。
「おなかの張り」を感じているときには、この子宮の筋肉が収縮して固くなっていることがあります。
ほかに、妊娠すると急激に子宮への血流が増え、筋肉の細胞が増殖・巨大化して子宮全体が伸びて広がりますが、このときに子宮を支える靭帯や膜が引っ張られて、おなかが「張る」感じがする場合もあります。
妊娠初期によく起こるのは、子宮を支える靭帯(円靭帯)が引っ張られることによるもので、太ももの付け根(鼠径部)に沿って片側または両側に痛みや違和感を覚え「おなかの張り」として感じるというもの。
長時間の立ちっぱなしだったり、歩いたりしたあとに起こりやすいのですが、安静にしていればよくなります。これは妊娠の経過とともに少なくなっていきます。
妊娠初期におなかが張って心配なのはどんなとき?
安静でおさまる「おなかの張り」ならば問題なし
おなかの張りやチクチクした感じはほとんどの人に起こります。生理的な子宮の収縮や、大きくなる子宮により靭帯や膜が引っ張られることは妊娠中、誰にでも起こりうることです。ただ、それを「張っている」と感じるかどうかは、人によって違います。
もし妊娠初期に「おなかの張り」を感じても問題はありません。おなかが張ったときには、体を休めるようにしましょう。安静にしておさまるような張りや痛みは、ほとんど問題はありません。
妊娠中は便秘が原因でおなかが張ることも
おなかの張りというと、腸内のガスがたまって張る感じを想像するかもしれません。実際、妊娠すると腸の動きが悪くなることが多く、日ごろは便秘知らずの人でも、妊娠中は便秘しやすくなります。妊娠すると黄体ホルモン(プロゲステロン)が多く分泌され、このホルモンの働きによって腸の働きが鈍くなるからです。
そのために、溜まった便や腸内ガスによって「おなかが張る」と感じることがあるかもしれません。
問題があるのは、強い痛みと多量の出血
痛みがとても強い場合や痛みが増してきて眠ることもできないような場合には、時間外であってもすぐに病院に相談しましょう。異所性妊娠(子宮外妊娠)や卵巣茎捻転など、すぐに手術が必要な場合があります。
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また、夜用ナプキンが短時間でいっぱいになるような量が出血している場合も、すぐに止血が必要なときがあるので病院に相談しましょう。
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一方で、出血や痛みがそんなに強くない場合でも、流産ではないかと心配になる人もいるでしょう。しかし、前回の受診時に超音波検査で子宮の中に胎嚢があることが確認されていて(=子宮内妊娠)、かつ、痛みや出血がひどくないならば、数日以内の受診でも構いません。
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ほとんどの流産は、精子と卵子が受精したときの遺伝子の異常によるものであり、病院に行っても特に治療はありません。早めに受診しても運命を変えることはできないのです。もちろん、現在の状況を知りたいのであれば、病院に相談してから受診しましょう。
まとめ
妊娠初期はいろいろなことが心配になりますね。おなかの張りを感じること自体は、珍しいことではないので安心してください。なんとなく張る感じがする、休んだらよくなるという場合は問題ありません。ただし、多量の出血を伴う、痛みが激しい、という場合は、すぐに診察を受けるようにしましょう。
(文:関川香織/監修:太田寛先生)
※画像はイメージです
・日本産科婦人科学会監修:Babyプラス, p32「おなかの張り」, リクルートホールディングス, 2016.
・病気が見えるvol.10 産科, p3, メディックメディア, 2018.
・長谷川潤一:ペリネイタルケア2018夏季増刊 はせじゅん先生の助産師が今さら聞けない臨床のギモン「CQ-107生理的子宮収縮 異常とどこで見分ける?」, p66-69, メディカ出版, 2018.
・NEWエッセンシャル産科学・婦人科学 第3版, p327, 医歯薬出版, 2004.
・プリンシプル産科婦人科学 2 産科編 第3版, p205, メジカルレビュー社, 2014.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます