
妊婦の食事にタコは大丈夫? 食べ方は刺身? ボイル?【管理栄養士監修】
妊娠中はNGといわれる食材はいくつかありますが、タコ(蛸)はどうなのでしょうか? ネット上には根拠のない眉唾情報も多数あり、迷ってしまう妊婦さんも。妊婦がタコを食べても問題ないのか、食べ方の注意点はあるのかなどについて、魚介類と言えば気になる水銀に関することとともに、母子栄養協会の川口由美子先生に解説いただきます。
<<<この記事でお伝えすること>>>
✅ タコには水銀が含まれる?
✅ 妊娠中はどうやってタコを調理したらいい?
✅ お刺身・お寿司のタコは食べていい?
✅ 妊娠中でもタウリンはとってもいいの?
✅「妊娠中にタコを食べると赤ちゃんに異常が出る」はほんと?
妊婦はタコを食べていい? 水銀のリスクは?

結論から先に言うと、妊婦さんもタコを食べてOKです!
タコは良質なたんぱく質のほかに、亜鉛、銅、ビタミンE、ナイアシン、ビタミンB12、葉酸なども含む栄養豊富な食材です。茹でる・焼くなど火を通してから食べる等、いくつかのポイントを押さえれば、おいしく栄養が摂れます。
でも、妊娠中に寿司や刺身で生魚を食べることは控えたほうが良いなどと聞くと、やっぱりタコを食べるのも何か問題があるのでは……とつい考えすぎてしまうのはよくあることです。妊婦さんがタコを食べるにあたって心配になりそうな点について、これから解説していきます。
妊娠中に注意したい魚介の水銀
まずは、「水銀」について。
たんぱく質はもちろん、ビタミン、ミネラル、脂質などをバランスよく含む、大切な栄養源である魚介類。一方、微量ながらも水銀が含まれており、妊婦さんの場合は赤ちゃんへ影響を与える可能性があるため、食べる頻度や量に少し注注意が必要といわれる種類があります。
タコは水銀のリスクが低く安心

でも、タコは水銀について心配する必要はありません。
実は、水銀については、注意が必要な魚と気にしなくても良い魚があります。注意すべきものとして名前があげられているのは、キンメダイ、メカジキ、クロマグロ(本マグロ)、メバチマグロ、マカジキ、ミナミマグロ、クロムツなどの魚やクジラ、イルカ類です[*1]。
タコはこのリストに含まれていません。ですから、水銀を気にして食べる回数や量を考える必要はありません。ちなみにエビやイカもタコ同様、水銀を気にせず食べられます。
なお、さきほど挙げた水銀に注意が必要な魚介類も、量や回数などに注意すれば食べても問題ありません。詳細については、以下を参照してください。
▶︎厚生労働省「これからママになるあなたへ お魚について知っておいてほしいこと」
妊娠中気をつけたいのはタコの食べ方
栄養豊富で水銀の心配はないタコですが、妊娠中はとくに食中毒に注意が必要です。妊婦さんは食べ方にひと工夫しましょう。
妊婦は加熱済のタコを

タコによる食中毒で気を付けたいのが「腸炎ビブリオ」です。アジ、サバ、タコ、イカ、赤貝などの内臓やエラに付着することのある細菌で、口にすると食中毒を発症することがあります。腸炎ビブリオによる食中毒では、激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐などの症状に見舞われます。
ただ、腸炎ビブリオは、中心温度70℃で1分以上加熱すれば、感染のリスクはほぼなくなります。タコについては、ボイル済のマダコを見かけることが多いですが、ミズダコの場合は生の状態で刺身やしゃぶしゃぶ用として売られていることもあります。
妊娠中はボイル済みがおすすめ
妊婦さんが食べるなら、ボイル済のタコのほうが向いています。生やしゃぶしゃぶ用の場合は、ゆでたり焼いたり、加熱してから食べることをおすすめします。
また、ボイル済のタコも購入後はできるだけ早く冷蔵庫に入れて、低温で保存しましょう。冷蔵庫内でも増殖する細菌はあるので、冷蔵庫を過信せず、新鮮なうちに早めに消費することが大切です。
タコも手も調理器具もよく洗う

なお、腸炎ビブリオは真水では増えないので、タコを調理するときは流水でよく洗ってからにすると良いでしょう。また、まな板などを通じてほかの食品に付着し、そこから二次感染を引き起こすこともあるので、調理する際は手や調理器具はこまめに洗浄しながら行うようにしましょう。
刺身やお寿司のタコは食べてもいい? 妊娠中の食中毒の影響
タコに限らず、妊娠中はなるべく生の魚介類は避けたほうがよいといわれています。食中毒のおそれがあるほか、妊娠中は女性ホルモンの影響などで胃腸の働きが鈍くなり、消化機能が弱くなることも関係しています。
ゆでダコの刺身・お寿司なら食べても大丈夫

ただ、タコの刺身の多くはゆでてある状態なので、その場合は食べても大丈夫。冷蔵庫できちんと保存したものを賞味期限内に食べきってくださいね。カルパッチョなどを楽しみたくなった時、妊娠中でもゆでダコなら食べられるというチョイスがあるといいですよね。
また、タコのお寿司の場合も、生タコのものではなくボイルしたタコの寿司を選びましょう。調理後、できるだけ時間の経っていないものを食べましょうね。
魚介類には妊婦さんにとってうれしい栄養素が多く含まれています。しっかり加熱して食中毒を予防すれば、むしろ積極的に摂りたい食品です。食べ方によって起こるリスクや自分の体調などは考慮したうえで、魚介類も上手に取り入れていきましょう。
妊娠中のタコに関するよくある疑問
そのほか、妊婦さんがタコを食べる際に気になる疑問をまとめました。
タコに豊富なタウリンは妊婦も摂っていい?

タコはたんぱく質やミネラル・ビタミンを多く含んでいますが、特筆すべきは妊婦さんにとってうれしい栄養素である「タウリン」でしょう。
タウリンはアミノ酸に似た物質で、タコのほか、貝類、イカといった軟体動物に豊富に含まれており、「コレステロールの吸収を抑える」「心臓や肝臓の機能を高める」「視力の回復を促す」「血糖を下げる働きのあるインスリンの分泌を促す」「高血圧を予防する」など、多様な働きがあるといわれています[*2]。
また胎児や乳幼児の体の成長、特に脳の成長にとって、タウリンが重要な役割を果たすという報告もあり、母乳の中にも多く含まれていることがわかっています。
栄養ドリンクは注意が必要
ちなみに、タウリンは、身近なところでは栄養ドリンクによく含まれています。そのため「お腹の赤ちゃんのために栄養ドリンクを飲んだ方がいいのでは」と思う人もいるかもしれませんが、アルコール濃度が高かったり、カフェインや砂糖を多く含んでいたりすることが多々あります。したがって妊婦さんが栄養ドリンクは摂取する場合は、注意が必要です。
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妊娠中の栄養ドリンクについては以下の記事で詳しく解説しています。
▶︎【医師監修】妊婦の飲食「栄養ドリンク」これはOK?
妊娠中にタコを食べると赤ちゃんに異常が出る?
「妊娠中にタコを食べると、赤ちゃんに異常が出る」という話を耳にしたことのある人がいるかもしれませんが、これはまったくの迷信です。気にする必要はないでしょう。
多くの妊婦さんは妊娠中も安心してタコが食べられます。ですが、だからといってタコばかりを食べすぎるのはNG。タコに限りませんが、特定のものばかりを食べることは妊娠中はとくにおすすめできません。偏りなく、さまざまな食品をバランス良く食べるよう、気を付けておきましょう。
なお、妊娠中、注意が必要な食品としてはアルコールや生肉、生魚、生卵、加熱殺菌していないナチュラルチーズなどがあげられます。詳しくは下記の記事を参照してください。
▶︎妊娠中の食事の注意点!OK or NGの食べ物は?
まとめ

タコなどの魚介類には、妊婦さんやお腹の赤ちゃんにとってうれしい栄養素が豊富に含まれています。妊娠中は食中毒にとくに気を付けたいので生食は避けてほしいのですが、加熱調理したものを適量食べる分にはおすすめです。食べ方には少し気を付けながら、栄養豊富なタコも妊娠中の食生活に役立てましょう。
(文:山本尚恵/監修:川口由美子 先生)
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※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます