妊婦はいくらを食べてはいけないって本当?注意したいリステリア菌とは【管理栄養士監修】
妊娠中は普段以上に食中毒に注意が必要で、特に一部の食中毒菌などでは赤ちゃんに深刻な影響が出る可能性があるものもあります。食中毒のリスクのある食品としてまず思い浮かぶのがお刺身など “生もの” ですが、魚の卵を生で食べる「いくら」はどうなのでしょうか。今回は妊娠中のいくらについて解説します。
妊婦にいくらがNGと言われる理由
妊娠中は普段よりも食事内容や食材、調理方法などに気をつけなければいけない、と見聞きすることがあるかと思います。しかし、中には「どうしてダメなんだろう?」と理由まではわからないものも。
まずは今回のテーマである「いくら」について、妊娠中に食べることのリスクを考えてみましょう。
リステリア菌の感染リスク
生の魚介類には腸炎ビブリオなどの食中毒のリスクがありますが、中でも「リステリア菌」は妊娠中に特に気をつけたい食中毒菌です。
リステリア菌は4℃以下の低温や12%食塩濃度下でも増殖できるのが特徴の細菌で[*1]、この菌による食中毒の原因になる主な食品は、ナチュラルチーズ、生ハムなどの食肉加工品、スモークサーモンなどの魚介類加工品などです。これらは妊娠中に避けた方がいいとされています。そして、加熱せずに食べるいくらに関してもリステリア菌感染のリスクがあり、実際にいくらからリステリア菌が検出されたこともあります。
妊娠中は普段よりも20倍もリステリア菌に感染しやすい状態にあり、妊婦さんが感染すると重症化しやすく、また、おなかの赤ちゃんにも影響があることがわかっています。リステリア菌は加熱によって死滅します(中心部75℃以上、1分間)。妊娠中は生の状態でのいくらを食べることは避けた方がいいでしょう。
アニサキスの感染リスクはある?
食中毒の原因になるのは細菌だけではなく、魚介類に寄生している「アニサキス」という寄生虫によって食中毒が引き起こされることがあります。アニサキス症と呼ばれる食中毒は、アニサキスが寄生している魚介類を生で食べることで起こります。
アニサキスがいくらの中にいることはありませんが、サケはアニサキスが寄生している可能性の高い魚のため、すじこなどの表面についている可能性はあります。もし、すじこからいくらを取り出すなどの場合は、しっかりと目視で確認をする必要があります。
アニサキスは加熱(60℃で1分以上、もしくは70℃以上)だけでなく、冷凍(-20℃で24時間以上)することでも死滅させられます。ただし、妊娠中はリステリア菌など別の要因での食中毒が心配なので、非加熱のいくらは避けるといいでしょう。
塩分の過剰摂取
妊娠中はただでさえむくみやすくなっているので、むくみをひどくさせないためにも塩分の摂りすぎに気をつけたいものです。
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、成人女性は食塩6.5g未満/日が目標量となっています[*3]。いくら100gの塩分は食塩で2g以上も含まれています。いくらは醤油漬けや塩漬けにされていることが多いので、塩分の過剰摂取という観点からも注意したい食材ですね。
ビタミンAの過剰摂取
ビタミンAは妊娠中も必要な栄養素ですが、摂りすぎにも気をつけなければいけません。ビタミンAの摂取量として、超えない方がいい量(耐容上限量)は2,700μgRAE/日となっています。
いくらにはビタミンAが多く含まれていますが、100gで330μgRAE程度[*2]。お寿司1貫のいくらの量は10gほど、いくら丼でも100〜150gぐらいなので、ビタミンAの過剰摂取という面では心配する必要はないでしょう。
ビタミンAは、いくらよりもうなぎやレバーなどにより多く含まれます(うなぎのかば焼100gで1,500μgRAE、生の鶏レバー100gで14,000μgRAE、生の豚レバーで13,000μgRAE)。1日の食事でこれらの食品を多く食べる、ということが続くことがないようにしましょう。また、食品から摂る以上に、マルチビタミンなどのサプリメントに含まれるビタミンAが問題となるので、注意しましょう。
妊娠中のいくらに関するよくある疑問
妊娠中は生のいくらを食べることを避けたほうがいいとお伝えしましたが、それではいくらを加熱するとどうなるどうなるのでしょうか。また、お寿司屋さんではどんなネタを食べたらいいのでしょうか。
いくらを加熱するとどうなる?
生のいくらに食中毒のリスクがあるのであれば、加熱して食べればいいと考える人もいるでしょう。
魚卵であるいくらはタンパク質が豊富なので、加熱するとかたくなり、醤油漬けのいくらをそのまま食べるのとはまた違った食感になります。また、見た目も白っぽくなります。
石狩鍋やパスタなどいくらを使った加熱料理の場合、最後に上に乗せるだけだったり、食べる前にさっと混ぜるだけだったりが多いのですが、作る際にいくらにもしっかり熱を通せば、食感や見た目は変わりますが食中毒対策にはなるでしょう。
いくら以外に注意したい海鮮・寿司ネタは?
妊娠中に海鮮や寿司を食べるときは、生の魚介やスモークサーモンなど、火を通していないものは控えましょう。
妊娠中におすすめの寿司ネタは魚介類に火を通してあるもの(茹でたり蒸したりしたタコ・イカ・エビ・穴子など)です。もちろん、たまごやかんぴょう巻き、いなり寿司なども食べられます。
まとめ
いくらはリステリア菌などの心配があるので、妊娠中は控えた方がよさそうです。どうしても食べたいのであれば、加熱して食べるのも手です。食感や見た目は変わりますが、食中毒の心配はなくなります。妊娠中は避けた方がいい食材が多く、何かと心配になってしまうかもしれませんが、ポイントを知って安心できる範囲で食事を楽しんでくださいね。
(文:オノカヨ/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
(文:オノカヨ/監修:川口由美子 先生)
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