手づかみ食べをしないのは問題?しない理由は?対処のポイント8つ【管理栄養士監修】
離乳食が進むと、赤ちゃんは手づかみ食べをするようになると言われますが、なかには「そろそろ手づかみ食べをしてもおかしくないのに、なぜ我が子はしない?」と不安に思ってしまう方もいるかもしれません。手づかみ食べをしない赤ちゃんに対してどのようにアプローチをしたらよいか、考えたいポイントと工夫を解説します。
手づかみ食べにはどんな意味がある?
大人からすると「手づかみ食べ」は簡単にできることですが、赤ちゃんにとっては自分の手で食べる行為は目・手・口を使う高度な動作になるので、なかなか難しいことです。その意味や時期についてみていきましょう。
発育・発達のうえで見られる行動
手づかみ食べにはどのような意味があるのでしょうか?
赤ちゃんは手づかみ食べを通して、食べ物を握る・掴む、前歯で噛み取るといった動作や、自分が食べられる一口量などを学んでいきますが、五感を使って自分で食べる経験を積むことで、食べ物への関心を高めることにもつながってきます。また、指先を動かすことは脳への刺激にもなりますね。
手づかみ食べを繰り返すなかで赤ちゃんは自分で食べることが上手になり、それがスプーンやフォークで食べるためのステップにもなります。手づかみ食べは赤ちゃんの発育・発達には必要なことなのです。
赤ちゃんのやってみたい気持ちをサポートしながら成功経験を増やすことで食べる時間も楽しくなるので、できる限り手づかみ食べをさせてあげられるとよいですね。
時期は9ヶ月~1歳頃が目安
手づかみ食べは生後9ヶ月以降から見られ始めることが多いです[*1]。この頃から、「食べ物を見る→手で触る・掴む→口に食べ物を運ぶ→口の中で味わう」という一連の行動が、少しずつできるようになっていくでしょう。食べ物に手を伸ばし、しっかりと持てるようになるのが9ヶ月くらいから、うまく口に食べ物を運べるようになるのは1歳くらいが目安になるかもしれません。
もっとも、発育には個人差が大きく、赤ちゃんや環境などによっても変わります。「いつから」「いつまでに」と決めつけずに、目安の時期になったら手づかみ食べができる環境をつくり、様子を見るのがよいでしょう。
また、口の中の機能の発達においても、9ヶ月頃には歯茎で食べ物を押しつぶしたり、1歳頃には歯で嚙み潰したりできるようになり、咀嚼が発達していく時期です。手づかみ食べには咀嚼をうながす役割もあります。
手づかみ食べをしないこともある?
このように、手づかみ食べは「自分の意思で食べる」という自立や、手指の発達、咀嚼の発達などにもつながっていくため、赤ちゃんにとって必要な行動です。では、手づかみ食べをしないことはあるものなのでしょうか?
手づかみをしなくても大丈夫
手づかみ食べを絶対にしなければならないというわけではありません。たとえば、手が汚れるのが嫌いなどの理由で手づかみ食べをしたがらないこともあります。あまり手づかみをしないでスプーンやフォークに移行する赤ちゃんもいるので、あくまでお子さんに寄り添った対応をしていきましょう。
無理やり教えるのはNG
手づかみ食べを無理強いすることで、食べることが嫌になってしまうのはNGです。乳幼児期の食事では、子どもが「食べることは楽しいこと」だと認識できることが何よりも大切になります。手づかみ食べをさせたいと思うかもしれませんが、赤ちゃんの様子に寄り添うことを第一に心がけましょう。
手づかみ食べをしたがらない赤ちゃんは、ママやパパに食べさせてもらうことが好きな場合もありますが、そうした赤ちゃんはまわりの大人の行動をよく見ています。大人が手づかみで食べる様子を見せてあげると、手づかみ食べに興味を持つきっかけになるかもしれませんね。
手づかみ食べをしないときの8つの対策
子どもが手づかみ食べをしないとき、何かできることはないかと思う方もいるでしょう。手づかみ食べを促すアプローチのポイントをお伝えします。
1.抵抗なく触れる食べ物を探す
献立の中に手づかみ食べしやすいメニューを1品入れるようにしましょう。その際、いろいろなものを試して、お子さんが抵抗なく手で触ったり、つかんだりできるものがないか、探してあげてみてください。
食べ物を触ったときの感覚が苦手であっても、ザラザラ、ベトベト、ツルツルなど感触もさまざまです。食べ物によっては、抵抗を感じないものもあるかもしれません。たとえば、おにぎりを嫌がる場合でも、焼きおにぎりにしたら食べられる、パンなら食べられるということもあるので、試してみましょう。
2.好きなものを手づかみメニューにする
離乳食はバランスよくいろいろなものを食べることが大切ですが、すべてのメニューを手づかみ食べさせる必要はありません。赤ちゃんが好きな食べ物を手づかみしやすい調理にすればよいと考えましょう。
3.ママ・パパの手から食べる
赤ちゃんが自分で手づかみ食べをしなくても、ママやパパが食べ物を手に持って赤ちゃんに食べさせるだけでもよいでしょう。食べ物をかじりとる練習になるうえ、ママやパパの手で食べ物をもらうことが、自分で手づかみ食べをしたくなるきっかけになることもあります。
そのときのポイントとしては、赤ちゃんが前のめりになって食べ物をくわえられる程度の距離で、食べ物を持ってあげることです。こうすることで、赤ちゃんが自分から手を伸ばして食べ物を掴もうとする行動につながりやすくなります。
4.スプーンで食べさせるときのひと工夫
スプーンで食べさせる場合にも、赤ちゃんの「自分で食べる」意欲を引き出すポイントがあります。スプーンを赤ちゃんの口の中に「入れる」のではなく、少し手前で手を止め、赤ちゃんにスプーンを「見せる」くらいの感覚をもつとよいでしょう。赤ちゃんが自分で首を前に出して食べようする行動につながります。
5.子ども用フォークを活用する
手づかみ食べをしないことで手指を使う練習ができないことが気になるようであれば、子ども用フォークを活用してみてください。食べ物にフォークを刺して目の前に置き、しばらく様子を見ましょう。赤ちゃんが興味を持ってフォークを持つだけでもOKです。子ども用フォークは赤ちゃんが持ちやすい設計になっているので、掴む、握るという動作の訓練がしやすいですよ。
6.家族で一緒に食べる
赤ちゃんだけが食事をしているより、家族も一緒に食卓を囲むほうが自分で食べる意欲をうながすことができます。赤ちゃんの食事のお世話があるので大人は時間をずらして食事をしている場合もあるかと思いますが、できれば、一緒に食事をして、赤ちゃんが大人の食べる様子を見ながら食べられる環境をつくってあげるとよいでしょう。
また、赤ちゃんに「ママ(パパ)にアーンして」と言ってみたり、アーンしてくれたら「次は〇〇ちゃんの番だね」などとコミュニケーションを工夫するのも1つです。真似っこが手づかみ食べのきっかけになることもあるでしょう。
7.食事どきにお腹が空くリズムを作る
食べ物に集中するにはお腹がちゃんと空いていることも必要です。食事の時間にお腹が空くように生活リズムを整えたり、しっかり活動させることも大切になります。母乳やミルクを飲んでお腹いっぱいになったところで食事時間になってしまうと食欲がわかないので、母乳やミルクのタイミングも注意するとよいでしょう。
8.食事以外で手を使う経験を増やす
手がべとべとしたりするのが苦手な赤ちゃんは、手づかみ食べがうまく進まないかもしれません。あまり手づかみ食べにこだわると食事が嫌なものになってしまうので、それ以外の時間に手が汚れる経験がもてるようにすることも大切です。
1歳前後になるといろいろなものに興味がわきますが、手を使った遊びからもさまざまな感触を経験することができます。たとえば、公園で葉っぱや木の実、石を拾ったりすることで物の硬さなどを学びます。また、家の中で新聞をやぶったり、丸めたり、投げたりするときの感触や、インクで手が汚れる感覚を知るのも良い経験になるでしょう。
手づかみ食べにおすすめの食材
手づかみ食べが苦手なお子さんには、どんな食材や料理を試せばいいのでしょうか。おすすめのものをご紹介します。
手につきにくいもの
次のようなものは手につきにくいため、べたべたするのが苦手な赤ちゃんにもおすすめです。
・加熱した野菜
・焼き固めたおやき
・焼売の皮を使った挟み焼き
・サンドイッチ(かじりとれる大きさにカット)
・おにぎり
茹でたり出汁で煮ただけの野菜はべたつきも比較的少ないうえ、調理が簡単なので特に取り入れやすいでしょう。素材をおいしく食べることも赤ちゃんにとって大事なことなので、うまく活用してみてください。
なお、大人の指でつまんだときに簡単につぶせるくらい(バナナくらいの硬さ)に調理しておくと、赤ちゃんは歯茎でつぶすことができるので食べやすいでしょう。
【手づかみ食べレシピ】きなこパンケーキ
べたつきが少なく、かじりとりやすい料理としておすすめなのがパンケーキです。一度食べやすいと感じると手をのばしやすくなります。円形ではなく小判型のほうが持ちやすいですよ。
■材料(作りやすい量)
・米粉 30g
・牛乳 50ml
・バナナ 1/2本
・きなこ 小さじ1
油 適量
■作り方
① バナナ、きなこ、牛乳をミキサーなどで撹拌する
② ボウルに①と米粉を入れてよく混ぜる
③ フライパンを熱して油をひき、小判型になるように生地を落とす
④ 両面5分ずつ焼く
まとめ
手づかみ食べは赤ちゃんの成長過程において大切な行為ですが、絶対にしなければならないというものではありません。手づかみ食べをせずにスプーンやフォークで最初から食べることもあります。幼児期になりおにぎりやサンドイッチを食べるようになれば、自然に手で食べることも覚えるでしょう。日常生活や遊びを通すことで手指の発達を促していくこともできます。離乳食の時間が楽しいものであることを第一として、ママもパパも負担なく赤ちゃんに寄り添いながら進めていけるといいですね。
(文:シライカヨコ 先生/監修:川口由美子 先生)
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