おもらしとおねしょはどう治す?【子供の昼&夜のおしっこ相談③】
お友達に比べておもらしがなかなかなくならなくて、さらにおねしょも続くと気になりますね。おもらしとおねしょの関係やその原因、治し方などを沖縄県立南部医療センター・こども医療センターの川合志奈先生にうかがいました。 最終回となる今回は「おもらしとおねしょの治療法」についてお伝えします。
【子供の昼&夜のおしっこ相談】連載一覧
第1回 おもらしとおねしょ、治療が必要なのはいつから?
第2回 なかなか止まない「おもらし」と「おねしょ」の原因は?
第3回 おもらしとおねしょはどう治す? ←
おもらしとおねしょ、どっちを先に治す?
お子さんによっては、昼間尿失禁(おもらし)と夜尿症(おねしょ)の両方が見られることがあります。
その場合、昼間尿失禁と夜尿症、どちらの治療を優先した方がいいのでしょうか?
まずはおもらしから治しましょう
川合先生 昼間尿失禁と夜尿症の両方が見られる場合、昼間尿失禁の治療が先になります。
昼間におしっこが漏れると、社会生活への影響が夜尿症よりも大きいからです [*7]。
なお便秘もある場合は、便秘の治療も行うことになります。
おもらしの治療はどんなことをするの?
昼間尿失禁(おもらし)の治療方法には行動療法と薬物療法の2つがあります。
それぞれの治療方法を見てみましょう。
おもらしの治療|行動療法
川合先生 尿意の認識があってもなくても、2~3時間ごとにトイレに連れていって「おしっこの時間です」と声をかけます。
本人は尿意を認識していなくても、定時排尿でおしっこがしっかり出るのを見たり、おもらしをしない成功体験を積み重ねるうちに通常尿意が認識できるようになって、昼間尿失禁がなくなっていきます [*8]。
定時排尿を平均8.2カ月続けたところ、38.1%のお子さんが昼間尿失禁が改善された、という報告もあります [*9]。
おもらしの治療|薬物療法
薬を使った治療が行われることもあります。
川合先生 昼間尿失禁の治療は、行動療法が中心です。行動療法で効果が上がらなかった場合は、抗コリン薬を服用することもあります。
抗コリン薬には膀胱の緊張をゆるめる働きがあるため、「通常尿意」の時間が長くなります。そのため、定時排尿をする際におしっこをもらさないチャンスが増えます [*8]。
おねしょの治療はどんなことをする?
夜尿症(おねしょ)にも、治療方法には薬物療法と行動療法の2つがあります。
おねしょの治療方法|薬物療法
川合先生 ミニリンメルト(一般名:デスモプレシン酢酸塩水和物)という抗利尿ホルモン剤を、寝る30分~1時間前に飲みます。
抗利尿ホルモンは、寝ている間におしっこを作る量を減らす役割をします。
そのため、抗利尿ホルモン剤を服用し続ける、寝ている間に作るおしっこの量が減っていき、夜尿症が治っていくと考えられています。
おねしょの治療方法|行動療法(アラーム療法)
アラーム療法は「おねしょをした瞬間に鳴るアラームを使う治療方法」です。
川合先生 毎晩、おしっこをした瞬間に鳴るアラームを装着して寝ます。
おねしょをするとアラームが鳴るので、保護者の方にはアラームを止めてお子さんを起こしていただき、残りのおしっこをトイレでさせてから、着替えてアラームははずし、もう一度寝てもらいます。
それを3~4カ月間続けると、朝までおしっこをもらさずためられるようになります。
アラーム療法と投薬治療では、どちらがよく行われますか?
川合先生 アラーム療法は、保護者の方がお子さんを起こさないといけないことが大半で、これが大きな負担になることもあります。また、日本では自分でアラームを購入する必要があります。このため結果として投薬療法をまず行うことが多いです。
まとめ
昼間尿失禁の治療は「2~3時間おきにトイレでおしっこをする」という行動療法、夜尿症の場合は抗利尿ホルモン剤の投与や、アラーム療法が治療の中心となります。なお、昼間尿失禁と夜尿症の両方が見られる場合は昼間尿失禁の治療を優先することが多いです。
昼間尿失禁も夜尿症も、体に原因があって起こることです。叱りつけても治ることはないので、お子さんを責める前に小児科や泌尿器科、小児泌尿器科に相談して治療に取り組んでいきましょう。
(文:大崎典子/監修:沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 川合志奈先生)
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【子供の昼&夜のおしっこ相談】連載一覧
第1回 おもらしとおねしょ、治療が必要なのはいつから?
第2回 なかなか止まない「おもらし」と「おねしょ」の原因は?
第3回 おもらしとおねしょはどう治す?
※この記事は以下の記事を元に作成されました。
「【医師解説】おもらしとおねしょは関係あるの?原因や治す順番、治療方法が知りたい!」(文:大崎典子/監修:沖縄県立南部医療センター・こども医療センター 川合志奈先生)
※画像はイメージです
[*1]Kyrklund K, Taskinen S, Rintala RJ, Pakarinen MP. Lower urinary tract symptoms from childhood to adulthood: a population based study of 594 Finnish individuals 4 to 26 years old. J Urol 2012;188:588-93.
[*2]Austin PF, Bauer SB, Bower W, et al. The standardization of terminology of lower urinary tract function in children and adolescents: update report from the Standardization Committee of the International Children's Continence Society. J Urol 2014;191:1863-5.e13.
[*3]Neveus T, Fonseca E, Franco I, et al. Management and treatment of nocturnal enuresis-an updated standardization document from the International Children's Continence Society. J Pediatr Urol 2020.
[*4]Franco I. Overactive bladder in children. Part 1: Pathophysiology. J Urol 2007;178:761-8; discussion 8.
[*5]Burgers RE, Mugie SM, Chase J, et al. Management of functional constipation in children with lower urinary tract symptoms: report from the Standardization Committee of the International Children's Continence Society. J Urol 2013;190:29-36.
[*6]Campbell-Walsh-Wein Urology, 12th ed.
[*7]Neveus T, Eggert P, Evans J, et al. Evaluation of and treatment for monosymptomatic enuresis: a standardization document from the International Children's Continence Society. J Urol 2010;183:441-7.
[*8]Chang SJ, Van Laecke E, Bauer SB, et al. Treatment of daytime urinary incontinence: A standardization document from the International Children's Continence Society. Neurourology and urodynamics 2015.
[*9]Allen HA, Austin JC, Boyt MA, Hawtrey CE, Cooper CS. Initial trial of timed voiding is warranted for all children with daytime incontinence. Urology 2007;69:962-5.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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