妊婦の歯周病はお腹の赤ちゃんにも悪影響!? なかなか歯が磨けない時の対処法|歯科医解説
半数以上の妊婦さんが経験するとされている妊娠初期の「つわり」。食欲がなく、吐き気がするだけでなく、歯磨きもままならない……という方も多くいます。しかし、妊娠中は特にお口の環境に注意が必要なのです! 今回は歯科医の熊谷靖司先生(熊谷歯科医院院長)に、「妊娠中の口腔内ケア」について解説いただきました。
■今回の解決ドクター:熊谷 靖司 先生(熊谷歯科医院院長/歯科医師)
つわり中、吐き気で歯が磨けない……
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Q 妊娠初期でつわりがひどく、歯磨きをしようにも歯ブラシを口に突っ込むとえづいてしまいます。だんだんと「歯磨きをしなきゃ」と思うだけで気持ち悪さが増すようになりました。妊娠中は歯周病などにも注意が必要と聞いたのですが、こんな状態でどうすればいいのでしょうか?
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妊娠中〜産後は、著しい身体と生活の変化に子どもの世話も相まって、なかなか自分のケアをする余裕はありませんよね。中でも歯や口内のケアとなると、ついつい疎かになりがち。特に妊娠初期は、つわりによって歯磨きをすること自体で吐き気を引き起こしてしまうことがあります。
妊娠中に増えるホルモンが歯周病菌の餌に
妊娠中はさまざまな理由から虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
まず、妊娠中は女性ホルモンが多く作られることで、ホルモン自体が歯周病菌の餌となり歯周病が進行しやすくなります。また、つわりによって口腔ケアが充分に行えないことも多くあります。それによって、歯の周りに付着している細菌(歯垢・プラーク)が停滞し、歯肉は炎症を起こします。歯磨き中の出血などはその症状のひとつです。
歯肉に炎症が起きると、炎症性サイトカインと呼ばれる物質が作られます。炎症性サイトカインの働きにより子宮口が開き、早産や低体重児出産のリスクが高くなります。実際、歯周病の妊婦は早産あるいは低体重児出産の危険率が7.5倍高かったという研究結果もあります[*1]。
また、歯周病だけでなく、妊娠中は偏食の傾向が強くなるため、虫歯のリスクが高くなります。
では、この時期にどのような対策を行えば良いのでしょうか?
「月イチ歯科受診」「フッ化物洗口」がおすすめ
妊娠中はできるだけ口腔内は清潔にするように心がけましょう。偏食やつわりにより口腔内が不潔になってしまう場合は、月1回歯科医院を受診してクリーニングを受けるのも良いと思います。虫歯予防を目的として家でフッ化物洗口を取り入れると効果的だと思います。
妊娠中から産後までの期間にはさまざまな問題が引き起こされます。また、産後は育児に忙しく自分のケアは後回しとなり、病気が発症したり進行しやすくなります。
口腔内が不潔だったり、歯周病の炎症は妊娠へも影響するので、できれば妊娠・出産の前に妊活の時期から歯科医院を受診していただき、虫歯や歯周病を治すことが大切です。
人生100年時代と言われている昨今、生涯を通してお口の健康を維持するため、ライフステージに合わせて向き合っていきましょう。
(文:熊谷 靖司 先生、協力:株式会社メディコレ、構成:マイナビ子育て編集部)
※画像はイメージです
[*1]Offenbacher S, Katz V, Fertik G, Collins J, Boyd D, Maynor G, McKaig R, Beck J. Periodontal infection as a possible risk factor for preterm low birth weight. J Periodontol. 1996;67(10 Suppl):1103-13.