中学受験するなら「勉強しなさい」と何年生からいうべきなの?|低学年のための中学受験レッスン#19
中学受験が気になる低学年の子どもの親御さんのなかに「どこかのタイミングで勉強はさせ始めなくちゃ」「いったい何年生から厳しく言う必要があるんだろう」、こんな風に思ってる方はいらっしゃいませんか?そこで本記事では、ベテラン中学受験指導家・宮本毅先生が「保護者のみなさん向けに大切なこと」についてお話しします。
自ら勉強する子どもを育てるには?
中学受験の出題範囲は膨大です。
嫌がる子どもに無理やり勉強させるにはちょっと無理があります。全部親が面倒を見ていたら、大変な労力になってしまいますね。第一、嫌々やっていても学習効率は上がりません。効率が悪ければライバルたちに差をつけられ、成績が上がらず、親子ともども疲弊してしまいます。
ですから、中学受験を成功させるためには、自ら勉強できる子に育てることがとても大切です。自ら勉強できるようになれば、親の労力はグッと減らせます。中学受験以後も子どもの人生にとって大きな武器になります。
では、どうしたらそんな子に育つのでしょうか? 幼少期にどんな声掛けをすれば、子どもが自ら勉強に向かえるようになるのでしょうか。
「勉強しなさい」は言っちゃダメ
いきなりタイトルに矛盾することを言い出して、「は?」と思った方もいるでしょう。当然の疑問です。しかしこれは真実なのです。
子どもを、自ら勉強に向かう子に育てたければ「勉強しなさい」という声かけは、絶対にしてはいけません。
この声かけをすればするほど、自から勉強する子からどんどん遠ざかってしまいます。子育ての中で、絶対に言ってはいけない言葉ベスト3の中に必ず入るほどの禁句です。私だけでなく、受験のプロや教育の専門家100人中、96人くらいは「絶対に言っちゃダメ!」と答えると思います。
人は、他者から命じられたことに反発してしまう
みなさんは「心理的リアクタンス」というものを聞いたことはないでしょうか。
ヒトにはもともと「自分の行動や選択を自分で決めたい」という欲求があります。しかしそれを他者から先回りされて「やりなさい」と命じられてしまうと、反発心が生じてしまいます。これを「心理的リアクタンス」といいます。
心理的リアクタンスとはすなわち「他者によって自分の意思や行動を制限された時に起こる心理的抵抗」のことを指します。「心理的リアクタンス」については、この記事でもご紹介しています。
たとえば今、子どもがゲームに興じていたとします。そこへ親がやってきて「(ゲームなどやめて)勉強しなさい」と命じたとしましょう。すると子どもは自分の自由を制限されたと感じて「勉強なんてしたくない」と思ってしまうわけです。
別のシチュエーションも考えてみましょう。
子どもがいつまでたってもダラダラしていて、家族で取り決めた家庭学習の時間になっても勉強を始めようとしなかったとします。そこにしびれを切らした親が「いつまでダラダラしてんの。勉強しなさい」と言えば子は「今勉強しようと思ってたのに。あー、やる気なくなった」と反論するでしょう。 こう聞くと、親は「詭弁だ」と感じると思うのですが、実はこの言葉は心からの叫び声なんです。子どもは「勉強しなさい」と聞くと本当に勉強したくなくなってしまうのです。「勉強しなさい」という言葉は子どもを勉強から遠ざける最も強力な言葉なのです。
ですから「勉強しなさい」という言葉はグッと飲み込んで、別の声掛けや行動で子どもを勉強に向かわせるように心がけましょう。
遊びと勉強の間に境界線を引かない
実は子どもは好奇心旺盛で、勉強したがりな生き物なのです。
それもそのはず、野生動物たちは皆、周囲の状況に目を配り、常に情報を収集して学んでいかないと、いつ敵に襲われ命を落とすかわかりません。
勉強嫌いな個体は簡単に死んでしまうのです。生き延びるために彼らは一生懸命、文字通り命を懸けて学びます。
ヒトの子とてそれは同じこと。ですから子どもは常に「なぜ?」「なに?」と聞いてきます。子ども達は基本的に全員、好奇心旺盛で勉強好きなのです。「じゃあなんでうちの子勉強嫌いなのよ?」と疑問に思うママはたくさんいるでしょう。人間が特別ってことはありません。実はほとんどの場合、親が子どもを勉強嫌いにしてしまっているのです!ガーン!
多分多くのご家庭で、勉強時間と遊びの時間を分けていると思います。そりゃメリハリが大事ですから、「はい!じゃあ遊びの時間はおしまい!学校の宿題をやっちゃおう!」って言ってません?
そういわれると子どもは、「あ~あ、遊び(=楽しい)時間は終わりかあぁ。勉強(=辛い)時間が始まってやだな」と感じてしまいますよね。
毎日毎日それを刷り込まれて育つので、みな「勉強嫌い」になっちゃうわけです。だって楽しい時間が終わって勉強の時間が始まるわけですから、そりゃあ嫌いにもなりますよ笑。だから、遊びの時間と勉強の時間を分けないようにするべきなのです。
自らお勉強を進んでやる子は遊びと勉強の境界線があいまいなことがほとんどです。
彼らの多くは、息抜きに読書をしたり、息抜きに図鑑を広げたり、息抜きにパズルを解いたりしています。テレビを見るのはブラタモリだけ、中には国語の勉強の合間に息抜きに大好きな算数の勉強をするなんてツワモノもいるくらい。
そんな子を敵に回して勉強嫌いな子が勝てるはずはありません。
そして、たいていこうした子のおうちには、ゲームやマンガがほとんど置いてなかったりします。置いてあるのは歴史マンガとルービックキューブと将棋盤と脳トレパズルのみ。
子どもはそれで遊ぶしかありませんから、自然と遊びと勉強の境界線がなくなっていくのでしょう。
数年前に「うんこドリル」というものは流行りましたよね。あれがなぜ流行ったのかというと、まさにお勉強と遊びの垣根を低くしたからです。
子ども達はうんこが大好き。うんこという言葉が入った文章を読ませるだけでゲラゲラ笑います。 笑いながら漢字の勉強ができる、夢のような教材です。遊び感覚で勉強させれば、子ども達は喜んでやるということの、いい例証だと思います。
じゃあ何年生から、どうやって「勉強」させるの?
まずは「はい!じゃあ勉強して!」という言葉をやめてみましょう。
3年生までは「勉強」と「遊び」を区別させない
3年生くらいまでは、机に座らせて勉強させるのではなく、寝転びながら、踊り狂いながら、歌を歌いながら学校の宿題をやらせたらいいと思います。
計算ドリルはママやパパと一緒に競争。
社会や理科は教科書やテキストなんて使わずに、お休みの日に一緒にお出かけして実物を見てくればいいです。テキストに「河岸段丘」なんて書いてあっても子どもは覚えやしません。でも一緒に出掛けていって見てきたことはきっと記憶に残ります。
そうやってちょっとずつ体験させながら、レクリエーション的に学びの要素を盛り込んでいけばよいと思います。
4年生からの「勉強」のさせ方
4年生くらいになって受験勉強が本格化してきましたら、家族で時間割を決め、おうちの壁に貼っておくことをおススメします。
そうすれば子どもはそれを見て「あ、算数やる時間だ」とチェックして動けるようになるでしょう。
このときにも時間割に「勉強」とは書かずに「計算ドリル」とか「社会の塾の宿題」などと、より具体的にやる内容を決めておきましょう。
そうすると「何をやらなければならないのか」を考えることをしなくて済むので、心理的なハードルが下がります。
それでも勉強してくれないときは「仲間」になろう
「時間割を決めているのにうちの子は勉強を始めないんです」こうおっしゃる方は、ではそのとき、保護者の方は何をしていますか?
子どもには勉強をさせているのにパパがテレビを見ていたら、そりゃあ子どもは「ズルい!」ってなりますよね笑。
大切なのは、その時間親も兄弟姉妹もみなが何かしらのことをやっているということです。パパやママも何かの資格を目指すのはどうですか。
私はユーキャンの講座で「整理収納アドバイザー1級」の資格を取りましたが、案外短期間で取ることができました。
子どもは「共に頑張れる仲間」がいるだけで、一気にやる気が出ます。
ダラダラする子どもを無視してママが資格勉強を始めれば、子どもは自ら勉強道具を持って来て、横に座って勉強するようになるでしょう。
資格の勉強でなくても、リモートワークのお仕事でも構わないのです。「一緒に頑張る」そのことだけで子どもたちは頑張れるものです。
「勉強しなさい」ではなく「ママ、今から勉強しよーッと!」。是非やってみてくださいね!
※中学受験ナビの連載『低学年のための中学受験レッスン』の記事を、マイナビ子育て編集部が再編集のうえで掲載しています。元の記事はコチラ。