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2022年12月12日 17:20 更新

【助産師解説】母乳過多!? 母乳が出過ぎて困る場合の対策

母乳が出過ぎて困るというママへ向けて、考えられる要因とそれに合わせた6つの対策をご紹介。母乳は出ないことだけでなく、出過ぎても問題に。母乳に関するさまざまな問題に、助産師が丁寧に解説します。

母乳が出過ぎるのはなぜ?

出過ぎる母乳を蓄乳するイメージ
Lazy dummy

母乳が出ないことが悩みというママも多いですが、実は出過ぎることに悩んでいる女性も少なくありません。母乳が出過ぎるのには、どのような理由があるのでしょうか?考えられる原因をまとめました。

まだ需要と供給のバランスが合っていない時期かも

出産後、乳房は赤ちゃんのおっぱいを飲む量に合わせて母乳を産生します。ですが、母乳産生量と赤ちゃんの摂取量の調節ができるまでの間、赤ちゃんが飲む量を大幅に超える母乳を作ってしまうことがあります。

最初の約10日間はホルモンの調節で母乳を産生するので、おっぱいが張るからとすぐに片側授乳で母乳量を減らす対策をするのはNGです。おっぱいが張って痛かったり、母乳の勢いが強くて赤ちゃんがむせてしまうようなときは、授乳の前に軽く搾乳するなどして対応しましょう。

人によっては母乳量の調整に時間がかかることもあります。一般的に張りが落ち着いてくるといわれる2~4週間を過ぎても母乳量が安定しなかったとしても、焦らずもう少しだけ様子を見るようにしましょう。
関連記事 ▶︎母乳はいつから出るの?安定するまでの期間

母乳分泌過多で出過ぎている可能性も

母乳が出過ぎる悩みをもつママも
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赤ちゃんの飲む量より母乳の分泌が多すぎることを、母乳分泌過多と言います。母乳分泌過多になると常におっぱいが張っている感じがするので、これを“溜まり乳”と表現することもあります。
産後2~4週を大幅に過ぎてもおっぱいの張りや母乳の漏れが落ち着かない場合は、母乳分泌過多の可能性があります。

母乳分泌過多になるのには、主に以下の2つの要因が考えらえます。

1. 授乳方法や搾乳のしすぎによる理由
授乳方法がまちがっていたり、搾乳をしすぎることも要因のひとつとなります。例えば1回の授乳で両方の乳房を短時間で切り替え授乳したり、乳房をいつも空にしようと授乳後にさらに搾乳したりすると、乳房はおっぱいが足りないと判断して母乳を多く作ろうとし、結果的に母乳分泌過多になってしまうことがあります。

2. 母親の身体的な理由
母親の身体的な問題(高プロラクチン血症、薬剤の影響など)から母乳分泌過多が起こることもあります[*1]。母乳の分泌を減らす方法を試しても変化がないときは、一度医療機関に相談をしましょう。

母乳分泌過多の場合は、授乳状況を確認しながら原因を探って解決法を見出すことが大切です。何が原因になっているかは調べてみないとわからないこともあるので、乳腺炎などのトラブルを繰り返さないためにも自己判断はせず、早めに医療機関に相談することをおすすめします。

母乳分泌過多になると何が問題?ママと赤ちゃんへのリスク

母乳が出過ぎるのでたくさん飲んでもらいたいママ
Lazy dummy

産後1ヶ月を大幅に過ぎても母乳量が多く、常におっぱいが張っているという場合は、母乳分泌過多になっている可能性があります。では、母乳分泌過多になるとどのような問題があるのでしょうか?ママと赤ちゃん、それぞれのリスクについて見てきましょう。

母乳分泌過多になったときの母体へのリスク

母乳分泌過多になると、赤ちゃんが飲む量よりも産生量の方が多くなるため、飲み切れなかった母乳が溜まって乳汁うっ滞が起こり、乳腺炎になるリスクが高まります。乳腺炎は繰り返しやすいので、一度なると何度も悩まされる可能性も。

また、頻繁に母乳が乳房から漏れ出てしまうため、常に不快な状態で生活しなければならないというデメリットもあります。

母乳分泌過多になったときの赤ちゃんへのリスク

赤ちゃん側のリスクとしては、授乳時の射乳の勢いや母乳の流れの速さによっては、乳房から直接飲む際に、むせたり、咳き込んだり、乳房に吸着し続けることが困難なことがあります。こまた、直接飲めた時でも、大量の母乳と空気を一緒に飲みこむことになるため、吐き戻しやお腹にガスが溜まりやすいという問題があります。

その他、母乳は多く摂取しているのに、すぐに飲みたがるという矛盾した状況になる場合も。これは、母乳分泌過多になると、満腹感を得られやすい脂肪分を含む母乳を赤ちゃんに飲ませにくくなるためです。母乳の脂肪含有量は、おっぱいが空に近づくにつれ高くなります。飲み始めの頃の母乳には、脂肪分よりもラクトースと呼ばれる糖が多く含まれます。母乳分泌過多になると赤ちゃんが母乳を最後まで飲み切れなくなるため、満腹感を得られやすい高脂肪の母乳は飲めず、すぐにお腹が空き授乳間隔が短くなることもあります。また、脂肪分の多い母乳を飲めないことで、体重増加が緩やかになることがあります。

このように、吐き戻しが多かったり、母乳の分泌はいいのに赤ちゃんの体重増加が緩やかな場合は、母乳分泌過多の可能性を示すサインとなります。また、授乳中に赤ちゃんが咳き込む、のけぞったり暴れたりして乳房に吸着し続けることが困難、授乳のときに赤ちゃんの口から母乳があふれ出るなども、母乳分泌過多のサインである可能性があります[*2]。

母乳が出過ぎるときの6つの対策

まだ母乳量の調整過程で需要と供給のバランスが合っていないだけであれば、適度な圧抜きや搾乳などで対処が可能です。産後早期の場合は、このような方法で様子を見てみましょう。

母乳が出過ぎるママの母乳過多対策
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(1)授乳前に圧抜きをしよう

おっぱいが張り過ぎてカチカチになっているときは、そのまま授乳すると赤ちゃんが飲めないことがあります。授乳の前に乳輪を柔らかくしてから、赤ちゃんにおっぱいをふくませるようにしましょう。乳輪のむくみの程度により赤ちゃんが容易に吸着できるようになるまで数回行います。授乳の直前に行うのが効果的です。

<圧抜きの方法>
1.圧抜きをする方と反対の手で乳房を下から支える
2.指先を乳輪の周りに置き、体の内側へ痛みがないようやさしく押す
3.位置を変えて、数分間の圧迫を続ける


このとき、おっぱいをしごくと乳腺を傷めてしまうので、必ずやさしく圧するくらいにとどめるようにしましょう。

(2)赤ちゃんが飲み切れなかった母乳は適度に搾乳を

授乳後もおっぱいが張っているときは、適度に搾乳しましょう。圧抜きと同じ要領で、親指と人差し指を使って乳輪のすぐ外側から体の内側に向かって軽く押すようにしながら搾乳してください。
関連記事 ▶︎母乳の搾乳&保存方法と解凍方法

手で搾る方法の他、搾乳機を使う方法もあります。搾乳が頻繁であったり、飲み残しが多いときは、搾乳機を使うと楽でしょう。さまざまな製品が出ているので、使いやすいものを選んでください。

わからないときは、かかりつけの産婦人科や助産師さんに相談してみましょう。

ただし、搾乳のしすぎは逆効果になるので注意が必要です。搾乳しすぎると、乳房はより多くの母乳を作ろうとするため、むしろ状態が悪化する場合があります。決して搾りきろうとせず、おっぱいの張りがなくなったらやめるようにしてください。

(3)張りが強いときは適度に冷やそう

授乳と授乳の間で、張りが強いときは適度に冷やすという方法も効果的です。

ただし、おっぱい専用の保冷剤や冷やしたガーゼ、タオルでくるんだ保冷剤、冷却シートなどで気持ちいいと感じるくらいにゆっくり冷やすことがポイントです。乳房の冷却は、強い張りによる痛みの緩和にも効果的なので、このようなときにもぜひ試してみてください。

(4)縦抱きやレイバック姿勢で授乳してみよう

授乳姿勢を工夫してみましょう。縦抱き・脇抱きやレイバック(ママのお腹に赤ちゃんを乗せて授乳する姿勢)をためしてみてもいいでしょう。このような授乳姿勢は赤ちゃんが乳首に吸い付きやすく、自分のペースで飲みやすいというメリットがあります。特に、射乳の勢いが強くて赤ちゃんが飲みにくそうにしているときは、こちらの抱き方で授乳してみるといいでしょう。
関連記事 ▶︎写真で学ぶ授乳姿勢

(5)母乳パッドの使用で不快感をなくそう

母乳の漏れが大量であったり、頻繁である場合は、母乳パッドを使用すると下着や服を汚しにくくなります。通気性の良いものなど素材や形もさまざまなので、そちらもチェックして自分に合ったものを選んでください。
関連記事 ▶︎母乳パッドの正しい選び方と人気パッド11選

(6)何を試してもダメなときは専門家に相談を

何をしても改善されない、不快感がなくならないという場合は、体質や医学的な理由で母乳分泌過多になっている可能性もあります。一度かかりつけの産婦人科や母乳外来を受診し、相談しましょう。

授乳の方法が原因の場合は母乳量をコントロールする専門的な方法もあるので、医師や助産師のアドバイスを受けてください。専門家の指示のもと行うことで、改善が見られる場合もあります。

まとめ

産後1ヶ月前後は身体が赤ちゃんに合う母乳量を調整する期間なので、おっぱいが張ったり母乳が漏れることもあるでしょう。適度な圧抜きや搾乳などで様子を見てみましょう。いつまで経っても授乳と産生量のバランスが合わない、常におっぱいが張っている、授乳と授乳の間も母乳が漏れるなどの状態が見られるときは、何かしらの理由で母乳分泌過多になっている可能性があります。おっぱいの張りをやわらげる方法を試しつつ、どうしても改善されないときは一度かかりつけの産婦人科や母乳外来などを受診して原因を探り、それに合った対策をアドバイスしてもらいましょう。

(文・構成:マイナビ子育て編集部、監修・解説:坂田陽子先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]「母乳育児支援スタンダード」(医学書院)p.260
[*2]水野克己ほか「母乳育児支援講座」(南山堂)p.211

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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