
【医師監修】妊婦は生卵を避けて!妊娠中の卵と赤ちゃんのアレルギーリスクの関係は?
妊娠中の食事にはいくつかの注意点があり、生食のリスクについては広く知られているかもしれません。しかし食品によっては判断に迷うものもあり、 “卵”はその1つではないでしょうか。生卵など、生で食べるリスクなどについてまとめます。また、妊娠中に卵を食べることで生まれてくる赤ちゃんのアレルギー発症リスクが上がるのかも解説します
妊娠中、なぜ生卵に注意が必要なの?


妊婦さんは食中毒になりやすく、かかった場合も重症化しやすくなっているため[*1]、妊娠中の食生活では食材や調理方法に注意を払わなくてはなりません。
卵は「サルモネラ菌」の感染源となる食材の1つなので、生では食べないように気をつける必要があります。
生卵はサルモネラ菌による食中毒のリスク
腹痛、下痢、発熱、おう吐などの症状が出て、重症化すると意識障害やけいれん等の中枢神経症状、脱水症状が現れます。
妊婦さんへの感染が赤ちゃんに直接影響することはないと考えられていますが、母体の体調が著しく悪化すると妊娠の経過などに悪い影響を及ぼす可能性があるので予防が大切です。
妊婦の卵除去、赤ちゃんの卵アレルギー発症予防効果なし
なかには「妊娠中に生卵がダメなのは、赤ちゃんがアレルギーになるから?」と理由を勘違いしている人もいるようです。しかし、妊婦さんが生卵に注意が必要なのはママ自身の食中毒の懸念からであって、赤ちゃんに食物アレルギーが起きないよう予防のために、妊娠中や授乳中のママが卵など特定の食べ物を食べないようにするのは、効果がないとされています。
そして、特定の食べ物を避けてママの食生活が偏ると栄養状態に影響する可能性があるので、医学的にはバランスよく食べることが推奨されています[*4]。
妊娠中の卵の上手な食べ方


個数|1日1〜2個を他の食材と組み合わせて食べる
食品たんぱく質の栄養価を科学的に示す方法として「アミノ酸スコア」があり、人にとってすべての必須アミノ酸が必要とされる量を満たしている場合に、アミノ酸スコアは100とされます。
卵はアミノ酸スコアが100。主治医からとくに指示がない場合は1日1、2個程度を目安に、主菜・副菜の材料に加えましょう[*3]。

野菜と組み合わせて調理すると栄養バランスが整いますよ。
(松峯先生)
調理|中までしっかりと火を通す
サルモネラ菌は卵の殻の表面などだけでなく内部でも繁殖する菌ですが、しっかり加熱調理すれば死滅します。目安は「中心部が75℃になった状態で1分以上加熱」[*2]。
温泉卵やオムレツなど半熟状態の卵料理は、サルモネラ菌による食中毒になる可能性があります。卵は栄養バランスがよいので適宜食事にとりいれたい食材ですから、十分に加熱をして食べてください。

卵のすべてが汚染されているわけではなく、日本は衛生的で食品保存にも十分な配慮がある場合が多いです。
『気をつけていたのに、食べてしまった。ランチ(外食)のカルボナーラに卵黄がのっていた』などと相談されることもありますが、生卵を一度うっかり食べてしまったことで食中毒に必ずしもつながるわけではありません。
ただし、妊娠中は利用できる薬に制限があることからも、『予防第一』と考え、以後は十分に加熱調理されるものを選んで、と伝えています。
(松峯先生)
保管|新鮮なものを早めに使う


卵を購入して保管するときは、次のポイントに気をつけましょう。
・卵は殻にひび割れなどがない賞味期限内のものを買う
・卵は冷蔵庫(10℃以下)で保存し、賞味期限内に使い切る
・調理の直前に、使う分だけ割って調理する
また、調理の前後には調理器具を十分に洗うことも心がけましょう。

上のお子さんの相手をかねて一緒にお料理やお菓子づくりなどをすることもあるかと思いますが、お子さんの手洗いにも十分に気を配ってください。
(松峯先生)
妊娠中に気をつける、その他の「生の食べ物」


生卵以外に気をつけたい食中毒の感染リスクがある食べ物は次の通りです。
・生ハムやサラミなどの食肉加工品
・未殺菌の牛乳やナチュラルチーズなどの乳製品(加熱処理されていないもの)
・スモークサーモンなどの魚介類加工品
・生野菜(よく洗えば大丈夫)
冷蔵庫に長期間保存され、加熱せずにそのまま食べられる食品が原因になる可能性があるとされています。塩蔵品と呼ばれる塩辛い食品などでもリステリア菌が増殖することがあります。また、トキソプラズマという寄生虫が感染している肉(豚、羊、山羊など)を生または十分に加熱しないで食べることが原因になる可能性があります(加熱処理されていない生乳も)。
リステリア菌やトキソプラズマに感染すると、胎児にも影響を及ぼすことがあるので、十分に注意しましょう。

妊婦さんから食べ物についての相談で『卵』『寿司』『生ハム』『コーヒー』について尋ねられることが多くあり、気をつけようと考えている人は多いと感じます。
とくに生食についてはさまざまな食中毒について正しい知識をもち、適切に対処しながら安全な食生活を楽しんでください。基本は『しっかり洗い、加熱して食べる』です。
(松峯先生)
まとめ
妊娠中は食中毒予防の視点から、半熟卵なども含め卵の生食は避けることが必要です。栄養豊富な卵はしっかり加熱(中心部が75℃になった状態で1分以上)して食べてください。また卵に限らず基本的に妊娠中は生食を控え、食品の保存・洗浄・加熱に普段以上の配慮をして、食中毒を防ぎましょう。
(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
[*1] 国際食品安全当局ネットワーク
[*2] 食品安全委員会「加熱調理と食中毒」
[*3] 日本食品分析センター
一般社団法人日本養鶏協会
[*4] 日本小児アレルギー学会 食物アレルギー診療ガイドライン2016年ダイジェスト版
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます