東京都が「こどもスマイルムーブメント」アンバサダー就任式を開催、村山輝星さん、伊集院光さん、尾木直樹さんら8名が就任

東京都では、「チルドレンファースト」の社会の実現に向けて、子どもを大切にする気運を一層高めるため、企業・NPO・学校・区市町村など幅広い主体と連携しながら、官民が一体となって「こどもスマイルムーブメント」を推進しています。このムーブメントをさらに広げることを目的とし、村山輝星さんらをアンバサダーに任命しました。

就任式の開催にあたり、東京都の小池百合子知事は「（今回任命される）みなさんには、アンバサダー就任にご快諾いただいたことに感謝申し上げたいと思います。それぞれの分野で活躍中のみなさんです。社会の宝・子どもに対して、いろんな思いをお持ちだと思います。アンバサダーとして子どもの目線を持ちながら、この東京での子育て、そしてどうやって学び、これを行っていくのかを発信していただきたいと思っております」と期待を寄せました。

その後、小池都知事から各アンバサダーに任命状が手渡され、アンバサダー就任への意気込みを語りました。

「こどもアンバサダーに就任して、『私が笑顔になるときってどんなときだろう？』と考えました。私は、自分の存在をまわりに認めてもらえたとき、うれしくて笑顔になります。たとえば、『あなたのおかげで私もがんばれた』とか『あなたがいたから成功した』と言われると、私も誰か力になれたんだと思ってうれしくなります。これは私だけじゃなく、ほかの子どもたちも同じだと思うので、子ども一人ひとりの存在や成長を認めてあげられるようなムーブメントを、企業団体の皆さまと一緒に作り上げられたらなと思います」（村山さん）

「最初にこのお話をいただいて、ましてほかのアンバサダーの顔ぶれを見たときに、『僕でいいのか』という意識がとても強かったんですね。それは、僕自体に子どもがいないので子育てをしていないし、自分が通ってきた道も、登校拒否から学校を辞めて、フラフラして、なんだかんだで何とかここにいるという感じなので。でも、このメンツを見ていて、何となく意図がわかったんです。そういう子はいっぱいいるんです。（ほかのアンバサダーの）みんなが子どもの笑顔が絶えない、子どものたちの笑顔を絶やさない、という立場にいるとするならば、僕は何らかの理由で一度笑顔が絶えちゃった子にも、もう一回笑ってもらえるような立場でいられれば、と思ってます。もしかしたら（ほかのアンバサダーの）みんなでは手が届かないところが僕だけ見えることもあると思いますので、恥ずかしながら引き受けさせていただきました」

「実は今週、もうすでに学校が始まっているところがあったり、9月1日に始まるところがあったりするけど、それをうんと楽しみにしている子がいたり、『友だちみんなに早く会いたいなー』なんてウチのお孫ちゃんなんかが言っていたりするのを聞いてホッとしたんです。でも、そうじゃなくて『つらいな』とか、伊集院さんがおっしゃったように『行きたくないな』っていう子ってたくさんいるの。そういう子どもの声にも耳をそばだてて、子どもファーストでしっかりと子どものことを笑顔にできるように精一杯がんばろうと思います」

「今回こういう大きな役目をいただいて、またすばらしいアンバサダーのみなさんと活動できるのを楽しみにしています。『大人』『子ども』という単なる対比ではなく、大人だって夢は大事だし、子どもだって社会に向けて自分が何ができるかを考える必要がある。そういう意味では、大人も子どももお互いに敬意を持って接していけるように。そのうえで、子どもたちの笑顔が絶えない、そういう社会になればいいなと思っています」

「私は小さいころからピアニストを目指していましたが、とあるときに挫折をして、ピアニストの夢を諦め、一度会社員を経験しました。そこでも休職して、なかなか笑顔になれなかった期間がありましたが、仲のよかった会社の先輩に『都庁にストリートピアノがある』と聞いて、引きこもりから半年ぶりに家を出てピアノに触れました。その様子を先輩が動画で撮っていてくれていたのを見て、自分の姿がとても笑顔になっていて驚きました。東京都がストリートピアノを置いてくれたおかげで、私は笑顔を取り戻すことができたので、今度は私が東京都との取り組みで、子どもたちの笑顔を守ってくだけでなく、笑顔を作っていけるような取り組みができればと思っています」

今回の就任式には参加できなかったものの、同じくアンバサダーに就任した2023WBC日本代表監督の栗山英樹さん、パラアスリートの谷真海さん、ソニーグループのシニアアドバイザーで、一般社団法人プロジェクト希望の代表理事をつとめる平井一夫さんの3名も、VTRでコメントを寄せました。

栗山さんは「子ども1人ひとりを家族が成長させていく環境を作っていくのはもちろん、地域が子どもを作るという感覚が（昔は）あったと思います。これが日本の伝統であり、歴史であり、日本人の素晴らしさだと思います。地域全体で子どもたちを育てていく、そういった繋がりがこれから必要です。子どもたちは、ものすごく大きな魅力を持っている。それをみんなで引き出していければと思います。全力を尽くします」と語りました。

谷さんは「私はこれまで、夢の力で自分自身のさまざまな試練を乗り越えることができました。夢というのは、本当に大きな力があります。これから未来を担っていく子どもたちが大きな夢を持つだけでなく、社会全体がその夢をサポートできるような社会になってほしいと願っています。笑顔あふれる社会、そして子どもたちが夢を持って叶えたくなるような社会を、一緒に作っていけたらと思います」と語りました。

平井さんは「あらゆる子どもたちが、自分の将来に対して夢や希望を持てる。それが当たり前の世界になるように、全力でサポートします。次世代の子どもたちのために、子どもが中心となる社会を一緒に作っていきたいと思いますので、ぜひみなさんよろしくお願いいたします」と、熱意溢れる意気込みを語りました。

次に、こども記者からアンバサダーへの質問が寄せられました。こども記者とは、「こどもスマイルムーブメント」の取り組みの一環で、子どもたちが興味・関心のあるテーマについて取材、撮影し、その様子を広く発信することで、多様な主体による子ども向け取り組み促進のきっかけとしていくことを目指す活動です。今回は、2名のこども記者が出席しました。

初めに、中学1年生の小林さんからは、「子どもが笑顔でいられるための一番のポイントは何だと思いますか？」という質問が投げかけられました。

村山さんは「（自分自身を）認めてもらうことが一番の笑顔のポイントだと思うんですけど、『がんばったね』と結果を認めてもらうよりも、『がんばっているね』と今まで努力してきた時間を認めてもらったほうがより笑顔になれると思います」と回答。

野口さんは「夢を持つときに、大人から押し付けられる夢を追うのはつまらないと思うので、本当に自分がやりたいことを自由に追っていけるような、そういう社会になるといいのかな、と思っています。ここに来ているアンバサダーのみなさんも、それぞれの夢をかなえてここにいると思います。大人にとって見栄えがいいような夢ではなく、自分の中から浮かんでくる夢を、ぜひ追いかけてほしいなと思います」と回答しました。

尾木さんは「僕は、よく話を聞いてくれる大人に囲まれている、あるいはお友だちに恵まれていること。話を聞いてくれるとなんかホッとして、それで『もっとがんばろうかな』っていう気持ちにもなれるし、褒めてもらえるとニコッとするかなと思います」と、こども記者の質問に真摯に回答していました。

続いて、小学5年生の肥田木さんからは「私は、大人のことを『カッコイイ』『優しい』と思って憧れることもあれば、怒られるときは『怖い』と思い、ときには『おもしろい』と思うことがあります。大人は子どものことをどう思っているのか知りたいです。自分にとって子どもはどのような存在ですか？」という質問が寄せられました。

この質問に対し、ハラミちゃんは「自分にとってお子さまは、気付かせてくれる、学ばせてくれる存在です」と回答。その理由として、「大人になると『こういうのが得するかな』とか『損するかな』とか、周りの人や世間の人に『どう思われるんだろう』という目線が気になることが多くなっていくけど、お子さまは心の底から『楽しい』ことに一生懸命に向き合っている姿が素晴らしいなと思っています。そういうことを自分も忘れちゃいけないなと思います」と回答しました。

野口さんは、「小学5年生から見ると、大人ってすごく大きいように見えるけれど、ほとんどの大人は小学5年生より賢くないので（笑）、そんなに変わらないんです」と会場を笑わせたあと、「僕たち大人もかつては小学5年生だったわけだし、小学5年生もやがては大人になります。そういう意味では、子どもでも持続可能な社会のために本当に考えなきゃいけないときもあるし、逆に主婦であってもおじさんであっても夢をしっかり持たなきゃいけないときもある。お互いに刺激し合いながら、社会全体を明るい方向に、夢を持てるように、みんなが笑顔を保てるようにしていければいいかなと思います」と回答しました。

伊集院さんは、「『大人に憧れるときがある』って言ってくれて、なんかホッとするやらうれしいやらです」と胸をなでおろしつつも、以下のように続けました。

「実は、大人は子どもに憧れているんです。だけど大きな違いは、子どもたちはこのあと大人になれますが、僕らはどんなに努力しても子どもには戻れません。だから、子どもたちがより楽しく暮らせるように、よりがんばれるように（大人は）すごく力を入れるんです。ところがこれが難しくて、『がんばれ、がんばれ』と言うことで子どもをがんばりづらくしちゃったり、プレッシャーをかけちゃうこともある。大人も“大人1回目”で、大人が（人生で）初めてだから、うまくいかないこともいっぱいある。でも、大人はみんな子どもたちに『がんばれ』と思っているし、『子どもに憧れている』ということはちょっと心のどこかで覚えておいてほしいです。『ちょっとオジサンたちの“がんばれ”が強すぎてキツイんですけど』ってときは、言ってもらえると（笑）。それはもう、憧れすぎてそうなっちゃってることなので。ちょっとだけ覚えておいてください」（伊集院さん）

このやり取りを聞いていた尾木さんは、「こども記者さんからの質問に、ハラミちゃん、野口さん、伊集院さんが全力で答えてくださっている。そして中身がとても哲学的というか、自分の人生を重ね合わせた真剣勝負の答えで、感動しました」と、こども記者ならではの視点がある質問と、アンバサダーのみなさんならではの回答に感激した様子でした。

式の最後に、アンバサダーの活動についての紹介がありました。尾木さんとハラミちゃんは、すでに東京都のWebサイト『こども・子育てお悩み相談室』に出演中。村山さん、尾木さん、野口さんは9月18日に開催するイベント「こどもスマイル大冒険スペシャル」に出演が決定しているとのこと。同イベントはオンラインでの配信も予定しており、全国各地から視聴可能だそうです。さらに村山さんはPR動画、ポスターへの出演、そして伊集院さんはラジオCMの出演を予定しているとのことで、今後さまざまなメディアでアンバサダーの活躍を見かけることが増えそうです。

閉会のあいさつで小池都知事は、「（今日の就任式を見ていて）やっぱり『こどもスマイルムーブメント』は、子どもがスマイルになると大人もスマイルになるんだな、ということを改めて思いました。フランスの作家で『星の王子さま』という作品を書いたサン=テグジュペリという人がいます。そのなかの一文に『大人もみんな子どもだったんだよ』というひと言があります。そういう子どものときを思い出しながら、子ども目線で、子どもたちがどうやってスマイルしていくのか、アンバサダーの皆さんにもこれから発信していただいて、スマイルがあふれる東京都にしていきたいと考えております」と、決意を新たにしました。

これからの世の中を作っていく子どもたち。そんな子どもたちの笑顔に繋がるような東京都のアクションに、今後も期待したいですね。

東京都 こどもスマイルムーブメント
https://kodomo-smile.metro.tokyo.lg.jp/

（取材・文：マイナビ子育て編集部、撮影：梅沢 香織）