【医師監修】2歳児の言葉の発達はどのぐらい?言葉の発達に必要な4つのこと
2歳になると、まだまだたどたどしいものの、おしゃべりをする子が増えてきます。話すのが得意なよその子を見て、お子さんのおしゃべりが遅れているのではないかと気になることもあることでしょう。そもそも、おしゃべりってどの程度のことなのでしょうか。2歳の子供たちの言葉の発達の目安について知っておきましょう。
2歳児の言葉の発達はどのくらい?
2歳前にほとんどの子が単語を話す
同じ日に生まれた子供でも、話し始めるのが早い子もいれば、なかなか話し始めない子もいます。言葉の発達は子供たち1人1人で異なりますが、言葉の発達が遅れていないかどうかをチェックできる年齢ごとの大まかな目安はあります。
乳児期から6歳までの発達判定法である「デンバー発達判定法」によれば、「意味のある言葉を一語話す」(例:ママ、ブーブ(車)、ワンワン(犬)など)のは生後9ヶ月で25%、1歳半頃で90%の子供に見られます。さらに「二語文を話す」(例:ママきて、ワンワンかわいい、など)のは1歳7ヶ月で25%、2歳4ヶ月で90%の子供に見られます[*1]。
また、厚生労働省による乳幼児身体発育調査では、1歳6~7ヶ月未満の子供たちの94.7%が単語を話しています[*2]。
具体的には、「2歳までに単語も出ない」「3歳までに二語文を話さない」の2点が、明らかに言葉が遅れている目安と言えます。
言葉の発達が遅れるのはなぜ?
子供がなかなか話し出さないと心配ですね。でも、今までほとんど話さなかった子供から急に言葉が出て、よく話すようになることもよくあることです。まずは気長に子供の様子を見守っていきましょう。また、次にあげる「言葉の発達に必要なこと」も参考にチェックしてみてください。
言葉の発達に必要な4つのこと
1.耳が聴こえていること
2.知能が正常であること
3.まわりの人や物、状況に強い関心があり、好奇心が旺盛で自分から関わっていけること
4.順調な運動発達
言葉の遅れが目立ってきたら、まずは耳がきちんと聴こえているかどうかを確認しましょう。後ろから子供の名前を呼んだらふりむくかどうか、大きな音を聞いてそちらを見るかなどをチェックしてみるといいですね。
言葉の遅れにつながる障害もある
言葉の遅れの原因は前にあげた「耳の聴こえ」以外にも、さまざまなものがあります。主な原因をあげてみましょう。
■聴力障害
すでにあげてきた「耳の聞こえ」の障害です。
よく聞こえていないと、「話す」ということが理解しにくいため、言葉が出にくくなります。
高度の難聴であれば、「呼んでも反応しない」「大きな音への反応が少ない」など、普段の様子から比較的早い時期に気づきやすいものです。
中等度以下の難聴だったり、まわりの様子を感じて反応できるような場合は、一番身近にいる親でもなかなか気づけないことがあります。
■発達性言語障害
言葉の遅れがあるだけで、発達上の問題・原因が見つからず、まわりにも関心をもっていてコミュニケーションを取ろうする意志がしっかりと見られる場合、「発達性言語障害」が考えられます。この発達性言語障害は、以下の2つに分けられます。
・運動型(表出性言語障害):言葉の理解には遅れが見られない半面、言葉を話す事が遅れている
・感覚型(受容性言語障害):言葉の理解が発達していないことから、言葉を話すことも発達していない
■精神遅滞
言葉の遅れ以外に、トータルから見ても知的な発達が遅い状態を指します。
言葉の遅れのほかにも、言葉を理解しづらい、身のまわりの習慣を身につけられない、などの特徴があります。
■自閉性障害
他人とコミュニケーションを取ったり、対人関係を築くなど、社会性の発達に明らかな遅れが見られます。
言葉の遅れだけでなく、目が合わない、こだわりが強い、同じ行動や行為にこだわる・繰り返す、といった特徴があげられます。
診断のための検査方法
こうした障害かどうか確認するためには、医療機関などで行われるいくつかの専門的な検査が必要です。
基本的には
・聴力検査
・発達検査(または知能検査)
の2つを行います。
検査結果とともに、言葉の遅れが見られる子供の行動を観察し、その特徴をつかむことで、診断が可能になります。
障害があるとわかった場合は、さらに脳波やMRI、ABR(聴覚脳幹反応検査:脳波で聴力をみるもの)などの検査も追加で行い、障害を引き起こしている病気がないかどうかも確認します。
なお、専門家ではないお母さんお父さんがお子さんを見て、障害かどうかを判定することはできません。言葉の遅れで不安や気になることがある場合は、小児神経専門医や地元の保健センターに相談して専門家に診てもらいましょう。
遊びで言葉を促す3つのポイント
障害の可能性がないことがわかっても、言葉の発達をどんどん伸ばしていきたいと思うお母さんお父さんもいることでしょう。
その場合は子供を怒ったりストレスを与えないように気をつけながら、楽しく言葉を促す遊びや接し方をしていきましょう。
1. 体を動かす遊びで脳に刺激を与えよう
座ってカードなどを使いながら言葉を促す方法もありますが、子供が1~2歳のうちはじっと座っていられませんし、3~4歳になっても集中が続かない子供もいます。
そこでおすすめなのが、体を使った楽しい遊びです。体を動かすと、聞こえた言葉を感じ取って伝える脳幹と大脳辺縁系のつながりを高める効果が期待できます。
中でも「固有受容覚」と「平衡感覚」を育てることは大切です。
「固有受容覚」とは、体の各パーツの位置や動き、関節の曲がり具合、筋肉への力の入れ方などを感じ取って自分の脳に伝える機能のこと。また、「平衡感覚」とは、体の位置や絡む気、動きの早さ、回転を感じる感覚です。
体を動かす遊びをしていると「固有受容覚」と「平衡感覚」が調整されやすくなり、言葉の発達も促されるのです。
2. 追いかけっこやいないいないばぁで感覚を育てよう
「固有受容覚」と「平衡感覚」を養う遊びは、次のようなものがあげられます。
・追いかけっこ
・お馬さんごっこ
・いないいないばあ、手遊び歌
・ぎゅっと抱きしめる、抱っこして揺らす
など
昔から伝わるシンプルな遊びですが、だからこそ毎日気軽にできますね。
課題ではないので、親子で楽しく笑い合いながら繰り返してみましょう。1日5回程度、笑い合いながら遊ぶようにすると、子供にもストレスをかけませんし、お互いの笑顔を見るうちに楽しさも増していきます。
なお、子供が嫌がったりノリが悪い時には、無理やり続けないで終わりにしましょう。
話しかけ方に工夫しよう
言葉を引き出すためには、2人で同じものに注目して反応しながら、言葉でコミュニケーションを取ることが大切です。
子供が何かを見つけたら「〇〇がいたね!」など、見つけたものについて声をかけるといいでしょう。何を言ったらいいかわからない時には、子供が見ているものの特徴をあげるのがおすすめです。たとえば犬を見つめていたら「わんわんだね」「毛がフサフサだね」「茶色いね」というように話すことで、目と耳の両方から刺激を与えることができます。絵本の絵を指差しながらいろいろ話すのもいいでしょう。
子供がこちらを見たら、見つめ返しながら「なあに?」「どうしたの?」などと声をかけて子供の反応に応えると、コミュニケーションの発達が促されて、やがては言葉の発達へとつながります。
気になったらここに相談しよう
言葉の発達の目安や、言葉を育てる遊び・関わり方について紹介しましたが、言葉が明らかに遅れていると感じたり、遅れているのではないかと心配になったら、専門機関に相談しましょう。特に、最初にお話した「2歳までに単語も出ない」「3歳までに二語文を話さない」のどちらかが当てはまる場合は、受診しておくと安心です。
かかりつけの小児科や地元の保健センター、小児神経専門医で診察を受けることで、今まで気づかなかった原因がわかったり、言葉の発達を促すいい方法が見つかることもあります。
まとめ
発語の時期や言葉の発達のスピードは、子供によってまちまちです。ほかの子供と比較してやきもきするよりも、子供とたくさん関わりながら子供の様子を見守っていきましょう。
親子で楽しく体を使って遊んだり、大人が子供の様子に応えてたくさん話しかけるうちに、急に言葉が出るようになることもあります。
それでも、2歳になっても単語もしゃべられなかったり、3歳までに二語文を話せない時には、一度医療機関などに相談しておくと安心です。
家族だけで抱え込まずに、時には専門家の手を借りながら、みんなの力で子供が笑顔で過ごせる未来につなげていましょう。
(文:大崎典子/監修:梁尚弘先生)
※画像はイメージです
[*1]名古屋市小児科医会「保育園や幼稚園に通う子どもたちの健康のために」
[*2]平成22年 厚生労働省 乳幼児身体発育調査
[*3]柴田貞雄ほか「きこえとことばの療育」(財団法人愛の小鳩事業団)
日本小児神経学会「言うことは理解できるのですが単語が数語しか出ないのは病気でしょうか?」
中川信子「発達障害を持つ子供の言葉を育む」(第117回日本小児精神神経学会教育講演)小児の精神と神経 57巻3号.2017
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます