【森田先生監修】2歳児の睡眠時間はどのぐらい? 今日からできる5つのコツ
動きはますます活発に、おしゃべりも上手になってくる2歳の子ども。自己主張も増えて、早く寝かせたいのになかなかうまくいかない……そんなことが続くと心配になってきますよね。ここでは、子供の睡眠にくわしい医師・森田麻里子先生のアドバイスとともに、2歳の理想的な睡眠時間や子供がしっかり眠るためにできることを紹介します。
2歳代はイヤイヤも激しい時期。夜も、まだ遊びたくてなかなか寝なかったりすると、ママ・パパはヘトヘトになってしまいますね。この時期の成長に合った生活リズムやルーティーンを整えて、おだやかな眠りをサポートしましょう。
2歳児の理想的な睡眠時間
子供の理想的な睡眠時間は年齢によって異なります。まずは、2歳児に必要な睡眠時間はどのくらいかみてみましょう。
睡眠時間|2歳児は11~14時間くらい
National Sleep Foundation(米国立睡眠財団)が2015年に発表した「各年齢層における推奨睡眠時間・許容睡眠時間」によると、1~2歳の推奨睡眠時間は「11~14時間」となっています。また、許容できるのは9、10~15、16時間で、9時間未満または16時間以上の睡眠は推奨できないとしています[*1]。
なお、日本国内では、2011年に公表された日本小児保健協会の報告によると、1~6歳の5,097人で最も多い就寝時刻は9時、起床時間は7時でした[*2]。
この時間に寝起きしている場合、夜間の睡眠は10時間となります。これに加えて昼寝を1~2時間とれば、1日の睡眠時間は11~12時間となって、1~2歳児の推奨睡眠時間の範囲に入ります。
睡眠時間には個人差があるけれど……
ただ、睡眠には個人差があるもの。大人では6時間眠ればスッキリという人もいれば、8時間は寝たい!という人もいますよね。
子供の場合は、成長に伴って睡眠のとり方が徐々に変化していきますが、変化の仕方にも個人差があります。新生児のころは1日の大半をこま切れに眠って過ごします。やがて少しずつまとまって眠るようになり、夜に寝る時間が増えて日中は長く起きているようになりますが、そうなるまでの睡眠時間や間隔は人それぞれ異なるのです。
1492人の子供で、2歳半、3歳半、4歳、5歳、6歳時点での夜の睡眠時間を継続的に調査したカナダの研究では、夜の睡眠時間が「ずっと8~9時間の子」「途中から長くなる子」「ずっと10時間程度の子」「ずっと11時間程度の子」の4パターンにわかれたと報告しています。このうち、8~9時間程度の短い睡眠時間がずっと続く子は6%でした[*3]。
このように少数ですが、小さいころから比較的短い睡眠時間で生活している子もいます。ただし、同じ研究で5、6歳時に認知機能をはかるテストをしたところ、睡眠時間が8~9時間の子は10時間、11時間程度の子に比べて明らかに点数が低い傾向がみられたとも報告しています[*3]。
子供の睡眠時間は家庭の生活リズムから大きな影響を受けます。ですから、いつも短い睡眠時間で生活している子であっても、その睡眠時間が本当にその子にとって十分かはわかりません。中には本当は寝足りないのに、眠れていないだけの子もいるでしょう。睡眠のリズムがまだ発達途中で安定していない幼児のうちは、推奨されている睡眠時間にできるだけ近づける努力をしたほうが良いでしょう。
とくに、「寝覚めが悪く朝グズグズする」「日中にかんしゃくやイヤイヤがひどい」「ボーっと眠そうにしている」「落ち着きがない」などの様子が見られたら、もっと睡眠時間を増やしてみましょう。
昼寝|2歳ではまだ昼寝が必要な子が多い
昼寝も個人差が大きいところです。さきほども紹介した日本小児保健協会の調査では、昼寝をする子の割合は1歳半で99%、2歳で95%になり、3歳で71%、4歳で54%となっていました[*2]。
米国立睡眠財団による2004年の調査でも、2歳ちょうどでは80%以上、3歳では約60%が昼寝をしており、その後、6歳までにはほとんどの子供が昼寝をしなくなっていました[*4]。
上記の結果からもわかるとおり、2歳児ではまだ大半の子が昼寝をしています。このころにすでに昼寝をしなくなる子も少数いますが、2歳児以上の場合は、夜10時間以上しっかり眠れていれば、昼寝が短くてもそれほど心配はありません。逆に昼寝の時間が長くて夜なかなか眠れないようであれば、昼寝中の眠りが浅そうなときに起こして、少しずつ昼寝の時間を短くしていくと良いでしょう。
なお、2歳児の昼寝の時間は1時間寝る子が25%、2時間が63%、3時間が11%となっていました[*2]。
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子供の昼寝について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎お昼寝は何歳まで必要? ママ医師が教える赤ちゃん・2~3歳の昼寝時間
子供の睡眠時間が短いとどうなる?
睡眠不足が続くと、子供には具体的にどのような影響があるのでしょうか。
続く場合は体や心に影響することも
子供の睡眠不足が続くと、肥満やうつ病になりやすくなることがわかっています。睡眠不足の兆候があったら、早寝早起きなど生活リズムを見直すことが必要です。
生活リズムや寝室の環境を整えても、まとまって眠れない、日中にボーっとしている状態が続くのであれば、一度専門家に相談してみてください。
とくに、いびきや寝汗、睡眠時の無呼吸、鼻づまり、口呼吸のある子では、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」が疑われる場合もあります。子供でも大人同様、睡眠時に鼻呼吸ができず、気道が狭く呼吸しづらくなることで起こるもので、約2%の子にみられるともいわれています[*5]。思い当たる症状がある場合は、まずかかりつけの小児科で相談してみましょう。
生活リズムを整えるためにできる5つのこと
「子供は寝たいときに寝るので、寝不足にはならない」というのは、よくある誤解です。2歳児にしっかり眠ってほしいときは、睡眠時間に一喜一憂するのではなく、まず規則正しい生活リズムを作ることが大切。そうすることで睡眠時間も整っていきます。
1. 寝起きする時間を決める
2歳児の場合、朝はできれば6〜7時、遅くても8時までには起きましょう 。夜の就寝時刻は7~8時が理想的。遅くても午後9時には寝かせるのがおすすめです。
寝る時間が遅くても、その分朝遅くまで寝ていれば睡眠時間は足りると思うかもしれません。ですが1歳半の保育園や幼稚園に行っていない子供を対象に行った国内の調査では、「寝る時間が遅い子供ほど1日の合計の睡眠時間が短い傾向がある」という結果に[*6]。
つまり、寝る時間が遅いとやはり寝不足になってしまうようなのです。また、寝た時間にあわせて起きる時間をずらす生活をしていると、生活リズムも崩れがちになります。
寝るのが遅くなっても朝はいつもの時間に起こし、朝日を浴びることが大切です。そして、日中活動してから早寝するように促しましょう。
2. 朝食をしっかり食べる
小さな子供は1回の食事量が少ないので、朝食を抜くと成長に必要な栄養素が不足してしまいます。また、朝食を食べると、睡眠中に下がっていた体温が上がって体や脳が活性化する、消化器の動きを活発にして排便を促すといったメリットも。家族で一緒に朝食をとる習慣を作りましょう。
中には、仕事で遅くなる家族の帰りを待って子供の寝る時間が遅くなっている家庭もあるかもしれません。子供と関わる時間は大切ですが、そういった場合、朝食を一緒に食べることにすれば、コミュニケーションもとれて一石二鳥です。
3. 日光を十分に浴びる&日中はよく体を動かす
夜スムーズに就寝できるように、日中は体をよく動かしてたくさん遊びましょう。
さきほど朝日を浴びることが大切と説明しましたが、そもそも人間の睡眠と覚醒のサイクルは24時間より少し長めになっていて、朝日を浴びることで体内時計をリセットする効果があるといわれているのです。午前中にしっかり日光を浴びると、体内時計が整い早寝早起きのリズムをつけやすくなります。
ちなみにWHOは1~2歳の子供は「中程度から活発な運動を含む様々な種類の身体活動を1日180分以上行う」ことを提言しています。また「一度に1時間以上座りっぱなしにならない」ように注意しています[*7]。1時間以上ベビーカーやハイチェアなどに座り続ける、1時間以上座ってテレビやタブレットの画面を見るといったことは避けましょう。
4. 寝室の環境を整える
寝るときに暗くすることはもちろん、寝る少し前から強い光やブルーライトを浴びないようにしましょう。夕方以降にこれらの光を浴びると、「メラトニン」というホルモンの分泌が抑えられてしまいます。
「メラトニン」は、眠気をもたらすなどの働きがある重要なホルモンです。特に1~ 5歳の間は「メラトニンシャワー」といって一生の中で最も多く分泌される時期ともいわれています[*8]。夜更かしや夜に光を浴びることで、メラトニンシャワーを浴びそこねないよう気をつけてあげましょう。
なお、眠るときに真っ暗にすると怖がる子もいます。天井の常夜灯は光源を直接見てしまうとまぶしいので、そんなときはフットライトがおすすめです。
また、寝室の温度や湿度はエアコンも使用して心地よく過ごせる程度に調整を。冬は室温18~20℃、湿度は50~60%を目標に。寝苦しい夏はエアコンの設定温度を25~27℃にして、服装で調節するようにしましょう[*9]。
5. 入眠儀式をする
寝る前に必ず行うことで、子供に就寝時間であることを伝える「入眠儀式」を作ると寝つきやすくなります。絵本の読み聞かせやお話をする、静かな音楽をかける、子守歌を歌うなど、お気に入りの入眠儀式を決めておきましょう。
2歳の入眠儀式のポイントは、「本人と相談して何をするか決める」「ポスターなどを作って寝るまでの行動を視覚的にも確認できるようにしておく」「決めた内容を守り、子供が望んでも引き延ばさない」ことです。子供の安心感が満たされ、親子でリラックスしてふれあえる入眠儀式を探してみてください。
ただし、入眠儀式では、寝る前のテレビやスマホ、タブレット、ゲームは避けてください。強い光を見ることで体内時計が乱れ、目がさえてしまいます。たとえ短時間であっても、寝る前のテレビやスマホはおすすめできません。
以上が生活リズムを整えるためにできることですが、子供の睡眠のポイントをまとめると次の3つになります。
・昼と夜のメリハリをつける
昼は日光を浴びて活発に動き、夜は静かで暗めの環境で過ごします。
・規則正しい生活リズムを作る
寝起きする時間、朝食の時間などを決めて規則正しい1日を。
・寝る前にリラックスする
照明を暗くして、お気に入りの入眠儀式を取り入れましょう。
2歳児は昼間の活動がますます活発になり、睡眠の質やタイミング、長さも徐々に変化するなど、生活リズムが大きく変わっていく時期。イヤイヤも出てきて寝かしつけが大変かもしれません。でも、うまく睡眠のリズムを作ることができれば、親の負担も軽くなるはず。一気にすべて試すのは難しいので、まずはできることからやってみてください。この機会に大人の生活リズムを見直してみるのもいいですね。
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寝かしつけについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎赤ちゃんの寝かしつけ方のコツ
関連記事 ▶︎寝かしつけに効果的な音楽と注意点
関連記事 ▶︎寝かしつけにいい絵本まとめ
まとめ
2歳児に推奨される1日の睡眠時間は11~14時間。昼寝と合わせて、子供にとって睡眠時間が足りているかどうか注意しましょう。夜なかなか寝ない、何度も起きるなど子供の睡眠に問題があると感じたら、まずは生活リズムや寝室の環境を整えることを試し、それでも続いて日中元気に過ごせない場合は専門家に相談を。
(文:佐藤華奈子/監修:森田麻里子先生)
※画像はイメージです
[*1]Hirshkowitz M. et al.: National Sleep Foundation's sleep time duration recommendations: methodology and results summary, Sleep Health . 2015 Mar;1(1):40-43.
[*2]「平成22年度 幼児健康度調査」日本小児保健協会
[*3]Touchette E. et al.: Associations Between Sleep Duration Patterns and Behavioral/Cognitive Functioning at School Entry, Sleep. 2007 Sep 1; 30(9): 1213–1219.
[*4]NATIONAL SLEEP FOUNDATION : 2004 Children and Sleep
[*5]MSDマニュアルプロフェッショナル版:小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群
[*6]神山潤:1歳6ヶ月児の睡眠覚醒リズムとトータル睡眠時間 1999年練馬区調査, 睡眠の生理と臨床, 2003.
[*7]「To grow up healthy, children need to sit less and play more」WHO
[*8]Waldhaser et al.: Alterations in nocturnal serum melatonin levels in humans with growth and aging, J Clin Endocrinol Metab. 1988 Mar;66(3):648-52.
[*9]森田麻里子・星野恭子:医者が教える赤ちゃん快眠メソッド,ダイヤモンド社,2020
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます