【医師監修】妊娠9週に気をつけたい症状は?胎児の成長とママの変化
妊娠9週は、妊娠3ヶ月の2週目にあたり、人によっては、つわりが最もつらくなってくる時期です。この時期をママが乗り越えるために、知っておきたい知識やちょっとしたコツなどなどをご説明します。
妊娠9週ってどんな時期?
つわりのピークを迎えます
個人差はありますが、多くの人が妊娠8~10週ごろに、つわりの症状がもっともつらい時期を迎えます。つわりは、妊婦の50~80%[*1]が経験し、とくに初めて妊娠をする人に多いと言われています。
ただ、この苦しさはずっと続くわけではなく、妊娠12週ごろになると軽快しはじめ、妊娠16週ごろになれば多くの妊婦さんで自然に治まると言われています。
つわりの原因はまだ解明されていませんが、hCG(絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが影響していると考えられています。妊娠8~10週はhCGが最も分泌される時期で、妊娠20週までにその分泌量は減っていきます。
初めての経験に不安を覚える妊婦さんも多いと思いますが、大部分の人では妊娠の経過とともに楽になってきます。この時期は赤ちゃんにとっても変化の大きいとき。お腹のなかでぐんぐん育つ赤ちゃんを想像しながら、あまり深く考え込まずにこの時期を乗り越えていきましょう。
妊娠9週で体内に起きる変化
まだお腹の見た目はほとんど変わりませんが、ママのお腹の中では大きな変化が起こっています。同時に、ママの体調にも大きな変化が起きやすい時期です。
赤ちゃんの心拍数がピークになるころ
赤ちゃんの心拍(胎児心拍動)は、プローブという超音波を出す機器を腟に入れる(経腟法)かお腹に当てて(経腹法)確認します。経腟超音波検査はおもに妊娠初期、経腹超音波検査はだいたい妊娠初期の終盤~妊娠中期以降によく用いられます。赤ちゃんの心拍は正常妊娠の場合、妊娠5~6週で初めて確認されることが多く、遅くとも8週までには確認されます。
赤ちゃんの心拍数は、妊娠5週に90~100 回/分だったのが、9週までにぐんぐん増加し、9週中ごろになると170~180回/分でピークとなります。その後は徐々に減っていき、16週には150回/分程度となって、安定していきます[*2]。
ママの変化
母体にもいろいろな変化が起こってきます。主要な症状はつわりですが、いろいろなマイナートラブルも起こってきます。ここではすでに紹介したつわり以外で、とくに「頻尿」と「お腹の張り」について説明します。
頻尿
赤ちゃんの成長に伴って、ママの体内の水分量が増え、尿をつくる腎蔵の機能が高まるため、また、子宮により膀胱が圧迫されるために、頻尿になりやすくなります。これは妊娠により自然に起こる体の変化ですので、水を控える必要はありません。
むしろ、妊娠中は膀胱炎や血栓症予防のためにも、水分は十分に摂った方がよいでしょう。妊婦さんに推奨される水分量はとくに決まっていないようですが、成人男性が比較的安静にしていたときの1日に必要な水分の量は、だいたい2.5Lくらいで、そのうちの4割程度は食事から摂取されるので、水分としては1日1.2Lくらいを飲むよう勧められています[*3]。
無理して飲む必要はありませんが、目安として覚えておくと水分不足に気づけます。
ただし、水分は一度に大量に摂りすぎると水中毒という状態になって体に負担をかけます。水分摂取は、喉のかわきを感じる前に、こまめに摂るのが大切です。とくに頻尿で夜間に何度も起きてしまい、睡眠の質が落ちるような場合は、寝る前にはあまり大量の水分を摂らないようにし、トイレに行ってから眠るようにしましょう。
なお、あまりにひどい頻尿が続くときは、妊娠糖尿病の症状である場合もあるので医療機関で相談するようにしましょう。
お腹の張り
妊娠すると、女性ホルモン(プロゲステロン)の分泌によって腸の筋肉がゆるみ、腸の蠕動運動が抑えられることによって、便の排泄に支障が出る場合もあります。便秘がちになったり、ガスがたまってお腹が張ることも。つわりの様子を見ながら、できるだけ食物繊維に富んだ食べ物を、よく噛んで食べることを心がけましょう。
妊娠9週に必要な準備
つわりがつらいこの時期は、つわり対策を考えるとともに、周囲にも状況をできるだけ理解してもらうことが大切です。とくに仕事をしている人は、直属の上司には早めに相談しておくことをおすすめします。
職場では、まず上司に報告・相談を
つわりで体調が悪くなることも多い、この時期。職場の上司へは早めに相談しておけると良いでしょう(ただし、このころはまだ流産も多い時期。周囲の人に公表するのは俗に安定期と言われる5ヶ月以降まで待ったほうが良いでしょう)。
会社側も、妊婦であるあなたに過度な負担をかけるスケジュールや仕事の割り振りなどを避けるための情報が必要ですし、状況が理解できれば環境を整えるために適切な措置を講じなければならないことは法律で規定されています。お互いにできることは行う努力をして、気持ちよく協力してもらえるように伝えられるとベターですね。
職場の理解が得られない場合の対処法
どうしても職場の理解が得られないようであれば、「母性健康管理指導事項連絡カード」を活用することをおすすめします。
このカードは、主治医から「勤務時間の短縮」「休憩」「入院(休業)」「負担の大きい作業、長時間の立ち仕事、同じ姿勢でい続ける作業などの制限」などの指導を妊産婦が受けた場合、その内容を事業主に的確に伝えられるようにするためのものです。ただし、本来はこのようなものがなくても、働く妊産婦からの申し出に何らかの措置をとらなくてはいけないことになっており、このカードの提出がない場合でも、働く妊婦さんが申し出たら職場は必要な措置を講じることになっています。
必要な場合は、ママの体調を一番把握している主治医にこのカードの作成を依頼し、職場に提出してください。
妊娠9週に気を付けたいこと
妊娠すると、今までは何でもなかったようなことでも疲れてしまったり、疲れが長引いたりすることがあります。そのため、この時期は「休息」が大切です。1時間動いたら10~15分休憩をとるなど、定期的に、意識的に休みをとるようにしましょう。
初産の人はとくになかなか調子がつかめなかったり、頻尿などのマイナートラブルで睡眠不足や睡眠の質が悪くなっていたりする場合もあると思います。睡眠は最高の休息ですので、しっかり眠れるように工夫をしてみてください。眠る2~3時間前からスマホやパソコン、テレビを控え、強い光を目に入れないようにしたり、自分に合う枕や寝具を整えたりするなどして、睡眠の時間と質を確保するようにしましょう。
つわりがひどいときに気を付けたいこと
1日に何度も嘔吐を繰り返したり、食事がまったくとれなくなったりして、それまでの体重の5%以上が減少してしまうほどのひどいつわりを「妊娠悪阻」といいます。つわりがひどい場合は医療機関にその旨相談して、入院が必要と診断されたらそれに従ってください。妊娠悪阻の状態で放っておくと、まれに命に危険の及ぶ状態になることもあります。怖がりすぎるのはよくありませんが、たかがつわりと軽視しないことも重要です。
妊娠悪阻が起きる頻度は全妊婦の0.5~2.0%[*4]と言われ、特に初産婦に多いのですが、重症化するのは経産婦(出産経験のある妊婦)であるという傾向があります。
職場でのつわりの対処法
職場では自宅のように自分好みに環境を整えることは難しく、とくにニオイの問題で苦労するママもいると思います。そういう場合はマスクをして、やりすごすのも1つの方法です。風邪などの感染症対策にも役立ちます。
また、妊娠初期は空腹になると、イライラしたり、気分が悪くなる人もいます。そういう妊婦さんは空腹を避けるために、アメやチョコレート、ブドウ糖の多いラムネなどを常備して、気分が悪くなりそうなときに口に含むと楽になる場合があります。
まとめ
赤ちゃんがお腹の中ですくすく育ってきて楽しみな反面、つらい状況に耐えるママも多い時期。でも、ほとんどのママはこの時期を乗り越えて、俗に言う安定期(妊娠16週~)のころには体調が落ち着いてくるでしょう。紹介したような方法などでこの時期をやり過ごしつつ、つらいとき、悩みのあるときは、一人で抱え込まずに、医師や看護師、助産婦、先輩ママ、パートナーなど、いろいろな人にまずは気持ちを話してみましょう。
(文:石井悦子/監修:齊藤英和先生)
※画像はイメージです
[*1]日本産科婦人科学会:産婦人科研修の必修知識2016-2018, p134, 2016.
[*2]日本産科婦人科学会:産婦人科研修の必修知識2016-2018, p56, 2016.
[*3]厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動
[*4]公益社団法人日本産科婦人科学会: 産婦人科診療ガイドライン―産科編2017, p124, CQ201妊娠悪阻の治療は?
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます