【医師監修】妊娠後期の性行為は赤ちゃんに影響ない?セックスで気をつけたい8つのケース
妊娠後期になると、おなかはかなり大きくなってきます。そして出産予定日も近づくため、エッチをしてもいいのか不安になりますよね。今回は妊娠後期にエッチをする際の注意点をまとめました。
妊娠後期に入っても、セックスしても問題ない?
「妊娠中にセックスしてもよいかどうか」について、気になる人は多いはず。しかし、そのことについて誰かに相談するのが恥ずかしかったり、気まずかったりすることもあるのでは。妊娠中のセックスの可否と、その際の注意点を確認しておきましょう、
体調に問題がなければエッチしてもOK
アメリカの産科婦人科学会は妊婦さんのパートナーに向けたメッセージとして、妊娠中の性行為について、このように説明しています。
「産科医や医療従事者から制限されていない限り、妊娠中を通じてセックスをすることは可能。ただし、おなかが大きくなるにつれて、体位を工夫する必要があるでしょう。また、妊婦はセックスを不快に感じる場合があることにも注意してください」[*1]。
つまり妊娠の経過が順調で、妊婦さんの健康にも問題がなく、医師から安静など特別な指示を受けていないなら、妊娠中でもセックスをすることに問題はありません。
ただし、妊婦さんは体にかかる負担が大きく、性欲が起こりづらいことがあります。また妊娠中は子宮口や腟粘膜が傷つきやすく、出血しやすい傾向もあります。また、「赤ちゃんに何かあったら」という不安から、セックスに積極的になれないことも多いものです。
もしも妊娠中のセックスについて不安がある場合は、健診の際などに、医師や助産師に相談し、解決しておきましょう。セックスのことを質問するのは恥ずかしいかもしれませんが、一人で悩んでいるより専門家に相談したほうが安心して過ごせます。気になることは遠慮せずに相談し、疑問をすっきり解決しておきましょう。
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妊娠中のセックスについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
臨月(妊娠10ヶ月)の性行為について
妊婦さんの健康状態や妊娠経過に問題がなければ、妊娠中にセックスをするのはOKですが、出産予定日を控えた臨月(妊娠10ヶ月)は、控えたほうがよいと言われることがあります。
その理由は大きく2つあります。ひとつはオルガズムに達する際に、子宮の収縮が起こることです。陣痛による子宮の収縮とオルガズムのそれとは種類が異なるため、オルガズムによる子宮収縮自体が陣痛を引き起こすとは考えづらいのですが、収縮により妊婦さんに不安が生じる可能性が考えられます。
もうひとつは、「精液による影響」です。精液には、子宮収縮を引き起こす可能性のある物質が含まれているからです。
しかし、基本的には臨月にセックスしても問題ないと言えます。ただし、医師から性行為を止められていたり、破水があった後などはやめましょう。
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臨月のセックスについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
性行為がおなかの赤ちゃんに与える影響は?
セックスによって、おなかの赤ちゃんが影響を受けることを心配する人がいるかもしれません。ですが、お腹の赤ちゃんは卵膜と子宮の強い筋肉によって完全に保護された状態にあります。
また、妊娠中、子宮の下のほうで腟とつながっている部分(子宮頸管)は、感染を防ぐために、厚い粘液の栓で完全にふさがれています。
そのため、セックスの最中にパートナーのペニスと胎児が接触することはありません。
妊娠中のエッチで気をつけること
ここまでで解説した通り、体調に心配な点がないのであれば妊娠後期にセックスをしても基本的に問題はありません。
ただ、表面的には問題がないように見えても、妊婦さんの体は非妊娠時とは違います。何かあった時に慌てないよう、妊娠中にセックスをする際、気を付けておいたほうがよいことをまとめました。
1. セックスを避けた方がいい人もいる
以下の項目に当てはまる妊婦さんはそもそも、後期に限らず妊娠中にセックスしてもよいかどうか、事前に医療機関で相談しておくことをおすすめします[*2, 3]。
(1)過去に流産したことがある、あるいは流産のおそれがある
(2)過去に早産した(37週未満の出産)または早産リスクが高いことを示す徴候がある
(例えば、頻回の子宮収縮を伴う子宮頸管の短縮など)
(3)原因不明の腟出血・分泌、または激しい腹痛がある
(4)羊水の漏れがある
(5)前置胎盤
(胎盤が子宮下部、特に内子宮口にまたがるように付着する異常)
(6)子宮頸管無力症
(子宮収縮を伴わなくても、自然に子宮頸部が開いてきてしまい、流産や早産のリスクが高まる疾患)
(7)多胎妊娠(双子、三つ子など)
2. ソフトなエッチを心がける
最初にもお伝えしたように、妊娠中は子宮口や腟粘膜から出血しやすい状態にあります。できるだけ出血を避けるよう、ソフトな性交を心掛けましょう。
3. おなかを圧迫しない体位を工夫する
おなかがまだ膨らんでいない妊娠初期は、それほど体位を気にする必要はないでしょう。しかし妊娠中期~後期はおなかがふくらみ、大きくなっていきます。
そのため女性上位や後背位、側臥位など、おなかを圧迫しにくいといわれる体位で行うなど、工夫が必要になってきます。いろいろトライしてみて、妊婦さんにとって楽な体位を見つけてみましょう。
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妊娠中の体位について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
4. 乳首への刺激を控える
乳首への刺激は、子宮の収縮を促し、お産を誘発する効果があると指摘されています [*4]。実際、出産を早めるために医療機関で乳首や乳房を刺激する場合もあるようです。
乳首を刺激すると子宮収縮を促す作用のある、「オキシトシン」というホルモンの分泌を増やすと言われています。そのため、切迫早産や早産のきっかけになる可能性もあるといわれる ことから、乳首への刺激は避けたほうがよいでしょう。
5. コンドームを着ける
コンドームは避妊具としてだけでなく、性感染症の予防に大きく役立ちます。そのため、妊娠中もコンドームを着けて性交することをおすすめします。
また、さきほどもお話ししたように、精液には子宮の収縮を引き起こす可能性のある物質が含まれているため、コンドームを着けずにセックスをすると、早産につながることも考えられます 。
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妊娠中の腟内射精について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
6. お互いに体を清潔にしてから行う
シャワーやお風呂に入り、清潔な状態でセックスをすると、感染症のリスクをはじめとした、さまざまな不安を減らすことにつながります。
またセックスの前だけでなく、終わった後もできればシャワーを浴びて、清潔にしておくようにしましょう。セックス後は、デリケートゾーンに残った体液の影響などで、雑菌が繁殖しやすい状態になっています。
膀胱炎の原因となることもあるため、セックスの前後は身も心もさっぱりと清潔にしておくことをおすすめします 。
7. 気分がのらないときはパートナーと話し合う
妊娠中は体調の変化が大きい人もいて、性交に対して消極的になる女性は少なくありません。また「赤ちゃんに影響はない」といわれても、不安がぬぐえない人もいるでしょう。
そのように気分がのらない時はパートナーと話し合い、セックス以外のコミュニケーションやスキンシップをするのもひとつの方法です。無理をしてセックスが嫌になってしまわないよう、お互いの考えを伝えておくことも大切ですよ。
8. 性行為の最中に異変がみられたら受診を
セックスの際に腹痛などの異変が生じた場合は、途中でやめることも必要です。体調の変化を感じたら、様子を見て、かかりつけ医に連絡する、受診するなどの対応をしましょう。
なお、妊娠中の自慰行為(オナニー)については以下の記事で詳しく解説していますので、併せて参考にしてください。
まとめ
セックスは夫婦のコミュニケーションのひとつとして大切なこと。妊娠経過が順調であれば、妊娠後期のセックスも基本的に問題はありません。ですが、だからといって無理をしてまでする必要もありません。妊婦さんの体調を優先しましょう。また性的行為は挿入だけに限りません。抱き合う、手を握るなど、お互いの性的ニーズのすり合わせや変化を楽しみながら、妊娠中のコミュニケーション方法を工夫していけるといいですね。
(文:山本尚恵/監修:浅野仁覚先生)
※画像はイメージです
[*1]A Partner's Guide to Pregnancy | ACOG
[*2]MAYO clinic Sex during pregnancy: What's OK, what's not
[*3]Kids Health Sex During Pregnancy
[*4]日本助産学会 エビデンスに基づく助産ガイドライン-妊娠期・分娩期・産褥期2020「CQ203 乳房/乳頭刺激は、分娩誘発の効果があるか?」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます