<保存版>断乳・卒乳の進め方|時期選び・事前準備・ケア方法まで完全マニュアル【助産師解説】
断乳や卒乳をしようと思った時、何から始めればいいのかわからないことが多いでしょう。今回は断乳・卒乳の時期選び、準備すること、スムーズに進めるための方法、乳腺炎や寝かしつけなどトラブルが起きたときの対処法まで徹底解説します。
- 1.意味|断乳と卒乳はなにが違う?
- 2.時期|断乳・卒乳はいつごろ?
- <調査結果>断乳・卒乳のきっかけ
- <調査結果>断乳・卒乳をした時期
- 3.準備|断乳・卒乳スタートまでには何をする?
- ① 授乳間隔や回数をチェック
- ② 体調や乳房の状態などをチェック
- ③ 赤ちゃんの栄養方法をチェック
- 4.方法|スムーズな断乳・卒乳の進め方・ケア
- <スケジュール>3段階に分けて進める
- <ケア>断乳中の搾乳・圧抜きの基本は“おにぎり握り”
- 5.注意点|断乳・卒乳時のトラブルシューティング
- <食事>乳腺炎予防のため、断乳中に食べない方がいいものはある?
- <乳腺炎>断乳中におっぱいが痛い! しこりもできた……
- <寝かしつけ>おっぱいをやめたら子供が寝てくれない……
- <断乳ケア>とくになにもしなかったけど、大丈夫かな?
- <生理>断乳・卒乳したのに生理がこない……いつくる?
- <ミルクの卒乳>ミルクを止める時期っていつ?
- まとめ
1.意味|断乳と卒乳はなにが違う?
まずは断乳と卒乳はどんなことを指すのか、言葉の意味について説明しましょう。
断乳とは 卒乳とは
断乳と卒乳について、それぞれ明確な定義があるわけではありませんが、いずれも正確には「赤ちゃんが母乳や育児用ミルクを飲まなくなった状態」を指します。一般的には母乳の授乳の終わりを意味することが多いようです(今回の記事では特に「母乳の授乳の終わり」のことを解説します)。
卒乳と断乳、それぞれの言葉を区別せずに同じ意味として使うこともあれば、「卒乳は赤ちゃんから飲まなくなること」「断乳はママ側が母乳を断つこと」などと区別することもあります。
なお、日本助産師会の資料では以下のように解説しています。
卒乳とは、赤ちゃんが母乳を飲まなくなることをいい、それには赤ちゃんから自然と飲まなくなることと、授乳回数を減らしていくことなど母親側の働きかけでやめていくことも含まれます。
断乳はお母さんから母乳を断つという意味合いが強く、ある時期に一度にやめるようなときに使われる言葉です。
「赤ちゃんとお母さんにやさしい 母乳育児支援」より
「部分的な断乳」である夜間断乳も
断乳といっても、その日から一切授乳をやめるだけでなく、夜寝ている間の授乳だけやめる「夜間断乳」という方法もあります。
夜間断乳は、夜の授乳でママが寝不足になっていたり、ストレスに感じていたりするときには検討してみてもいいでしょう。また、断乳・卒乳の前段階として行う場合もあります。
ただし、離乳食開始前の生後5〜6ヶ月未満の赤ちゃんには勧められません(ミルクが飲める場合は問題なし)。
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夜間断乳のやり方については、以下の記事で詳しく解説しています。
2.時期|断乳・卒乳はいつごろ?
いつまで母乳をあげていていいのか、今の時期に母乳をやめてしまっていいのか、についてはみんなが頭を悩ませています。断乳・卒乳の時期はどう考えたらいいのでしょうか?
<調査結果>断乳・卒乳のきっかけ
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職場復帰や入園時の断乳・卒乳について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
<調査結果>断乳・卒乳をした時期
なお、1歳6ヶ月健診の時点で3割の家庭では授乳中だったという調査結果もあるようです*。
*参考:井出正道ら:「卒乳に関する保護者の意識調査」小児歯科学雑誌54(4): 462−469 2016
断乳・卒乳の時期は母子が決めるもの
断乳・卒乳をいつにするかについては、“◯歳になったらやめなければならない” などというルールはなく、あくまでもママと子供が決めるものです。
育児用ミルクが飲める、もしくは食事を十分に食べられているのであれば大丈夫ですし(後ほど詳しく解説)、何歳になってもママと子供が望むのならば満足するまで授乳を続けていいのです。
「◯歳になってもまだ授乳しているのはおかしいのかな?」
「1歳前なのに母乳があげられない……赤ちゃんがかわいそう?」
などと悩む必要はありません。
ママと赤ちゃん・子供の体調や気持ちを優先して、断乳・卒乳のいい時期を見つけていってください。
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断乳・卒乳の時期の決め方については、以下の記事で詳しく解説しています。
3.準備|断乳・卒乳スタートまでには何をする?
赤ちゃんがいつの間にか飲まなくなっていたような自然卒乳以外の場合では、断乳・卒乳の日にむけてある程度準備を進めることがおすすめです。
マイナビ子育て編集部が行なったアンケートでは、6割以上の人が断乳・卒乳するにあたって何らかの準備をしていました。中でも多かったのが「授乳回数を徐々に減らした」(44.1%)ということで、他にも、準備として「哺乳瓶の練習をした」「ミルクになれさせた」「母乳外来や病院に相談した」「ママ友から話を聞いて情報収集した」などが挙げられました[*1]。
それでは、具体的にどのような準備を進めるべきなのかを解説しましょう。
① 授乳間隔や回数をチェック
段々と授乳回数が減っている卒乳の状態の方が、授乳をやめるのに適した状態です。授乳頻度が多い状態で断乳に突入すると、「母乳を大量生産しているのに出荷(授乳)されないで、乳房に母乳が溜まった状態」になります。そうすると、断乳中に乳腺炎などのトラブルが起きやすいのです。また、いきなり授乳をやめるのは子供もギャップに苦しむことになります。
断乳の1ヶ月前ぐらいから、
・夜間授乳をやめる
・昼間の授乳の回数を減らす(数日おきに1回ずつ回数を減らす など)
・夜寝るときの授乳だけにする
などを試してみましょう。
そして、子供の心の準備のためにも、「そろそろおっぱい終わりだよ、それまで楽しんでね」など声をかけて、断乳することを伝えてあげてくださいね。
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夜間授乳の必要性については、以下の記事で詳しく解説しています。
② 体調や乳房の状態などをチェック
ママと子供どちらかの体調が万全でない時に、断乳・卒乳に踏み切るのはやめましょう。
また、断乳・卒乳中は乳房内に母乳が溜まった状態になるので、ママが乳腺炎になっていたり、その傾向があったりするときも時期の見直しが必要になります。
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乳腺炎の症状については、以下の記事で詳しく解説しています。
③ 赤ちゃんの栄養方法をチェック
母乳をやめるにあたっては「母乳以外からも栄養を摂ることができるか」が重要です。
1歳前|ミルクは飲めるか
1歳前の時期に母乳の断乳・卒乳をする場合は、母乳に代わる栄養源であるミルクが飲める必要があります。
また、生後5〜6ヶ月ごろに離乳食が始まってからも、しばらくは「食べる練習」程度で、食事から十分な栄養を摂れるようになるのは1歳〜1歳半の時期以降です。少なくとも1歳までは離乳食を食べつつ、母乳やミルクで補う必要があります。
なお、母乳育児の赤ちゃんの中には、育児用ミルクを拒んだり、哺乳瓶を嫌がったりする子もいます。ミルクの温度や種類を変えてみたり、哺乳瓶以外から与えたりするなど、ケースに応じた対処法があります。まずはミルクを飲んでくれるかを試しておきましょう。
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赤ちゃんのミルク拒否・哺乳瓶拒否については、以下の記事で詳しく解説しています。
1歳以降|食事はしっかり食べられているか
1歳を過ぎて3回の食事+おやつをしっかりお腹いっぱいに食べられるようになると、必要な栄養・エネルギーのほとんどを食事から摂れるようになります。
ただし、離乳食の進み具合は子供それぞれで異なるので、1歳以降も赤ちゃんの状況をみながら栄養状況を判断しましょう。
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離乳食と母乳については、以下の記事で詳しく解説しています。
4.方法|スムーズな断乳・卒乳の進め方・ケア
準備を終えたら、断乳・卒乳のスタートです。
母乳を「溜めて」母乳産生を「止める」
断乳・卒乳というと、「赤ちゃんが母乳を飲まないようにする」方ばかりに目が向かいがちですが、ママ側も「母乳を作り出さないようにする」必要があります。
では、母乳の産生をとめるためにはどうしたらいいのか。それは「一定期間、乳腺内に母乳がある程度溜まった状態を維持する」ことです。それと並行して、張りや痛みへ適切に対処していきます。
つまり、母乳を排出しないことによる張りや痛みを緩和しながら、なるべく乳腺内に母乳が溜まった状態に保つのが、断乳・卒乳の進め方のケアの基本となります。
<スケジュール>3段階に分けて進める
①初日〜3日目:つらさのピークの時期
∟つらくなったとき、楽になる程度まで搾乳しながら様子を見る
②3日目
∟一度母乳を完全に搾りきる
③4日〜1週間:辛さのピークは越えたと感じる時期
∟張りを感じたときだけ圧抜きをする
この3ステップの後、張りや痛みがなく過ごせれば順調な証拠。1ヶ月もすると搾ろうとしても母乳が滲む程度になり、そうすれば断乳・卒乳完了です。
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断乳のスケジュールについては、以下の記事で詳しく解説しています。
<ケア>断乳中の搾乳・圧抜きの基本は“おにぎり握り”
①3日目までのほどほど搾乳、②3日目の搾りきる搾乳、4日目以降の圧抜き、これら全て基本は「おにぎり握り」で行います。
授乳期間中の搾乳では、乳輪全体を圧迫するようにして母乳の分泌を促しながら搾っていましたが、断乳では母乳の産生を止めていきたいので、できるだけ乳輪は刺激せず、乳房全体を手で包んでおにぎりを握るようにて圧迫します。
ただし、乳房全体が張っているケースでは、乳輪がむくんでおにぎり搾りでは母乳を排出しにくいことがあります。その際は、むくみをとるために乳輪をマッサージしてから搾るといいでしょう。
▶︎むくみをとるマッサージ(リバース・プレッシャー・ソフトニング)のやり方はこちら
なお、搾乳や圧抜きをしなくても乳房がやわらかで、痛みもないならば何もしなくて大丈夫です。
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断乳中の圧抜き・搾乳について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
5.注意点|断乳・卒乳時のトラブルシューティング
それでは最後に、断乳・卒乳中〜後に起こりがちなトラブルやお悩みについて考えてみましょう。
<食事>乳腺炎予防のため、断乳中に食べない方がいいものはある?
断乳・卒乳の時は乳腺炎になりやすいのは事実です。そんな時、予防のために乳製品などを制限する人もいるようですが、「食事が乳腺炎の原因」は誤解です。
断乳・卒乳中に乳腺炎予防で気をつけることといえば、
・水分を十分に摂ること
・十分な休息をとること
・締め付けない下着にすること
でしょう。
そして、乳腺炎の兆候があったら
・適度に搾乳、圧抜きをする
・濡らしタオルなどで冷やす
なども有効です。(※「乳腺炎の兆候の症状」についてはこちら)
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乳腺炎と食事の関係について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
<乳腺炎>断乳中におっぱいが痛い! しこりもできた……
母乳の産生が止まるまでは、胸が張って痛んだり、しこりができることもあるでしょう。断乳・卒乳中は締め付けない下着を付け、先に紹介したような搾乳や圧抜きを試してみてください。
もし、それでもなかなか改善せず、乳房の腫れやひどい痛み、赤み、熱感、38.5℃以上の高熱、などがあれば、乳腺炎になっている可能性があります。その場合は母乳外来がある医療機関などで相談しましょう。
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断乳中の乳腺炎について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
<寝かしつけ>おっぱいをやめたら子供が寝てくれない……
マイナビ子育てが行なったアンケートでは、「断乳・卒乳後に寝かしつけ方法が変わった」という人が36%いました[*1]。
夜の寝かしつけの時、毎回授乳をしていると「授乳しないと寝てくれない」という状況ができてしまいます。それならば、断乳・卒乳を機にネントレ(ねんねトレーニング)を始めてみましょう。
ネントレは、授乳や抱っこをしなくても赤ちゃんが自分で寝付く力を身につけるための練習です。ネントレには「決めた時間ごとに様子を見に戻る」などいくつか方法があるので、ご家庭に合った方法を試してみてください。
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断乳・卒乳後の寝かしつけについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
<断乳ケア>とくになにもしなかったけど、大丈夫かな?
断乳で一番おっぱいトラブルが起きやすいのが、「頻回に授乳していた人が急にやめるケース」です。毎日たくさん作り出されていた母乳を急に排出しなくなるわけなので、母乳の産生量が落ちてくるのにも時間がかかります。
一方、もともと1日の中での授乳回数が少ない人の場合は、授乳をやめても張りや痛みが出ず、そのまま母乳が出なくなることもあります。ケアせずになにも支障なければ、そのまま断乳・卒乳完了です。実は今回行なったアンケートでも、43.5%のママが「断乳・卒乳の後、特に何もケアしなかった」と答えています[*1]。
時々「断乳ケアをしないと乳がんになる」「次の子を出産したときに母乳が出なくなる」などということを言う人がいるようですが、科学的根拠のないことなので事実ではありません。
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断乳ケアしなかったケースについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
<生理>断乳・卒乳したのに生理がこない……いつくる?
授乳中に生理(月経)がくることもありますが、基本的には産後に授乳をしている期間は生理が起こりにくいホルモンの状態となります。
断乳・卒乳後3ヶ月以内には生理が再開することが多いですが、ストレスが溜まっていたり、睡眠不足で疲労感があったりすると、なかなか生理周期が整わないこともあります。また、生理不順の背景に婦人科の疾患があることも。
授乳をやめて数ヶ月経っても生理がこないようであれば、婦人科を受診しましょう。
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断乳後の生理について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
<ミルクの卒乳>ミルクを止める時期っていつ?
今回は母乳の断乳・卒乳についてお伝えしてきましたが、育児用ミルクについてはどうなのでしょうか。
まず、やめなければいけない時期は特に決まっていません。粉ミルク・液体ミルクの対象年齢は「生後0~12ヶ月」になっていますが、適切な時期(生後5〜6ヶ月ごろ)に離乳食を始めて、順調に進んでいれば1歳以降も飲んではいけないことはありません。
1歳をすぎて、その子がご飯をしっかり食べられるようになったら、ミルクを卒業して牛乳に切り替えていってもいいでしょう。
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ミルクの卒乳について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
まとめ
今回は断乳・卒乳の準備からやり方、その後のケア方法までお伝えしました。ただし、ここで説明した内容は一例で、そのご家庭ごとに事情があるでしょうし、ママのおっぱいの状態も十人十色。全てにおいて「絶対こうしないとダメ!」ということではありません。まずは参考程度に受け止めてもらって、自分に当てはめながら「ここはこの通りにやってみよう」「これは自分には必要ないようだ」と柔軟に断乳・卒乳を進めてください。もちろん、心配な時は助産師などに相談しながら断乳・卒乳を進めてもよいと思います。
断乳中に多少搾乳をしすぎたとしても断乳期間が少し長くなるだけですし、断乳中に子供にせがまれて授乳を再開したとしても、それはそれでよしとしてまたの機会にすればいいのです。
これからもずっと続いていく親子関係の一通過点としての断乳・卒乳。大変なこともあるかもしれませんが心より応援しています!
(監修:坂田陽子 先生、構成:マイナビ子育て編集部)
アンケートについて
[*1]マイナビ子育て調べ 調査期間:2022年1月13日~2022年1月31日 調査人数:108人(28歳~40歳以上の女性)
※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます