【医師監修】「つわりのぶり返し」は何週まで続く?"つわり戻り"への対策
つわりが終われば楽しいマタニティライフが送れるはず! そう思って耐えてきたつわりなのに、終わったと思っていたら、またぶり返したような症状が……そんな事態に困惑する妊婦さんは少なくないようです。つわりのぶり返しの原因と対策について調べました。
つわりはいつからいつまで?
つわりの期間は、一般的には妊娠5〜6週ごろに始まり、赤ちゃんを養う子宮内の「胎盤(たいばん)」が完成する12〜16週ごろに終わる人が多いとされています[*1]。
しかし、いつからつわりが始まり、つわりがいつ終わるかは個人差が大きく、一概に言えません。つわりのピークや終わる時期については以下の記事も参考にしてください。
妊娠期間別「つわりのぶり返し」の考えられる原因
つわりのぶり返しについて、考えられる原因などについて妊娠期間ごとに見ていきましょう。
妊娠初期<~妊娠13週>の「つわりのぶり返し」
つわりの症状の現れ方や強さは妊婦さんそれぞれで異なり、同じ人でも妊娠の度にその具合が違うことも多くあります。つわりがどのように終わるかも個人差はありますが、ある日すっかり症状がなくなるというよりは、「終わったと思ったらぶり返した」といった三歩進んで二歩下がる状態を繰り返しながら、徐々に症状が軽くなっていく場合が多いようです。
妊娠初期の終盤は特にそのような「ぶり返し」を感じる人がいるかもしれません。
つわりの終わりごろの症状については、以下の記事で詳しく解説しています。
・「つわりを軽く感じた日」に学ぶ
「つわりを軽く感じた日」があったのならば、その理由を考えてみましょう。
睡眠が十分にとれて体を休めることができたらすっきりした、こんな食べ方をしたら吐かなかった、気分転換にママ友と出かけたら気持ちが悪くならなかった、など何かしら「おかげで症状が軽減したのかも⁉︎」と思う理由があるのではないでしょうか。
ぜひその理由を思い出して、参考に、楽に過ごせる工夫をしてください。
妊娠中期<妊娠14週~27週>の「つわりのぶり返し」
妊娠中期はまだつわりが続いている人もいる時期となります。
つわりが12〜16週ごろまで、というのはあくまで目安であり長引く人もいるので、消化器の不快な症状が妊娠期間を通じて続くこともあるのです[*2]。
・どんどん大きくなる子宮
また、一般的には14週ごろには子宮の大きさは “新生児の頭” ほどになり、19週ごろには“小児の頭”ほどになります[*3]。妊娠後期に近づき、急速に子宮が大きくなってくると、俗に「後期つわり」と呼ばれる症状が出始めます(「後期つわり」はあくまで通称で、医学的にはそのような表現はありません)。
子宮やおなかの大きさの変化について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
妊娠後期<妊娠28週~>の「つわりのぶり返し」
つわりのぶり返しかと思うような吐き気やおう吐などの消化器症状が起きることは少なくないので、先輩ママたちなどから「後期つわり」などと呼ばれています。それは次のような原因から起こると考えられています。
・「後期つわり」の原因
・ 大きくなった子宮に胃が圧迫される
・ ホルモン分泌の影響で食道と胃の境目にある「下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)」という筋肉がゆるんでいて、胃の内容物が逆流しやすい
・ 妊娠中はホルモン分泌の影響で腸の動きが悪くなるため便秘しやすいうえ、後期には大きくなった子宮も腸の動きを妨げるため、さらに便秘が悪化しやすい
・ お腹が大きくなったことで、自然な寝返り運動が妨げられるなどして眠りが浅くなり、寝不足やストレスが強くなる
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その他、妊娠後期の不調について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
中・後期の「つわりのぶり返し」対策
つわりがぶり返したような症状があったとき、自力でできる症状緩和のケア法をまとめます。無理なく試せることで、なるべく症状を軽く、快適に過ごせますように!
胃酸対策
胃酸が増えると吐き気が出やすいので、胃酸を増やす甘いもの、脂っこいものを食べすぎないようにしましょう。炭酸飲料は逆流を起こしやすいため、吐き気の症状があるときはやめておきます。
つわり中の食事についてはこちら ▶︎つわりでも食べれるもの
もしも水分も受け付けない場合などは主治医に相談してください。点滴などの対応が必要になるほか、妊娠中でも使用できる吐き気止め(制吐剤)が処方されることがあります。なお、吐き気止めの薬によっては赤ちゃんへ影響するものもあるので、必ず妊娠中であるとわかった上で処方された薬を服用しましょう[*4]。
吐き気止めなどつわりに効果がある薬については以下の記事で解説しています。
消化をサポート
消化のよい食事を心がけましょう。1回で食べる量は腹7分・腹8分に抑え、満足できないなら、回数を増やすのもOK!(「1日4または5回×半人前〜0.7人前程度(控えめ)」など分割食も)
いずれにせよゆっくり、よく噛んで食事をし、なるべく「上の子の面倒を見ながら」「スマホを見ながら」「テレビを見ながら」といった“ながら食べ”は控えましょう。
便秘対策
食物繊維や腸内環境をよくする発酵食品を十分にとりましょう。
一方で、無理のない範囲でウォーキングやマタニティヨガなど適度な運動をして体を動かすことも便秘予防に有効です。
妊娠中の便秘対策については、以下の記事で詳しく解説しています。
仕事&家事対策
つわり中の仕事や家事で無理をしていないか見直すとともに、勤務先と働き方を相談するために、場合によっては主治医に「母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)」を書いてもらいましょう。
このカードは、症状に応じて必要となる通勤緩和や休憩などの指導内容を会社側(事業主)に的確に伝えるものです。
良質な睡眠を
体調を整えるため、そしてストレスケアとしても大切なのが睡眠です。自然な眠気をもよおして就寝する工夫をしましょう。
手軽な方法は体内時計に影響する「光」の調節です。夕方以降、戸外が暗くなるのに合わせて室内の照明も暖色系に変え、食後は明るさを一段落とします。その後は覚醒刺激が強いブルーライトを発するテレビやスマホから離れ、のんびりすると眠気が出てくるでしょう。
さらに、一般的に夕方以降は「体温(体の表面の温度)」が上昇していく過程で眠くなり、「深部体温(体の内部の温度)」が低下すると眠れます。就寝予定時刻の2時間前に入浴を済ませると、ふとんに入るころに深部体温が下がり、寝つきがよくなります。
妊娠中の睡眠について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
こんな時はすぐに受診!
・ 吐き気やおう吐が1日中続く
・ 吐き気に呑酸(どんさん:口や喉まで酸っぱい液がこみあげる感じ)を伴う
・ 水分も受け付けない
・ 頭痛・腹痛・性器からの出血・意識がもうろうとする(意識障害)など、消化器症状以外の症状を伴う
「妊婦だから『気持ち悪くて当たり前』といった思い込みで病気を見逃さないようにしたいものです。なるべく健やかに、快適にマタニティライフを過ごすために、不安があったらどんなことでも主治医や助産師に相談し、アドバイスをもらってください」
まとめ
つわりは12〜16週ごろには症状が軽減・消失するとされますが、それはあくまで目安で、人によって期間には違いがあります。ぶり返しの症状がつらく、生活に支障があったり、不安な場合は、症状がつわりであることを確かめるためにも主治医に相談し、必要なケアを受けて体調を整えてください。
(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
[*1]病気がみえるVol.10産科 第4版 ,p6,p86 メディックメディア, 2018.
[*2] 「臨床婦人科産科 2018年 4月号増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド? いまのトレンドを逃さずチェック! 」, p58,医学書院, 2018.
[*3] 病気がみえるVol.10産科 第4版 ,p7-8 メディックメディア, 2018.
[*4] 産婦人科診療ガイドライン―産科編, p124,日本産科婦人科学会, 2017.
古賀良彦著「脳の疲れをとる本」,方丈社,2018
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます