妊婦は焼肉を食べていい?妊娠中に食べ過ぎNGの部位は?陣痛がくるってほんと?【医師監修】
妊娠したら、生ものやアルコールを避けるなど、食生活で注意点が出てきますが、「焼肉」はそれまで同様に食べてもいいのでしょうか? 妊娠中の焼肉では何に気をつければいいのか、また、よく聞く焼肉と陣痛の関係についてもお話しします。
妊娠中に焼肉を食べても大丈夫?
妊娠中の「焼肉」には、何かリスクがあるのでしょうか。まずは、考えられる心配なことを説明します。
妊娠中は食中毒のリスクがアップ
妊娠中の焼肉で気をつけたいのが、さまざまな細菌やウイルスなどによる「食中毒」です。
とくに気を付けたいのがリステリア菌
なかでも「リステリア菌」による食中毒には、とくに注意が必要です。リステリア菌は塩分に強く、冷蔵庫の中に入れていても増殖するのが特徴です。
妊娠中は妊娠していない成人に比べて、リステリア菌への感染率が20倍高いと言われています[*1]。この菌に感染すると、下痢、発熱、頭痛、筋肉痛といった症状が現れますが、症状が重いタイプでは敗血症、髄膜炎などを起こして命にかかわることもあります。
また、妊娠中に感染すると流産や早産の原因になることがあり、新生児が低出生体重、敗血症、髄膜炎などを起こすリスクもあります。
そのため、妊娠中は特に、リステリア菌による食中毒を起こしやすい食べ物は避けましょう。具体的には、加熱の不十分な肉や魚など、加熱殺菌していないナチュラルチーズや、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンなどです[*2, 3]。
トキソプラズマにも注意が必要
妊娠中の焼肉で注意したいリスクの1つとしては、「トキソプラズマ症」もあげられます。
トキソプラズマ症は、寄生虫であるトキソプラズマ原虫が引き起こす感染症です。おもな感染経路には「感染している猫の糞」「ガーデニングなどの土をいじること」「十分に加熱されていない肉などを食べること」の3つがあります。
トキソプラズマ症では、抗体を持たない妊婦さんが初めて感染した場合が問題となります。その場合は、流産・子宮内胎児死亡を引き起こしたり、お腹の赤ちゃんの目や脳などに異常が起こる「先天性トキソプラズマ症」を発症する可能性があるからです。
焼肉を食べる時に、十分に火が入っていない状態で口にしてしまうと、トキソプラズマ症になる可能性があります。
トキソプラズマについてのよりくわしい情報は、下記の記事を参照してください。
また、「E型肝炎ウイルス」を持つブタやイノシシ、シカの生肉や生焼けの肉を口にすると肝炎を起こしますが、妊婦の場合は劇症肝炎となることがあります。
妊娠中は食中毒を起こしやすいと言われており、ここで紹介した以外の病原体による食中毒にも注意が必要です。
そのほか、妊娠中のホルモン焼きに関しては以下の記事で詳しく解説しています。
妊娠中の焼肉はここに注意!
ここまでで妊娠中の焼肉で注意したいことを紹介しました。でももちろん、ポイントを抑えれば、妊娠中でも焼肉を食べられます。次の項目に気をつけて楽しんでくださいね。
(1)しっかり火を通して
妊婦さんは非妊娠時よりも食中毒に注意が必要なので、焼肉用の肉はもちろん、ハンバーグやレバーも、生の部分が残らないよう、「中までしっかりと火が通るように加熱する」ことが大切です。
(2)生肉は食べないで!
最近では法律で規制されたため、飲食店で提供されることはないはずですが、牛や豚のレバ刺しは見かけても絶対に食べないようにしましょう。その他の生肉料理も、食中毒のリスクがあるので、妊娠中は食べないでください。
また、焼いたつもりで生の部分が残っていてもよくありません。
妊娠中は特にしっかりと焼くことが大切。肉の内側にも赤い部分がなくなり、火が通った状態になったのを確認してから食べてくださいね。
(3)「肉を焼く箸」と「食べる箸」は別々に
肉を十分に焼いていても、生肉に触れたトングで取り分けたり、生肉に触れた箸で口に運んでしまうと、細菌やウイルス感染を起こす可能性があります。
生肉を焼き網に載せるための箸と、焼けた肉を取ったり口に運ぶのに使う箸は、別々のものを用意しましょう。また、生肉に触れたら忘れずに、しっかりと手を洗ってくださいね。
(4)自宅での焼肉では包丁やまな板を清潔に
自宅で焼肉をする時には、包丁やまな板、皿の衛生管理も重要です。
肉を切ったり肉に触れた包丁やまな板、皿はきれいに洗ってから、熱湯をかけて消毒しましょう。
(5)副菜もプラスしてバランスよく
焼肉を安全に食べるための方法は上にあげた通りです。
妊娠中に食べるなら、栄養面で以下についても気を配れると良いでしょう。
栄養バランスも考えると、焼肉だけではビタミンやミネラルなどの栄養分が不足しやすくなります。焼肉とともに、野菜や乳製品大豆製品などを使用した副菜やご飯もプラスして栄養バランスを整えましょう。
(6)体重管理も気をつけて
焼肉をするとつい肉を次々食べてしまって、カロリーを取りすぎてしまうことがあります。
妊娠中期~後期になると、体重が増えやすくなります。焼肉のせいで一気に体重が増えることにならないように、気をつけて食べましょう。
レバーの食べ過ぎには注意を!
レバーや鶏ハツには「ビタミンA」が多く含まれています。ビタミンAは水に溶けにくく脂に溶けやすい性質がある脂溶性ビタミンの1つで、主なものに「レチノール」があります。
このレチノールは、レバーやうなぎなど動物性食品に多く含まれ、摂りすぎるとお腹の赤ちゃんの先天異常を引き起こすことがあります。特に妊娠初期は寮に注意が必要です。
妊娠中のレバー、ビタミンAについてくわしくは、下記の記事を参照してください。
焼肉と陣痛に関係はあるの?
「妊娠後期に焼肉をすると、赤ちゃんが出てきやすくなる」という噂があります。本当なのでしょうか?
「焼肉で産気づく」は都市伝説
「焼肉をすると産気づく」という噂は、あくまで都市伝説です。科学的に見て、焼肉と出産の間に関係はありません。ママたちの間で語られるジンクスにすぎませんので、気にしないでいいでしょう。
なお、産後に赤ちゃん連れで焼肉に行くのは難しいものです。
産気づくかどうかは気にせず、出産前の今だからこそできることの1つとして焼肉を楽しむのもいいですね。
まとめ
妊娠しても、焼肉を食べること自体は問題ありません。
ただし妊娠中は食中毒を起こしやすいため、焼肉をする時には十分に火を通してから食べる、衛生管理に気を付けるといったポイントを守りましょう。
また、焼肉を食べ過ぎると、体重増加の引き金になることも。体重管理も考えながら食べられるといいですね。肉だけでなく野菜やご飯なども一緒に食べるようにすると、栄養バランスがとりやすくなります。
なお、焼肉を食べると陣痛が来る、というのはあくまで都市伝説。気にせず焼肉を楽しんでくださいね。
(文:大崎典子/監修:浅野仁覚先生)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省検疫所:リステリア症 (ファクトシート),2018
[*2]厚生労働省:「これからママになるあなたへ 食べ物について知っておいてほしいこと」
[*3]厚生労働省:「お肉の食中毒を避けるにはどうしたらよいの?」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます