【医師監修】妊娠初期のつわりの不安、5W1Hでまとめて解消!
妊娠初期のつわりについて知っておきたいことを「5W1H」に整理してまとめます。基本事項の確認としてご利用いただきたいミニマム情報です。より詳しく知りたいときは、併せてご紹介している関連記事をご活用ください。
Who? つわりは妊婦さんみんなに起こる?
妊娠した女性の症状としてよく知られる「つわり」ですが、妊娠したら必ず起こるものというわけではありません。意外に思うかもしれませんが、つわりを経験するのは妊婦さんの50〜80%。つまり20%以上の人が症状の自覚はないということになります[*1]。
ただし、つわりが悪化して治療が必要な「妊娠悪阻(にんしんおそ)」という状態になってしまう人も全妊婦の0.5〜2%いるとされます[*2]。
つわりは病気ではないですが、症状が強く、「1日何度も吐く」「食事も水分もとれない」「体重が急激に減った(元の体重の5%以上減)」「尿の量が減っている」などがある場合は、妊婦健診を待たずに産科に連絡をしてください[*3]。
When? つわりはいつから、いつまで?
つわりと呼ばれる症状があるのはいつなのでしょうか? また、いつ終わるのでしょうか?
いつから、いつまで?
一般的には、つわりは5〜6週ごろから、12〜16週ごろまでとされます[*1]。しかし人によってそれより少し早くつわりが始まったり、逆に不快な症状が長引くこともあり、個人差が大きくなります。
「経産婦さんも1回目の妊娠時と2回目の妊娠時で同じとは限らないので、前のとき長くてつらかったから、今回もまた……とブルーにならずに、なるべく快適に過ごせるように自分をケアしてください」
ぶり返すこともある?
つわりは妊娠初期だけでなく、妊娠中期(妊娠14~27週)に及ぶこともあります。
特に16週までは一旦症状が緩和したのに、ぶり返したように感じる場合も多く、そのような症状の揺り戻しを何度か繰り返して、フェードアウト気味につわりが終わる人もいます。
また、妊娠後期(妊娠28週〜)ごろになるとお腹が一段と大きくなり、俗に「後期つわり」と呼ばれる消化器の不快な症状を訴える人もいるのですが、医学的には「後期つわり」というものはありません。
妊娠後期ごろに消化器症状が出やすいのは、妊娠が進み大きくなった子宮に胃が圧迫されることなどの影響です。もし症状がつらく、生活に支障があるときはかかりつけの産科に連絡をして指示をもらいましょう。
Where&What? どんなタイミング・状況で、どんな症状が?
つわりは多様な症状がありますが、どのような場(タイミング・状況)でどんな症状が出るものなのでしょうか?
最も多い訴えは「朝」「気持ちが悪い」
代表的な症状は、気持ちの悪さ(吐き気)、実際に吐く(おう吐)、食べたくない(食欲不振)など消化器症状が主で、そのほかにも、においに敏感になる、唾液が多くなる、食事の嗜好が変化する、なども多くの人でみられます。
症状が出るタイミングとしては、英語でmorning sickness(朝の吐き気)というように「朝起きてすぐ(ベッドの中)」という場合が多く、そのほかにも「通勤途中の電車の中」「特定の匂いがある場所(トイレや車の芳香剤、入浴剤、炊き立てのご飯、食べ終わった食器や弁当箱、おそば屋さんの出汁)」などで症状を感じる人も少なくありません。ただし、具合が悪くなるタイミングについても一概に言えず、まさに十人十色で個別性が強いです。
「つわりが始まったら、自分の症状に合わせて『枕元に軽食を置いて寝る』『苦手な匂いを遠ざける(芳香剤を変える、家事を他の人に任せる等)』などの対処で、軽減する工夫をしてください」
その他の症状
妊娠5週は生理が来ないため妊娠に気づく人が増え始めるころで、同時につわりの症状が始まり、体調の変化を自覚し始めるころです。また、消化器の不快な症状以外にも眠気やだるさ、頭痛を訴える人も多くいます。
なお、生理開始予定日より前、妊娠3週までのいわゆる「妊娠超初期」にPMS(月経前症候群)と似た症状みられることもあり、まぎらわしいこともあります。
Why? つわりはなぜ起こる?
つわりは妊娠によって起こるいくつかの要因が複合的に影響して起こると考えられています。
ホルモン分泌の変化
妊娠によっていくつかのホルモンの分泌量が変化しますが、特にhGCホルモンの分泌量が増える時期につわりが起こり、減る時期に症状が軽減することが多いため、hGCホルモンがつわりに関与していると考えられています。
代謝の変化
妊娠によって増えるホルモン(プロゲステロン)の影響で筋肉が緩み、消化器官の運動が低下することも消化器症状をまねく原因とされます。
精神的な変化
妊娠や出産、生活への不安など、妊婦さんの精神的ストレスが、つわりによる身体的ストレスと重なり、つわりを悪化させることがあります[*8]。
また、このほかに2020年の夏期につわりの時期を迎える妊婦さんの症状悪化の原因として松峯先生は「熱中症」に注意を促します。
「つわりによって十分に水分がとれない人も多いので、脱水や熱中症との合併に注意が必要です。 例年だと春から徐々に気温の上昇に体が慣れていきますが、新型コロナ感染症対策の自粛生活で空調のきいた部屋で外出を控えていた人が多く、暑さに慣れないまま猛暑の時期を迎えることが心配されます。また、マスクの着用により熱がこもったり、喉の乾きを感じにくいことも危険だと指摘されています。
意識的に水分を取り、おう吐が激しい場合などは経口補水液をとるように心がけましょう。上のお子さんを連れて公園に行くなどして汗をかくときは、特に気をつけてください」
徐々に暑さに慣れることは「暑熱順化」と言います。暑さから受けるストレスに対する抵抗力(暑熱耐性)は、春以降、暑くなっていく時期の外出で徐々に高まるので、アスリートでさえも猛暑の時期の練習に備え徐々に運動時間を延ばすなど工夫しています。私たちも、戸外で過ごす時間を急に増やさないように注意が必要です [*4]。
How? どうやって対処する?
なるべくラクに快適に過ごせるように、無理のない範囲でいろいろ試してみましょう。
食事について「無理しない」工夫
消化器症状を訴える人が多いので、食事の悩みをもつ人が多くなりますが、つわりの時期は「食べられるものを食べられるとき、食べられる分だけ食べる」でOK。食欲がなくても、「食べられるだけでOK」だと忘れず、決して無理をしないようにしましょう。
つわりの時期は十分に食べられなくても赤ちゃんに影響はありません。
「昔は『妊娠したら2人分の食事』などと言っていた時代もありましたが、それは栄養事情が悪い時代の話で、現代ではその必要はないことがわかっています。妊娠初期には1日50kcalをプラスすることが推奨されていて[*5]、50kcalの目安は食べ物でいうとバナナ1/2本程度 [*6]です」
生活の中で「無理しない」工夫
仕事で無理をして体調を悪化させないために、女性が働きながら安心して妊娠・出産を迎えるために設けられている「母健連絡カード(母性健康管理指導事項連絡カード)」を活用しましょう[*7]。
「勤務時間短縮などで負担軽減できたら、その時間は自分のケアに使うと思ってください。女性は家にいるとつい家事に精を出してしまったり、普段以上に上のお子さんに付き合ったりして、あまり休めない場合があります。それでは制度の意味もありませんので、ぜひ十分に休んで、なるべくラクに過ごしましょう」
まとめ
つわりは代表的な症状や期間があるものの、個人差も大きく、妊娠の機会(1人目や2人目など)によっても症状に違いがあり、一概に言えないようです。最も大切なことは、妊婦さんがなるべく普段通り、健やかに過ごせることなので、利用可能なサポートや制度を使い、症状を軽減する生活上の工夫もしてみましょう。症状が重いときや、不安なときは産科に連絡して、主治医や助産師からアドバイスをもらってください。
(文・構成:下平貴子、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
[*1]「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p86,87
[*2] 産婦人科診療ガイドライン―産科編, 日本産科婦人科学会, 2017.
[*3] 「病気がみえるvol.10 産科」(メディックメディア),p88,89
[*4]国立スポーツ科学センター 「競技者のための暑熱対策ガイドブック」
[*5]厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
[*6]文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
[*7] 厚生労働省・一般財団法人女性労働協会「妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ」
[*8]「周産期看護マニュアル よくわかるリスクサインと病態生理」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます