【医師監修】妊婦健診(検診)はいつから、どんな検査を行うの? 補助券を使えるタイミングは?
ママと赤ちゃんの健康を守るために、妊婦健診(検診)は毎回きちんと受けておきたいですね。妊婦健診の回数や当日受ける検査についてお話します。また、妊婦健診は補助券を使えばその費用が一部助成されます。補助券についてもチェックしておきましょう。
【妊娠期間別スケジュール】健診頻度と検査内容
妊婦健診は、定期的に妊婦さんと赤ちゃんの両方の健康状態をチェックするために行われます。また、妊娠中の心配ごとや気になったこと、これからの育児のことなどを医師や助産師に相談することもできます。
不安な気持ちや悩みをなくし、妊婦さん本人と赤ちゃんが安全に出産の日を迎えるために、妊婦健診を受けましょう。妊婦健診の頻度や検査内容について紹介します。
初診~妊娠11週まではだいたい3回くらい
初診~妊娠11週までは、だいたい3回、受診することになります[*1]。ただし、初診が遅ければ、回数がもっと少なくなることもあります。
初診でやること
初診では、超音波検査により「子宮内に胎嚢があること」を確認します。
市販の妊娠検査薬で陽性であれば、妊娠であることはほぼ確実ですが、病院では子宮の中に妊娠していることを確認します。子宮内に胎嚢が確認できない場合には、異所性妊娠(子宮外妊娠)を考える必要があります。その場合には、追加の採血検査などが行われます。
また問診票への記入と医師による問診で、持病やアレルギーの有無、飲んでいる薬の内容、どんな感染症にかかったことがあるか、過去に受けた手術、ワクチン接種は済んでいるか、喫煙や飲酒の有無などを答えます。
その他にも、体重測定、血圧測定、尿検査、浮腫(むくみ)の確認などがあります。BMIを計算して肥満度を確認し、それに合わせた栄養指導も行われます。
腹囲測定は行われなくなってきた
なお以前は「腹囲」の測定も行われていましたが、その有用性がないことがわかったため省略してもよいとされており、行わない病院が増えてきました。
妊婦さんの中には「上の子の妊娠中はお腹まわりを測ったのに、今度の妊娠では測らないな」と感じている人もいるかもしれませんが、現在では超音波検査で直接に赤ちゃんの状態を確認しているので、心配しないでくださいね。
妊娠がわかったら妊娠11週までやること
初診で子宮内の妊娠が確認できたら、次は心拍の確認をします。さらに胎児の大きさから妊娠週数を推定して「出産予定日」の決定が行われます。
11週までは2~3週間ごとに診察、赤ちゃんの超音波検査などが行われます。
妊娠12週~23週までは4週間に1回
毎回行われる検査
この時期の妊婦健診でも引き続き、診察、体重測定、尿検査、血圧測定、浮腫評価、赤ちゃんの超音波検査が行われます。
また、週数に合わせて以下の測定や確認も追加で行われます。
妊娠12週ごろに採血検査
妊娠10~12週頃に採血検査があります。貧血、血糖値、風疹の抗体の有無、感染症のチェック(クラミジア、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV、HTLV-1など)が行われます。病院によっては、クラミジアやHTLV-1は妊娠中期に検査することもあります。
事前に知っておくことで赤ちゃんへの感染を防止したり、治療をしたりすることができます。一部の感染症の検査については妊娠中期に行う病院もあります。
妊娠16週以降は子宮底長測定を行うことも
妊娠16週以降からは「子宮底長測定」といって、あお向けになった妊婦さんにお腹を出してもらって、「恥骨結合上縁(股関節付近にある恥骨のつなぎ目の上端)~子宮底の一番上」までを測ります。
ただし、毎回の妊婦健診で超音波検査を行っている場合、子宮底長測定は省略できることになっているため、測定しない病院も少なくありません。
妊娠20週ごろには前置胎盤のチェックと子宮頸管長測定を実施
妊娠20週ごろには、早産のリスクが高い妊婦さんを早めに見つけるために、「子宮頸管長(子宮の入口の長さ)の測定」が行われます。これは経腟超音波検査で調べることができます。
また、同時に胎盤が子宮の下の方にでき子宮口を覆ってしまう「前置胎盤」かどうかの確認も行われます。前置胎盤になると妊娠中に急な大量出血を起こすことがあるからです。
なお、前置胎盤と診断されても、日が経つうちに前置胎盤ではなくなることもよくあります。前置胎盤だとわかったとしても、焦らず様子を見ていきましょう。
妊娠24週~35週までは2週間に1回
妊娠24週~35週までは、おおよそ2~3週間に1回、妊婦健診があります[*1]。
毎回行われる検査
この時期の妊婦健診でも、診察、体重測定、尿検査、血圧測定、浮腫評価、赤ちゃんの超音波検査が行われます。また、週数に合わせて以下の検査も追加で行われます。
妊娠24~28週ごろには血糖検査
妊娠糖尿病を見つけ出すために、血糖値のチェックを行います。
普通に採血してその血糖値をチェックする病院と、ブドウ糖を溶かした水を飲んでから血液を採ってその血糖値をチェックする病院とがあります。この血糖値が基準より高い場合は、妊娠糖尿病などの疑いがあるため、より詳しい検査を受けることになります。
妊娠糖尿病を放置しておくとママと赤ちゃんの健康状態や命に関わることもあるため、早めに発見してコントロールすることが大切だからです。
妊娠24~30週ごろにも血液検査
貧血や肝機能、腎機能などを調べます。HTLV-1やクラミジアという感染症のチェックをこのタイミングで行う病院もあります。
妊娠36週~出産までは週1回
妊娠36週~妊娠40までは毎週1回、妊婦健診があります。赤ちゃんに会えるまでもう少しです!
この時期の妊婦健診でも、これまでと同じように、診察、体重測定、尿検査、血圧測定、浮腫評価、赤ちゃんの超音波検査が行われます。
超音波検査で赤ちゃんの大きさ、向き、羊水量などのチェック
超音波検査により、お腹の赤ちゃんの大きさ、逆子かどうか、羊水量などを確認します。これらから総合的に考えて、このまま自然な経過を見ていても良いかどうかを判断します。
何か問題がある場合には、お産を早める必要があるか、帝王切開の準備をしたうえで経腟分娩にするか、予定帝王切開にするかなどを検討します。
妊娠35~37週にGBS培養検査
腟の入口と肛門を綿棒でぬぐったものを調べ、「B群溶血性レンサ球菌(GBS)」がいるかどうかを確認します。
B群溶血性レンサ球菌はどこにでもよくいる菌です。ところが出産の時に赤ちゃんがこの菌に感染すると、まれに肺炎や敗血症、髄膜炎を発症して命にかかわることがあります。
そのため、この検査でママの腟や肛門付近にB群溶血性レンサ球菌がいる場合には、分娩が始まったらママに抗菌剤を投与して赤ちゃんへの感染を防ぎます。
妊娠37週ごろに血液検査
お産に向けて、血液検査が再び行われます。
妊娠41週以降は週2回以上
なお、出産予定日は妊娠40週の0日です。妊娠41週を過ぎてもまだ自然に陣痛が来ない場合は、分娩誘発を行うことが多いです。もし42週をこえる場合には、入院して赤ちゃんとママの状況を確認しつつ分娩を目指します。
また、41週以降の健診は1週間に2回以上の頻度となり、超音波検査などで赤ちゃんに異常がないかを確認します。
超音波検査はいつから? 確認できることは?
超音波検査は妊娠初期~23週のうちに1回、妊娠24週~35週のうちに1回、妊娠36週~出産までの間に1回は、少なくとも行われることになっています[*2]。現在、日本の多くの病院では、ほぼ毎回超音波検査を行っています。
なお、妊婦健診で受ける超音波検査には2種類あります。
妊娠の時期と行われる超音波検査の種類についてお話します。
妊娠初期は経腟エコーがメイン
妊娠初期のうちは、腟からプローブという超音波を発する細長い器具を挿入して、赤ちゃんの状態を見る「経腟超音波検査」が行われます。
妊娠4週前半には赤ちゃんはまだ見えません
妊娠4週前半までは、赤ちゃんが小さすぎて超音波検査では見ることができません。
妊娠4週後半~妊娠5週前半になると、赤ちゃんが入っている「胎嚢」という袋が見られるようになります。ただし、白い縁取りのある黒い楕円だけで、この中に赤ちゃんの姿はまだ見えません。
妊娠5週後半から胎芽が見えてきます
妊娠5週後半ごろになると、大きくなった胎嚢の中にごく小さな「胎芽」(妊娠10週未満の赤ちゃんのこと)が見られるようになってきます。妊娠6週前後になると、胎芽はさらにはっきりと見えるようになり、心拍確認もできるようになります。
妊娠7週以降に頭と体の区別ができ始めます
妊娠7週を過ぎると、胎芽はどんどん大きくなって細長くなり、頭側は丸く、おしりの方は細長く見えてきて、体の中に心臓が脈打っているのが見えるようになります。日が経つにつれてだんだん頭と体の間はくびれていき、より区別できるようになってきます。
妊娠8週からは手足が見えるように
妊娠8週ごろには、頭と胴体だけでなく、手足がついているのも見えるようになります。赤ちゃんによっては頭や腰を振っているのがわかることもあります。
その後、手足は長くなり体の動きも見られるようになってきます。
経腹超音波検査は妊娠中期から
妊娠中期からは、ママのお腹にプローブをあてて赤ちゃんの状態を見る「経腹超音波検査」が行われるようになります。
経腟超音波検査に比べて広い角度から赤ちゃんを見られるようになるので、より赤ちゃんらしい姿になっていく様子が確認できることでしょう。
経腹超音波検査を通して、赤ちゃんのおおよその体重を推定したり、赤ちゃんの体の構造をチェックしたり、羊水量、胎盤の位置などを確認します。
病院によっては、赤ちゃんの姿が立体的に見られる「3D超音波検査」、赤ちゃんの立体的な映像が見られる「4D超音波検査」が行われていることもあります。かかりつけの産婦人科ではどんな超音波検査が受けられるのか確認してみてくださいね。
なお、エコー写真の見方についてくわしくは、下記の記事を参照してください。
補助券をいつから使えるか早めにチェック
妊婦健診は、ママと赤ちゃんの健康を守るために大切なものです。
そのため、あらゆる妊婦さんが受診できるように、自治体ごとに妊婦健診費用の助成制度が設けられています。
妊婦健診の助成制度についてチェックしておきましょう。
母子手帳と一緒に妊婦健康診査費用補助券を受け取る
産婦人科で妊娠したと診断されたら、「妊娠届出書」を書いて、住んでいる地域の保健センター、市区役所、町村役場などに提出しましょう。なお、自治体によっては医師が書いた「妊娠届」も必要となることがあります。
「妊娠届出書」を出すと、母子健康手帳をもらえます。
多くの自治体では、母子手帳と一緒に妊婦健診の受診券や補助券が渡されます。
なお、母子手帳を受け取る時期が遅くなると、妊婦健診の受診券や補助券の受け取りが間に合わず、妊娠初期の妊婦健診が全額自費となってしまうことがあります。
予定日が決まったら、すぐに受診券や補助券をもらっておきましょう。
補助券による助成の範囲
妊婦健診の費用をどのくらい補助してもらえるかは、自治体ごとに違います。
厚生労働省では、妊婦健診のうち少なくとも14回分は、公費で負担するように各自治体に通知しており[*3]、受診票にある検査項目については費用がかからないはずです。
ただし、受診票の補助は一部分だけなので、追加の診察料を支払ったり、状況により別の検査などが必要だったりした場合は、その費用を負担する必要はあります[*4]。
妊婦健診は本来、自費の検査なため、助成の範囲を超えると自己負担となりますが、赤ちゃんとママの健康のために、すべての妊婦健診を受けるように心がけてくださいね。
まとめ
妊婦健診は、妊娠中の女性とお腹の赤ちゃんの健康を確認するためのものです。妊娠中の悩みや疑問にも答えてもらえます。
初診~妊娠11週まではだいたい3回くらい、妊娠12週~23週までは4週間に1回、妊娠24週~35週までは2週間に1回、妊娠36週~出産までは週1回受けるのが基本です。超音波検査でお腹の中の赤ちゃんの様子を見ることもできるので、必ず受けるようにしましょう。
なお、自治体から妊婦健診の受診券や補助券がもらえるので、妊娠がわかったら自治体に妊娠届を出して、母子手帳とともに受け取りましょう。
(文:大崎典子/監修:太田寛先生)
※画像はイメージです
[*1]「産婦人科診療ガイドライン 産科編2020」日本産婦人科学会・日本産婦人科医会
[*2]「すこやかな妊娠と出産のために」厚生労働省
[*3]「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」(平成27年3月31日厚生労働省告示第226号)
[*4]東京都福祉保健局 2 妊婦健康診査の検査費用
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます