山芋を食べ過ぎるとどうなる?リスクはある? 適量や注意点を解説【管理栄養士監修】
「とろろ」として食べることが多い山芋。ご飯やそばと一緒に食べるとおいしいですよね。スルスルっと喉越しがよく、いくらでも食べられそうですが、食べ過ぎると私たちの体に影響はあるのでしょうか? 食べ過ぎのリスクと適量を解説します。
そもそも山芋とは?長芋と同じ?
じゃがいもや里芋などとは違って生で食べることが多い山芋。長芋と言ったりもしますが、山芋と長芋はそもそも同じものなのでしょうか?
長芋は山芋の一種
山芋は「ヤマノイモ」の別名です。日本原産の自然薯(じねんじょ)、こぶしのような形をした大和芋(やまといも)、円筒型をした長芋(ながいも)、イチョウの葉のような形をしたいちょう芋などがあります。形や産地によって呼び名が違いますが、どれも山芋の仲間です。
違いとしては、自然薯、大和芋は粘り気が強いのに対し、長芋は水分が多く粘り気は少ないことが挙げられます。一年中出回っていますが、秋から冬に旬を迎えます。
山芋に含まれる栄養素とメリット
山芋にはからだに嬉しい栄養素が豊富です。どのような特徴があるのでしょうか。
カリウム|塩分の摂り過ぎを抑える
山芋に多く含まれる栄養素のひとつがカリウムです。カリウムには体内の過剰なナトリウム(塩分)を排出する機能があるため、高血圧の予防などが期待できます[*1]。塩分を摂り過ぎるとむくみも起こりやすくなるため、むくみやすい人にもカリウムは良いといえます。
山芋の種類によって多少の差はありますが、たとえば、長芋100gあたり430mg含まれています[*2]。 カリウムが豊富な食材としてバナナをイメージする人も多いかと思いますが、バナナ100gあたりのカリウムは360mg。長芋にはバナナ以上のカリウムが含まれているのですね。
食物繊維|便通を整える
山芋には食物繊維も含まれています。食物繊維には水溶性と不溶性がありますが、水溶性食物繊維は便を柔らかくし、不溶性食物繊維は便のかさを増やすので、便通を良くする効果が期待できます。
長芋には、100gあたり水溶性食物繊維が0.2g、不溶性食物繊維が0.8g含まれています[*2]。また、水分量の違いにもよりますが、やまと芋には水溶性食物繊維0.7g、不溶性食物繊維1.8g、自然薯には水溶性食物繊維0.6g、不溶性食物繊維1.4gと、よりバランスよく含まれています。手に入りやすいのは長芋ですが、やまと芋や自然薯も、店頭で見かけたら手に取ってみるとよいですね。
ビタミンB1|糖質の代謝に不可欠
山芋にはビタミンB1などのビタミンB群が含まれるのも特徴です。ビタミンB1は糖質の代謝に不可欠な栄養素であり、食べ物から摂取した糖質をうまくエネルギーに変換するために大切な働きをします。肉や魚に多いですが、不足しないよう色々な食品から摂りたいですね。
山芋は低カロリー食材
手に入りやすい長芋の場合、100gあたりで64kcalです。小鉢などで食べる場合はだいたい70g、多くても100gなので、1食あたりで考えてもカロリーはそれほど高くないといえるでしょう。
山芋を食べ過ぎるとどうなる?
生でもさっぱりと食べられる山芋はつい食べ過ぎてしまうこともあるかもしれません。特にとろろにするとのど越しが良いので、たくさん食べてしまいがちですが、食べ過ぎるとどんなデメリットがあるのでしょうか。
腹痛や便秘を起こすリスク
山芋に限ったことではありませんが、一度にたくさん食べると消化に負担がかかり、腹痛を引き起こす可能性があります。
また、山芋に含まれる食物繊維は適量であれば便通の改善によいですが、摂り過ぎると逆に悪化させる場合もあります。特に長芋は不溶性食物繊維が多めですが、不溶性食物繊維は摂り過ぎると便を硬くしてしまうので、かえって便秘になるかもしれません。
アレルギー症状が出る可能性
山芋の食物アレルギー(※)を持っていなくても、山芋を食べて口の中や周りがかゆくなったり、じんましんが出たり、稀に下痢や嘔吐といった症状が出ることがあります。これは山芋のアクに多く含まれるコリン(仮性アレルゲン)が原因です[*3]。コリンをたくさん摂取することで症状が出ると考えられます。
仮性アレルゲンの場合は、食べる量や頻度を控える、アク抜きをしっかりする、加熱するなどの対策で症状が出るのを防ぐことができます。
ただし、食物アレルギーの症状とよく似ており、仮性アレルゲンによるものなのか、食物アレルギーなのかを判別することは困難です。もし激しい症状が出た場合は食べるのをやめ、医療機関を受診することをおすすめします。
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※山芋は食物アレルギーを発症する可能性のある食品として「特定原材料に準ずるもの」21品目のうちに数えられています。
のど越しの良いとろろは要注意
山芋をすりおろしたとろろはのど越しがよく、食べやすいですよね。ご飯にかけるのが好きな人もいるでしょう。しかし、食べやすいために、早食いや食べ過ぎにつながりやすいとも言えます。とろろだけであればカロリーの摂り過ぎにはなりにくいですが、とろろと一緒にご飯もたくさん食べてしまうのは要注意です。
あらかじめ量を決めてからすりおろしたり、麦や雑穀を混ぜたご飯にする、よく噛んで食べるなどの工夫をすると、食べ過ぎの防止によいでしょう。
また、とろろにせずに千切りにして海苔と醤油で食べると、シャキシャキとした食感が楽しめますよ。
山芋の1日の適量は?
では、山芋は1日にどのくらいを適量とすればよいのでしょうか。
適量の目安|1日100g程度
山芋は主食、主菜、副菜の中で考えると、副菜に分類することができます。食事バランスガイドを参考にすると、成人の場合、副菜の量は1日に5~6皿分が目安です[*4]。
仮に1日の副菜をすべて山芋で摂るとすると、350~400g程度となり、およそ1/2本を食べることになります。しかし、そうすると摂取する栄養素の偏りが心配となります。たとえばビタミンCやカロテンはほかの野菜と比べると少ないため、不足する可能性が出てきます[*2]。
山芋は過剰摂取のリスクのある栄養素も少なく、毎日食べても害はありませんが、栄養バランスの観点から1日に食べる量は100g程度にとどめ、山芋ばかりではなく他の食材も食べるようにしましょう。
その他の芋類などの食べ過ぎはこちら!
<芋類>
▶じゃがいも ▶さつまいも ▶ヤーコン
<野菜など>
▶野菜 ▶トマト ▶玉ねぎ ▶キャベツ ▶ブロッコリー ▶人参 ▶ほうれん草 ▶きゅうり ▶大根 ▶ビーツ ▶かぼちゃ ▶セロリ ▶ニラ ▶ゴーヤ ▶おかひじき ▶春菊 ▶もずく ▶オクラ ▶もやし ▶ルッコラ ▶枝豆 ▶たけのこ ▶アボカド
<きのこ類>
▶きのこ ▶しいたけ ▶きくらげ
山芋で手がかゆくなるのはどうして?
山芋の食べ過ぎのリスクについて見てきましたが、食べ過ぎ以外に山芋で気になるのが、手のかゆみではないでしょうか。これには仮性アレルゲンとは異なる成分が関係しています。
シュウ酸カルシウムが原因
山芋をすりおろしたり、切っていると手がかゆくなることがあります。これは山芋に含まれるシュウ酸カルシウムのしわざです。シュウ酸カルシウムは針状の結晶の形をしているため、山芋をすりおろすことで飛び出した結晶が皮膚に刺さり、かゆみが生じるのです。
冷凍してからすりおろすと針状の結晶が折れるため、皮膚に刺さりにくくなりかゆみが抑えられます。手で持つ部分をラップやキッチンペーパーで巻いてからすりおろすのもよいですね。
まとめ
食物繊維やカリウムなどの栄養を含む山芋は体に嬉しい食材です。ただし食べ過ぎには注意しましょう。一度にたくさん食べると、稀にアレルギーのような症状が出ることも。山芋に偏らず、色々な食材から栄養素を取り入れると良いですね。かゆみ対策としては冷凍してからすりおろしたり、加熱して食べることをおすすめします。
(文:村上あゆみ 先生/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省:日本人の食事摂取基準2020年版
[*2]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*3]海老澤元宏『食物アレルギーの栄養指導』医歯薬出版, 2012年
[*4]農林水産省:「食事バランスガイド」の適量と料理区分
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます