さつまいもを食べ過ぎると太る?便秘になる?1日何本まで?栄養の効果も【管理栄養士監修】
最近、専門店なども増えていて人気が高まっているさつまいも。特に焼き芋は甘味が強くておいしいため、つい1本、2本と食べてしまうこともあるでしょう。これは食べ過ぎなのでしょうか。さつまいもの適量や栄養の特徴について解説します。
さつまいもを食べ過ぎるとどうなる?
さつまいもは形や色などの違う種類がたくさんあり、世界には4,000種類あると言われています[*1]。ここでは一般的に日本で生産、販売されているものでご説明しましょう。
腹痛や下痢、便秘のリスク
さつまいもに限ったことではありませんが、おいしいからといって食べ過ぎると腹痛になったり、下痢を引き起こしたりすることが考えられます。
また、さつまいもは食物繊維が豊富な食べ物です。食物繊維は腸内細菌のエサになったり、便のかさを増やしたりして排便を促してくれるので、基本的には腸の健康に役立つ栄養素ですが、一度に大量に摂取すると、排便のリズムが乱れ、かえって下痢や便秘を招く恐れもあります。便秘解消のためにさつまいもを食べるとはいっても、極端な量を食べることは避けた方がよいですね。
糖尿病の場合は食べ過ぎに注意
さつまいもは糖質が多く含まれるため、ご飯などと同様、食べると血糖値が上がります。しかし、その上昇は比較的ゆるやかであると考えられます。その理由は、血糖値の上昇を抑制する作用のある食物繊維がさつまいもには含まれるためです[*2]。
もっとも、食物繊維はあくまでも上昇を抑制するだけであり、さつまいもを食べて血糖値が上がることに変わりはありません。糖尿病にかかっていたり、健診などで血糖値が高めと言われている人は食べ過ぎに注意する必要があります。
糖尿病の場合のさつまいもの取り入れ方
糖尿病の場合、甘いお菓子の代わりにさつまいもを食べることはとても有効です。甘いものを食べたい気持ちを満足させつつ、お菓子よりも血糖値の上昇を穏やかにすることができるでしょう。加えて、一度にたくさん食べずになるべく分けて食べる、早食いに注意する、他の野菜も一緒に食べるなど、なるべく血糖値の上昇が抑えられるよう、できる工夫を組み合わせることが大切です。
太るリスクは?
さつまいもに限らず、どんな食べ物もたくさん食べればその分、その食べ物から摂取するカロリーは増えますが、その結果として太るかどうかはトータルのカロリー摂取量によるため、他のものをどのくらい食べているか、さつまいもを食べる分どんな食べ物を減らしたのか、なども関係してきます。
蒸したさつまいものカロリーは100gあたり131kcalです[*3]。さつまいも1本の重さは大きさによってばらつきがありますが、中サイズ200gとすると、1本で約260kcalとなり、ご飯1杯分くらいになります。それまでの食事の量を減らさずにさつまいもを何本も追加で食べれば、さつまいもで太ることになるでしょう。
間食としてさつまいもを食べるなら、適量を意識することが必要ですね。
ダイエットには向いている?
さつまいもの取り入れ方によっては、ダイエットに役立てることも可能です。脂質や糖質を豊富に含むお菓子と比べれば、さつまいもは重量当たりのカロリーが低いため、今まで食べていたお菓子をさつまいもに変更してみるのは有効でしょう。仮に板チョコ1枚を小ぶりの焼き芋に変えるとすると、カロリーを約半分に減らすことができます。
板チョコ1枚(50g) 約280kcal
小ぶりの焼き芋(100g) 151kcal[*3]
ダイエットしたいと思ってさつまいもを食べる場合、さつまいもだけを食べるのではなく、肉・魚などのたんぱく質や野菜類もしっかり食べましょう。
さつまいもはいろいろな食べ方ができますが、ペーストにして食べるときに生クリームを加えたり、つい、アイスクリームを添えたりしていないかも気を付けるといいですね。
1日にどのくらい食べてもいい?
バランスの良い食生活の中で適量をうまく取り入れていきたいさつまいもですが、1日の目安量はどのくらいなのでしょうか?
副菜として食べる場合|100g程度
食品ごとの1日の摂取量の目安を示しているのが農林水産省の「食事バランスガイド」です。さつまいもはおかずとして考えるか、主食として考えるかが難しいですが、食事バランスガイドでは「副菜」として野菜と同等に考えられています[*4]。
副菜は1日350~420gくらいを摂ることが推奨されていますが、だいたい120g以上は緑黄色野菜で摂り、残りのうち半分は淡色野菜では摂りたいため、芋類は100g程度にしておくと、ほどよいバランスといえるでしょう。
主食として食べる場合|100~200g程度
沖縄県版の「食事バランスガイド」では全国版と異なり、さつまいもは主食に分類されています。これはさつまいもを主食とする食文化によるものでしょう。
ご飯小盛り1杯分とさつまいも100gが同じ1つ分となっており、主食の料理例の1つとして「焼き芋=2単位(200g)」が挙げられています[*5]。うどんなどの麺類1つ分などと同等となっているので、さつまいもを主食として考えるなら、「さつまいも1本(約200g)=うどん1杯」というのが目安になるでしょう。
おやつに焼き芋などをペロッと1本食べてしまったという場合は、3食のどこかの主食を減らしてみると考えるといいかもしれませんね。
その他の芋類などの食べ過ぎはこちら!
<芋類>
▶じゃがいも ▶山芋 ▶ヤーコン
<野菜など>
▶野菜 ▶トマト ▶玉ねぎ ▶キャベツ ▶ブロッコリー ▶人参 ▶ほうれん草 ▶きゅうり ▶大根 ▶ビーツ ▶かぼちゃ ▶セロリ ▶ニラ ▶ゴーヤ ▶おかひじき ▶春菊 ▶もずく ▶オクラ ▶もやし ▶ルッコラ ▶枝豆 ▶たけのこ ▶アボカド
<きのこ類>
▶きのこ ▶しいたけ ▶きくらげ
さつまいもの栄養の特徴とメリット
さつまいもは過剰に食べなければ問題がない食品です。おいしくしっかり食べていきたいですね。さつまいもには体に嬉しい栄養素もさまざまに含まれます。
加熱によって甘くなる糖質
さつまいもは焼き芋にするととても甘いですよね。これはさつまいもの糖質が加熱により変化することが関係しています。さつまいもに含まれる糖質はほとんどがでんぷんであり、でんぷんには甘味がありません。しかし、加熱することで甘味をもつ麦芽糖に変わっていくのです。
<さつまいもの糖質の変化>[*3]
さつまいも(生) でんぷん24.5g 麦芽糖0.1g
さつまいも(蒸し) でんぷん17.5g 麦芽糖9.2g
さつまいも(焼き) でんぷん13.1g 麦芽糖15.8g
生の状態と比べると、焼き芋では麦芽糖の量が大幅に増えていることがわかりますね。
熱に強いビタミンC
ビタミンCは熱に弱いといわれますが、生のさつまいもには100gあたり29mg、蒸したさつまいもでも28mgのビタミンCが含まれており[*3]、ほとんど損失がありません。
ビタミンCは一度にたくさん摂るよりもこまめに少しずつ摂るほうが尿に排出されにくく、体内で効果的に使われます。さつまいも以外にも、いろいろな野菜、果物から摂っていけるといいでしょう。
便秘によい食物繊維
生のさつまいも100gには水溶性食物繊維が0.6g、不溶性食物繊維が1.6g含まれ、水溶性と不溶性が比較的バランスよく含まれています[*3]。不溶性食物繊維は便のカサを増やす働きがあり、水溶性食物繊維は便を軟らかくして便の動きをスムーズにする作用があるので、便秘のときなどは、さつまいもを適度に食べるといいかもしれませんね。
カリウムが豊富
カリウムは体内の塩分量を調整する働きがあるため、むくみや高血圧の予防に役立ちます。さつまいもはカリウムが豊富な食品の1つであり、カリウムは生のさつまいも(皮なし)100gに480mg含まれています[*3]。蒸したり焼いたりしてもほとんど変わりません。
ただし、カリウムは水溶性ビタミンのため、茹でた場合には流出が考えられます。カリウムをしっかり摂りたい場合は茹で水を捨てずに、味噌汁のベースに使ったりするとよいでしょう。
腎臓の病気があり、カリウムを摂らないようにしている場合は、さつまいもは茹でてから食べるのがよいといえますね。
さつまいもを食べるときのポイント
さつまいもは秋が旬ですが、保存を適切にすれば日持ちするため、季節問わず食べられます。最後に、おいしくさつまいもをあじわうために知っておきたいポイントをお伝えします。
さつまいもの選び方
皮の色にムラがなく色が均一で、ハリがあるものがいいでしょう。切り口に蜜が染み出ているものは甘い証拠ですので、切り口を見るのもおすすめです[*1]。
さつまいもの保存方法
さつまいもは寒さに弱いので冷蔵庫には入れず、新聞紙などで包み冷暗所で保存するようにしましょう[*1]。加熱したものはラップなどをして冷凍庫に保存することもできます。離乳食やお菓子などに使うさつまいものペーストを作ったときは、ジッパーつきの袋に入れて平らにし、冷凍するのもいいでしょう。
アク抜きの方法
さつまいもにはアクが含まれるので、切ったらすぐに10分ほど水につけて、アク抜きをしましょう。そうすることで黒く変色せず、きれいな色に仕上がります。
生でも食べられる?
さつまいもは加熱をしたほうが甘くておいしいですが、生でも食べることができます。ただし、消化しにくく、腹痛や下痢になることもあるため、少量にしておくといいでしょう。
焼き芋の作り方
さつまいもは長時間加熱することで甘さが引き出されるため、焼き芋を作るときはなるべく長時間加熱するのがおすすめです。
■トースター焼き芋■
① さつまいもは皮をよく洗い、水が少しついたままアルミホイルに包む
② トースターで約15分ほど焼く
③ いったんトースターをとめて、20分ほど庫内においておく
④ 再度トースターで約15分ほど焼く
*加熱時間はさつまいもの大きさなどによっても異なるため、竹串などを通して中まで軟らかくなっているか確認してください
まとめ
さつまいもは主食にも野菜の代わりにも、おやつの代わりにもなる万能食材ですね。食物繊維やカリウムなども摂ることができます。何かの効果を期待してたくさん食べるよりも、日々の暮らしの中で、さつまいもの味噌汁や焼き芋などをほどよく取り入れていっていきましょう。
(文・監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]北陸農政局:今月の園芸特産作物:12月「さつまいも」
[*2]厚生労働省:e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
[*3]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*4]農林水産省:食事バランスガイドについて
[*5]沖縄県:食事バランスガイド 沖縄版
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます