じゃがいもを食べ過ぎたら下痢になる?食中毒のリスクと栄養の特徴【管理栄養士監修】
加熱するとほくほくして甘みも出るじゃがいも。煮たり、焼いたり、蒸したり、揚げたり、どんな調理でも美味しくなるからこそ、ついたくさん食べてしまうことはありませんか? とても身近な食材ですが、食べ過ぎても体に影響はないのでしょうか? じゃがいもの栄養と1日の目安量、また、知っておきたい注意点をお伝えします。
じゃがいもの栄養とは?
とても身近な食材であるじゃがいもですが、どのような栄養が含まれているのか、ご存じでしょうか。食べ過ぎのリスクの前に、まずは栄養素の特徴をみていきましょう。
主な成分は糖質
じゃがいもの主な栄養成分は糖質です。そのほとんどがでんぷんとなっており、でんぷん以外の糖質としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖がわずかに含まれます。
ちなみに、さつまいもなど、熱を加えるとでんぷんが他の糖質に変化するものもありますが、じゃがいもの場合、加熱調理をしてもほとんど糖質の状態に変化はありません[*1]。
GI値は調理により異なる
糖質を含む食べ物を摂取すると血糖値が上がります。GI値とは食品の血糖値の上昇しやすさを表した数値で、70以上の食品を「高GI値食品」、56~69の食品を「中等度GI値食品」、55以下の食品を「低GI値食品」と定義しています。数値が小さいほど血糖値の上昇がゆるやかです。じゃがいものGI値は以下のようになります。
●じゃがいものGI値●
じゃがいも(塩ゆで)24
じゃがいも(白、ゆで)55
じゃがいも(蒸し)62
じゃがいも(30分焼き)78
調理方法や試験方法などによってもばらつきがあり、はっきりとはいえませんが、ゆでると比較的GI値が低く、水分を使わない調理方法ではGI値は高めになっていると言えるでしょう[*2]。GI値だけで判断するのは難しいですが、糖尿病などの場合は焼きじゃが(ベイクドポテト)やふかし芋は、一度にたくさん食べずに回数を分けて食べるといいですね。
食物繊維のバランスがよい
じゃがいもには食物繊維が豊富です。生のじゃがいも100gには水溶性食物繊維が0.4g、不溶性食物繊維が0.8g含まれ、水溶性と不溶性のバランスはいいと言えるでしょう[*1]。不溶性食物繊維は便のかさ増やし、水溶性食物繊維は便を軟らかくして排便を促す作用があります。便秘のときなどには適度に食べるといいかもしれません。
ビタミンCを含む
電子レンジ加熱のじゃがいも100gにはビタミンCが23mg、揚げたじゃがいも100gには16mgが含まれます[*1]。特に豊富という量ではありませんが、ビタミンCは一度にたくさん摂るよりも、こまめに少しずつ摂る方が尿に排出されにくく、体内で有効に使うことができます。じゃがいもやその他の野菜、果物などいろいろな食べ物から摂っていけるといいでしょう。
カリウムが豊富
カリウムは体内の塩分濃度を調節する作用をもち、摂り過ぎた塩分の排出をうながしてくれるミネラルです。じゃがいも(電子レンジ調理・皮なし)には100gあたり430mgと豊富に含まれています[*1]。蒸してもほとんど量は変わりませんが、カリウムは水溶性のため、水分を使って煮たりする場合は減ることが考えられます。
カリウムをしっかり摂りたい場合は、蒸したり電子レンジ調理にするか、汁物にするならスープを飲むと溶け出したカリウムを無駄なく摂取できます。反対に、腎臓の疾患などがありカリウムを摂りたくない場合は、じゃがいもは茹でこぼしてから調理に使うとよいですね。
じゃがいもを食べ過ぎるとどうなる?
じゃがいもは糖質だけでなく、ビタミンCやカリウムなども含まれることがわかりました。日常的に取り入れたいところですが、食べ過ぎてしまった場合に心配なことはあるのでしょうか?
多少の食べ過ぎは問題ない
じゃがいもは過剰症のリスクのある栄養素は多く含まれないため、多少、食べ過ぎる分には問題のない食品です。じゃがいもを食べ過ぎて健康障害につながってしまう心配は低いでしょう。
食べ過ぎのリスクは1つの食べ物が原因となるよりも、他の食品も関係して生じやすいです。じゃがいも以外の食品もさまざまな種類を食べられているか、毎日じゃがいもばかりになっていないかなどを意識すると、食べ過ぎを防ぐことができますよ。
調理法や味付けで太ることも
蒸したじゃがいも(皮なし)は100gあたり76kcalです[*1]。同じ量のご飯が156kcalであるのと比べると、特にカロリーが多くて太りやすい食材であるとは言えないでしょう。ただし、油を使ったフライドポテトになると100gで159kcalと、蒸した場合と比べて倍以上のカロリーになります。
また、ふかし芋にマヨネーズやバターをつけてたくさん食べれば、やはりカロリーの摂り過ぎになりやすいでしょう。なお、マヨネーズは大さじ1で約80kcal、バター10gで約70kcalあります。
これは、じゃがいも自体が太りやすいという意味ではなく、油を使っているためということですね。
じゃがいもは1日どのくらい食べてもいい?
食べ過ぎによるリスクは低いですが、食べる量の目安が欲しいという人もいるでしょう。じゃがいもの1日の適量はどのくらいなのでしょうか?
野菜として食べる場合|1日100g程度
食事バランスガイドでは、じゃがいもなどの芋類は野菜と同等に考えられ、副菜に分類されています。副菜の目安が1日350~420gくらいなので[*4]、じゃがいもとほかの野菜と合わせてこの量を目指すとよいでしょう。このうち、緑黄色野菜を120g以上は摂りたいので、芋類であまり摂り過ぎてしまわないよう、じゃがいもは100g程度にしておくと、ちょうどいいバランスとなります。じゃがいも100gの目安は、中くらいのもの1つくらいです。
主食として食べる場合|1日200g程度
じゃがいもは野菜よりも糖質が多めなので、主食として考えるのも1つです。じゃがいもをご飯などの代わりに食べるときには、1日200gくらい(中2個)を目安にし、1食分の主食をじゃがいもにする程度がよいでしょう。
食事バランスガイドでは、主食は1日に5~7単位とるようにとされています。ご飯やパン、麺類などそれぞれ1単位がどのくらいかが決まっていますが、その基準となるのは炭水化物が約40g含まれる量です。じゃがいもは中2個くらい(約200g)で1単位分に相当し、おにぎり1個や食パン1枚などと同等とされています[*1,3]。じゃがいもをたっぷり食べたいときは、このくらいを目安にし、ご飯の代わりにしてもよいでしょう。
あるいは、間食などでふかし芋などでたくさん食べてしまったときに、主食を減らすという考えでもいいかもしれません。
じゃがいもの注意点と保存方法
じゃがいもを食べるときに注意したいことがあります。じゃがいもの芽には毒があると聞いたことのある人は多いかもしれませんが、食中毒を防ぐために知っておきたいポイントをご紹介します。
じゃがいもの天然毒素「ソラニン」
じゃがいもはソラニンやチャコニンという天然毒素を含んでいます。毒素の多いじゃがいもを摂取して吐き気や嘔吐、下痢などの症状が出ることがあります。
どういったじゃがいもに毒素が多いかというと、芽が出たじゃがいもや、皮が緑色になったじゃがいもです。じゃがいもに光が当たったり傷がつくと毒素の量が増えるのですが、光が当たるとじゃがいもは表面が緑色になる性質があるため、変色が見分ける目安になります。(なお、緑色自体は葉緑素の色であり、毒素とは関係ありません。)
毒素はじゃがいもの芽と緑色になった皮に多く、加熱をしても減らないとされているので、そのようなじゃがいもを食べるときは、芽とその周辺をしっかり取り除き、皮は緑の部分がなくなるまで厚めにむくようにしましょう。
ただし、緑色に変色していなくても、じゃがいもは基本的に皮をむいて食べることをおすすめします。じゃがいもは緑色に変色していなくてもソラニンなどの毒素が微量に含まれています。また、品種によっては見た目の変化で判断できないものもあるので、長時間光に当たってしまったと思われるじゃがいもは、念のため皮を厚めにむいてから使うようにしましょう[*4]。
生のじゃがいもは消化に悪い場合も
じゃがいもは加熱して食べることが多いですが、生でも食べられないことはありません。ただし、じゃがいものでんぷんは消化されにくいため、生のままだとうまく消化されず、腹痛を起こしたり、下痢になったりすることがあります。生で食べるのであれば、少量にしておくといいでしょう。また、一度、水にさらすことをおすすめします。じゃがいもを切って水にさらすとでんぷんが流れ出るので、でんぷんを減らすことが可能です。
じゃがいもの選び方
皮は薄くハリがあり、色が均一でしわや傷がなく、手頃な大きさとずっしりと重みや硬さがあり、ふっくらとして形のいいものがいいでしょう[*5]。
じゃがいもの保存方法
じゃがいもは光に当たらないように、暗くて涼しく、通気のいい場所で保存するようにしましょう。新聞紙で包んだりしてもいいですね。
\冷蔵保存をするときの注意点/
切ったじゃがいもはラップで包んだり、ジッパーつきの袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存できますが、低温で保存していると糖分が増え、揚げる・炒めるなど高温で調理したときに有害物質が発生することがあります。冷蔵庫に入れたじゃがいもはなるべく早く使い切るとともに、煮る・蒸すなどの高温になりにくい調理方法で食べるとよいでしょう[*4]。
\冷凍保存するときのポイント/
ゆでたものや煮物など加熱したものは、冷凍保存するとスカスカとしてしまい食感がよくありません。マッシュポテトのようにつぶしてからジッパーつきの袋に入れ、袋を平らにして冷凍するといいでしょう。スープやコロッケ、ポテトサラダ、離乳食などに使えて便利です。
まとめ
じゃがいもは主食にも副菜にもなる万能食材ですね。食物繊維やカリウム、ビタミンなどを摂ることができ、いいおやつにもなります。食べ過ぎによる健康障害のリスクは低いですが、食中毒の心配があるため、きちんと下処理をしてから食べるようにしましょう。たくさん食べて何かの効果を期待するよりも、ほかの食品もしっかり食べながら、適量を取り入れるようにするといいですね。
(文:二橋佳子 先生/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
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[*1]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*2]THE UNIVERSITY OF SYDNEY:Glycemic Index Research and GI News
[*3]農林水産省:食事バランスガイドについて
[*4]農林水産省 :食品中の天然毒素「ソラニン」や「チャコニン」に関する情報
[*5]北陸農政局:今月の園芸特産作物:6月 ばれいしょ
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます