玉ねぎの食べ過ぎにリスクはある?適量の目安や気になる成分の効果を解説【管理栄養士監修】
玉ねぎは幅広いメニューに取り入れて楽しめる野菜です。「血液をサラサラにする」など健康効果も言われているので、たくさん食べれば体によさそうと思ってしまいますが、反対に食べ過ぎの心配はないのでしょうか。玉ねぎを食べ過ぎた場合の体への影響や注意点、1日の適量についてお伝えします。
玉ねぎを食べ過ぎるとどうなる?
玉ねぎは食べ過ぎても特に大きな問題がおきるような食べ物ではないので、安心して食べられます。そのうえで少し気を付けた方がよい点をお伝えします。
胃腸の調子が悪くなる
生の玉ねぎにはアリシン(硫化アリルの一種)という物質が多く含まれます。これは玉ねぎの臭いや辛みのもとになる刺激成分であり[*1]、殺菌作用もあるため、大量に摂取すると胃粘膜などが刺激を受け不快感を感じる可能性があります。消化機能によっては胃もたれや腹痛、下痢、吐き気などの症状に至ることも考えられるため、胃腸が弱い人などは生の玉ねぎをたくさん食べるのは控えた方がよいかもしれませんね。
口臭が強くなる?
玉ねぎの臭いのもととなっているアリシンは、にんにくに含まれる成分としても知られます。にんにくに比べると玉ねぎの臭いはそれほど強くないですよね。玉ねぎによる口臭をそれほど心配する必要はないと思いますが、気になるようであれば、生でなく加熱するのがよいでしょう。じっくり加熱した玉ねぎであれば臭いも消えます。
玉ねぎは1日どのくらい食べてもいい?
玉ねぎを常備野菜の1つにしている家庭もあるでしょう。健康被害のリスクは低いとはいえ、いつも食べている量は大丈夫?と気になるかもしれませんね。
適量の目安|1日1/2個
玉ねぎは通常の食事で使用する量を摂取する場合、日常的に食べてまったく問題のない野菜です。そのため、特に適量というのもありませんが、野菜の摂取のバランスという観点からの目安をお伝えします。
生活習慣病などを予防するための食事の目標の1つに「野菜類を1日350g以上」というものがあり[*2]、緑黄色野菜を120g以上、残りを淡色野菜で摂るのが望ましいとされます。玉ねぎは淡色野菜なので230gを基準に考えてみましょう。バランス面から淡色野菜を3種類摂るとし、玉ねぎは1日70g程度(約1/2個)を目安にするのがおすすめです。
なお、玉ねぎ以外の淡色野菜の代表的なものとしては、キャベツ、白菜、きゅうり、なす、もやし、大根などがあります。
その他の野菜などの食べ過ぎはこちらをチェック!
<野菜など>
▶野菜 ▶トマト ▶キャベツ ▶ブロッコリー ▶人参 ▶ほうれん草 ▶きゅうり ▶大根 ▶ビーツ ▶かぼちゃ ▶セロリ ▶ニラ ▶ゴーヤ ▶おかひじき ▶春菊 ▶もずく ▶オクラ ▶もやし ▶ルッコラ ▶枝豆 ▶たけのこ ▶アボカド
<きのこ類>
▶きのこ ▶しいたけ ▶きくらげ
<芋類>
▶じゃがいも ▶山芋 ▶さつまいも ▶ヤーコン
リスクを減らして美味しく食べるコツ
胃腸の不調や口臭のリスクは、調理方法の工夫で減らすこともできます。リスクが気になる人は、水にさらしたり加熱して食べるのがおすすめです。
生の玉ねぎ|水にさらすと刺激が減る
サラダやタルタルソースなどで生の玉ねぎを使うことがありますよね。玉ねぎを生のまま食べるときには、切ってからしっかり水にさらすとアリシンが溶け出すので、胃腸への刺激を減らして辛みも抜くことができます。
特に小さいお子さんなど玉ねぎの辛みが気になる場合や、サラダで多く使う場合はしっかり水にさらし、ぎゅっともむようにして洗うとよいでしょう。反対に辛みを楽しみたい場合や水溶性ビタミンをしっかり摂りたい場合は、洗わずに食べるといいですね。
炒め玉ねぎ|長時間加熱で甘みが増す
玉ねぎの辛みは水にさらすだけでなく加熱によっても減少します。また、長時間加熱すると甘くなるので、甘みを引き出したい場合は長めに炒めるといいでしょう。じっくり加熱した玉ねぎは「飴色玉ねぎ」とも呼ばれ、うま味がありいろいろな料理のベースにも使えるので、冷凍保存しておいても便利です。
玉ねぎの気になる栄養
ここまで玉ねぎの食べ過ぎのリスクについて見てきましたが、一方で、健康に良いという話も聞きますよね。実際に効果はあるのでしょうか?
ケルセチン|認知機能に効果?
玉ねぎの皮にはフラボノイドの一種であるケルセチンが豊富です。可食部にも含まれますが、それほど多くはありません。玉ねぎの皮以外にもキャベツなどアブラナ科の野菜や、緑茶、ワイン、果物、ハーブなどに含まれます。
ケルセチンの効果について、ラットでの研究では胃の保護作用や血圧の低下、糖尿病性腎症の軽減などの効果が報告されていますが[*3]、これらのヒトでの有効性はまだ確認されていません。ただし、高齢者の認知機能の維持にケルセチンが役立つ可能性を示した報告があります[*4]。
この研究で用いられたのは品種改良によってケルセチンを多く含んでいる玉ねぎの粉末なので、普通の玉ねぎを食べても同様の効果が得られるわけではなく、玉ねぎの皮を食べるのも難しいですが、効果として知っておくのはよいかもしれませんね。
アリシン|血液サラサラ?
玉ねぎは俗に血液をサラサラにする効果があるといわれます。これはアリシンの作用によるものですが、実際のところ、どれだけ食べたら効果が得られるのかなどはわかっていません。また、玉ねぎの血圧を下げる効果についても同様、効果ははっきりしていないといえます。
血行や血圧の改善を期待して玉ねぎを大量に摂るよりも、適量を日々の献立に取り入れるといいですね。たとえば、定番のわかめと麩の味噌汁に玉ねぎを加えるなど、ちょっとしたプラス食材として玉ねぎを利用するのがおすすめです。
妊娠中・授乳中の玉ねぎは?
妊娠中や授乳中は、これは食べても大丈夫なのか、食べ過ぎると赤ちゃんに影響がでるのではないかと心配になったりしますよね。玉ねぎに何か注意は必要なのでしょうか。
玉ねぎは食べても大丈夫
妊娠中・授乳中でも通常の食事で玉ねぎを食べるのはまったく問題ありません。通常の食事というのは1つのものだけを食べ過ぎないという意味です。何かの効果を期待して食べるという食べ方はしないようにしましょう。
玉ねぎは食物繊維も補えるので、いつもの献立に組み込めるといいですね。炒め煮にしておいてトマトソースに使ったりと、料理のベースに活用するのがおすすめです。なお、妊娠中は胃腸の不快感が出やすいので、生玉ねぎで違和感を覚えるようならしっかり水にさらすなど、工夫するとよいでしょう。
サプリメントには注意
普通に玉ねぎを食べるのは問題ありませんが、玉ねぎの成分を凝縮したサプリメントや健康食品は避けるほうがいいでしょう。妊娠中だけでなく授乳中も同様に避けておくと安心です。
まとめ
玉ねぎは季節を問わずに手に入りやすく、料理のバリエーションも多いことから、とても使いやすい食材です。食べ過ぎによる大きなリスクはありませんが、玉ねぎの成分の効果を期待して玉ねぎばかりを食べるのは避け、適量を他の食材とともにバランスよく摂るようにしましょう。
(文・監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]武政三男:80のスパイス辞典,フレグランスジャーナル社(2001)
[*2]厚生労働省:健康日本21(第二次)
[*3]早藤幸隆ら,タマネギ外皮を用いた広領域型科学実験プログラムの開発研究, Journal for the science of schooling (15), 203-211, 2014-03
[*4]農研機構:(研究成果)タマネギのケルセチンは認知機能維持に役立つ
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます