人参は体に良い?食べ過ぎても大丈夫?栄養の特徴と食べ過ぎのデメリット【管理栄養士監修】
人参(にんじん)は栄養が豊富な緑黄色野菜の1つなので、積極的に摂り入れたい食品です。そのため、たくさん食べて健康に役立てたいと考える人もいるでしょう。しかし、いくら栄養のメリットがあるといっても人参ばかり食べることには心配な面もあります。人参に含まれる栄養素や食べ過ぎによるデメリットについて解説します。
人参に含まれる栄養素とメリット
緑黄色野菜である人参は栄養価が高く大変おすすめの野菜です。どのような栄養素が含まれるか見てみましょう。
βカロテン|目や皮膚の健康を保つ
にんじんのオレンジ色はβカロテン由来の色で、野菜の中でもβカロテンの含有量が多いことが特徴です[*1] 。
βカロテンはビタミンの一種であり、体内でビタミンAに変換されてビタミンAと同様の働きをします。ビタミンAは目や皮膚の健康に重要な栄養素ですが、βカロテンを摂取することでもこうした作用が期待できるのです。また、βカロテンなどのカロテノイドはビタミンAとしての作用の他に、抗酸化作用や免疫機能を活発化させる作用があると言われています[*2] 。
食物繊維|水溶性と不溶性の両方を含む
ゆでた人参には水溶性食物繊維が100gあたり0.8g、不溶性食物繊維が2.0g含まれています[*1]。食物繊維といえば便通改善に良いというのをご存じの方も多いでしょう。食物繊維は腸内細菌のエサになって腸内環境をよくしたり、便のカサを増やすのに役立つため、便秘や下痢などに効果があるとされます。
また、このほかにも血糖値の上昇を緩やかにしたり、血中のコレストロール値を下げることから、生活習慣病の予防・改善の効果も期待されています[*3] 。水溶性・不溶性のどちらも摂りたいですが、人参は効率的に両方の食物繊維を摂取することができます。
献立の彩りが良くなるメリットも
栄養面でのメリットもありますが、鮮やかなオレンジ色も人参の大きな特徴ですよね。味噌汁や野菜炒めなどに少し加えるだけで彩りがアップします。見た目が華やかになると食欲も増し、おいしく食べることができますよ。
人参を食べ過ぎたときのリスクとは?
では、人参をたくさん食べてしまうとどうなるのでしょうか? 気になるデメリットについて解説します。
柑皮症になるリスク
人参にはβカロテンが豊富ですが、βカロテンを多量に摂取し続けることで「柑皮症」(かんぴしょう)という、皮膚が橙黄色になる症状が出ることがあります[*4] 。
食材の一部として一般に調理に使用する範囲内の量であれば症状が出る可能性は低いですが、人参だけ極端に多く摂取すると柑皮症になる場合もあるでしょう。βカロテンの摂取を中止すると症状は回復します。
野菜ジュースの摂り過ぎには注意
人参を使った野菜ジュースもよく見かけますよね。ジュースは手軽に人参の栄養を摂ることができます。
しかしながら、野菜ジュースはフルーツとミックスして飲みやすい味に調整されていたりするため、意外と糖質が多く含まれます。人参などの栄養が摂れるからとたくさん飲んでしまうと、糖質を摂り過ぎてしまう可能性も。人参ジュースは嗜好品の1つとして適量取り入れるとよいですね。
なお、人参自体は100gあたり糖質(単糖当量)は5.9g程度なので、人参を食べて糖質の摂り過ぎになることを心配する必要はないでしょう。
ビタミンAの過剰摂取になる?
ビタミンAは摂り過ぎると過剰症が起こってしまう栄養素です。βカロテンがビタミンAに変換されるなら、βカロテンも同様に過剰症のリスクがあるのでは?と思いますよね。
しかし、βカロテンは必要に応じてビタミンAに変換されるという特徴があるため、ビタミンAのように過剰症になる心配はありません[*2]。安心してくださいね。
人参の1日の目安量はどのくらい?
食べ過ぎによる大きな健康障害の心配は低いとはいえ、野菜の摂取が人参に偏ったりするのはよくありません。1日にどのくらいの量が適切なのでしょうか?
人参だけでなく野菜トータルで1日350g以上を目安に
野菜は生活習慣病予防の観点から1日に350g以上摂取することが推奨されています[*5]。人参は野菜の中でも抗酸化性を持つβカロテンやその他ビタミン類を多く含む緑黄色野菜なので[*6] 、食生活に取り入れることが望まれます。
ただ、人参だけで350g以上を摂っても良いということではありません。そうすると柑皮症のリスクだけでなく、他の野菜に含まれる栄養素を摂取することができないためです。
あくまでも人参は野菜の1つとして考えて、他の野菜も組み合わせて摂れると良いですね。ちなみに人参1本でだいたい150~200gです。
その他の野菜の食べ過ぎについて知りたい方はこちら
<野菜など>
▶野菜 ▶トマト ▶玉ねぎ ▶キャベツ ▶ブロッコリー ▶ほうれん草 ▶きゅうり ▶大根 ▶ビーツ ▶かぼちゃ ▶セロリ ▶ニラ ▶ゴーヤ ▶おかひじき ▶春菊 ▶もずく ▶オクラ ▶もやし ▶ルッコラ ▶枝豆 ▶たけのこ ▶アボカド
<きのこ類>
▶きのこ ▶しいたけ ▶きくらげ
<芋類>
▶じゃがいも ▶山芋 ▶さつまいも ▶ヤーコン
まとめ
人参はビタミン類や食物繊維が摂れ、食卓を彩り豊にしてくれるメリットがある野菜です。しかし、食べ過ぎてしまうことでデメリットも生じてきます。毎日摂取する野菜の中の1つとして適度に取り入れ、メリットを最大限に活かせるようにしたいですね。
(文:奥野由 先生/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*2]厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)
[*3]厚生労働省:e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」
[*4]厚生労働省:eJIM「ビタミンA」
[*5]厚生労働省:e-ヘルスネット「野菜、食べていますか?」
[*6]厚生労働省:e-ヘルスネット「緑黄色野菜」
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます