春菊の食べ過ぎは体に悪い?適量はどのくらい?豊富な栄養とその効果も【管理栄養士監修】
香りのよい春菊は鍋に入れるとおいしいですよね。好きな方はついたくさん食べてしまうこともあるかと思いますが、食べ過ぎによる体への影響も気になるところ。春菊には何かリスクがあるのでしょうか? 何gくらいが適量なのか、効能はどうなのか、おすすめの食べ方や保存方法なども一緒にご紹介します。
春菊にはどんな栄養成分が含まれる?
香りの強い春菊は人によって好みが分かれやすい野菜ともいえますが、旬の時期には鍋などに入れて毎日のように食べてる方もいらっしゃるかもしれませんね。実は栄養がとてもたくさん含まれている野菜です。詳しく解説いたします。
β-カロテンが豊富|ほうれん草と同等
春菊は野菜の中でもβ-カロテンの量がトップクラスであり、なんと4,500μgも含まれます[*1]。これは、ほうれん草と同じ程度です。
ほうれん草が「緑黄色野菜」であることはご存じかと思いますが、100g中にβ-カロテンを600μg以上を含むものを緑黄色野菜と呼びます。この条件からも、春菊のβ-カロテン量はかなり多いことがわかりますね。
β-カロテンは抗酸化作用があるほか、体内で適宜、ビタミンAに変換されるという特性があります。ビタミンAは肝臓に多く貯蔵されていて、足りなくなると補われるため、ほとんど欠乏しないとされていますが[*2]、皮膚や目の粘膜の状態を保つ作用などがあるので、気になるときにはβ-カロテンの多い野菜の摂取を意識してみるのもよいですね。
ビタミンK|野菜の中では多い
ビタミンKは血液凝固に関係するビタミンです。特に納豆に多いことで知られますが、茹でた春菊50gにはビタミンKが230μg含まれており、納豆1パック(40g)と同じくらいです[*1]。
日本人は納豆からビタミンKを摂取している人が多いと考えられ、納豆を食べる習慣のある人と食べない人で摂取量に差がでるビタミンでもあります[*3]。もっとも、納豆を食べていなくても明らかな健康障害が生じるわけではありません。ビタミンKは体内でも合成されるため、不足することはまれです。
そのため、「納豆は嫌いだから春菊をたくさん食べてビタミンKを摂らなくちゃ」と考える必要はありません。ビタミンは色々な種類を摂れるのが理想的なので、春菊もほどよく取り入れるのがよいですね。
カルシウム|牛乳並みの含有量
カルシウムの摂取源としてまず牛乳が思い浮かぶと思いますが、春菊はなんと牛乳とほぼ同じくらいのカルシウムが含まれています(100gあたり、生の春菊:120mg、牛乳:110mg、茹でた春菊:60mg[*2])。茹でると減ってしまいますが、かさが減ることで量が食べられるので、カルシウム摂取の心強い味方といえます。日本人はカルシウムの摂取量が不足気味なので、乳製品以外からも摂取していけるとよいでしょう。
ビタミンC|補給源の1つに
春菊にはビタミンCも含まれます。ただし、豊富というわけではなく、生の状態でも100gあたり19mgと、赤ピーマン(パプリカ)100gに含まれる量が170mgであるのと比べると少なめです。
春菊をおもなビタミンCの摂取源とすることは難しいですが、ビタミンやミネラルは1つの食材で摂ろうとしないことが大切です。さまざまな種類の野菜を摂ることで、ビタミンCだけではなくほかの栄養素も多様に摂ることができます。ビタミンCは果物や野菜から摂取できますが、春菊もその1つとして役立つと考えましょう。
食物繊維|キャベツより豊富
春菊は食物繊維が100gあたり3.2gと豊富です[*2]。キャベツの食物繊維の量は1.8gなので、野菜の中でも多めなのがわかりますね。
また、水溶性食物繊維が0.8g、不溶性食物繊維が2.4gと、比較的大きな偏りなくどちらも摂ることができます。水溶性食物繊維は便を軟らかくする作用があり、不溶性食物繊維は便のカサを増やして腸を刺激する作用があることから、スムーズな便通を促す効果があります。便秘や下痢などの便通トラブルを抱えている場合、お腹や便の調子を整えてくれることが期待できるでしょう。
春菊を食べ過ぎたらどうなる?適量は?
春菊は栄養が豊富ですが、たくさん食べてしまうとデメリットはあるのでしょうか?
下痢や消化不良のリスク
春菊だけに限らず、その食品に含まれる栄養素の効果を期待して1品目だけをお腹いっぱいに食べてしまったりすると、消化がうまくいかずに下痢や腹痛をおこしてしまうこともあるでしょう。特に腹痛などを誘発する成分が春菊に含まれているわけではありませんが、過剰な量を摂るのは注意したいものです。
また、春菊には食物繊維が豊富ですが、大量に摂取するとかえって排便のリズムが乱れて下痢や便秘といったトラブルを生むことも考えられます。食物繊維は他の食品からも摂取されるので、食物繊維を摂ろうとして春菊を食べ過ぎるのは控えましょう。
薬の効き目を下げるリスク
ビタミンKは血液の凝固作用があるので、血栓を予防するために血液の流れをよくする薬(ワルファリン)の効き目を低下させる恐れがあります。ワルファリンを服用している場合はビタミンKの多い食品の摂取量に気を付けなければなりません。納豆は特にビタミンKが多いため、服用中は控える必要があります。
納豆と比べて春菊はそこまで注意しなくても大丈夫ですが、たくさん食べるのは避けた方がよいでしょう。ほうれん草など他の緑黄色野菜もビタミンKが含まれるので、同じく食べ過ぎには気を付けてください。
ビタミンAの過剰摂取の心配は
春菊に豊富なβ-カロテンは体内でビタミンAに変換されるとお伝えしましたが、ビタミンAには過剰摂取のリスクがあると聞いたことがある人もいるかもしれません。
確かにビタミンAは体内に蓄積されやすいため、過剰に摂取すると健康障害が生じる懸念があります。しかし、β-カロテンは必要に応じてビタミンAに変えられるため、β-カロテンを多く摂取しても、ビタミンAの過剰摂取につながる心配はありません。安心してくださいね。
なお、ビタミンAの過剰症も通常の食事ではほとんど起こりません。サプリメントを飲んでいる場合や、ビタミンAが特に多いレバーを毎日食べたりしている場合には注意が必要です。
春菊の1日の適量|70~100g程度
野菜は1日に350g以上摂るのがよいとされています。ただし、1種類の野菜で350g以上摂るかたちでもよいということではありません。いろいろな野菜を合計して350g以上となるようにしましょう。春菊もそのうちの1種類として摂りたいので、だいたい1日の野菜量の1/5~1/3となる70~100gが適量と考えるのがおすすめです。
春菊は生で食べても大丈夫?
春菊は鍋物で使うイメージが強いですが、生で食べても特に害はないのでしょうか?
生でもOK|シュウ酸は少ない
苦味のある春菊はアクが強そうですが、えぐみのもとになるシュウ酸はほとんど含まれていません。シュウ酸を含むほうれん草などは茹でてアクを抜きますが、春菊は生でも問題なく食べることができます。
生で食べるメリット|香りが際立つ
春菊は生で食べると独特な香りが際立ちます。苦手な人もいるようですが、好きな人にとってはリラックスにつながるかもしれませんね。春菊の香りを生かすなら生で食べるのがよいでしょう。風味が口の中で広がるのでおすすめです。
春菊の保存方法
春菊は濡らしたキッチンタオルなどで根元をつつんでから、野菜室で立てて保管します。日持ちは約5日ほどです。冬場は冷蔵庫ではなく涼しい場所でも大丈夫でしょう。
冷凍保存したいときは?
春菊を冷凍保存したいときは、茹でずに生のままがおすすめです。洗ったあと水気をしっかりきってからざく切りにし、ジッパー袋などに入れて冷凍しましょう。カットしてから冷凍すると、解凍せずにそのまま炒めたり茹でたりできて便利です。
まとめ
春菊には効果が期待できる栄養素が豊富に含まれています。特に不足しがちなカルシウムが摂れるのは嬉しいですね。しかしながら、体によいからといって春菊ばかりを食べると下痢などを起こすこともあるかもしれません。適量をあまり超えずに食べられるといいですね。毎日たくさん食べるのでなければ、1日や数日、多めに食べるときがあっても問題はないでしょう。他の野菜と組み合わせて、風味を楽しんでくださいね。
(文・監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
その他の野菜などの食べ過ぎはこちら!
<野菜など>
▶野菜 ▶トマト ▶玉ねぎ ▶キャベツ ▶ブロッコリー ▶人参 ▶ほうれん草 ▶きゅうり ▶大根 ▶ビーツ ▶かぼちゃ ▶セロリ ▶ニラ ▶ゴーヤ ▶おかひじき ▶もずく ▶オクラ ▶もやし ▶ルッコラ ▶枝豆 ▶たけのこ ▶アボカド
<きのこ類>
▶きのこ ▶しいたけ ▶きくらげ
<芋類>
▶じゃがいも ▶山芋 ▶さつまいも ▶ヤーコン
[*1]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*2]厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2020年版)
[*3]厚生労働省:健康日本21(第二次)
[*4] 厚生労働省:e-ヘルスネット「食物と薬の相互作用(理論)」
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます