ほうれん草の食べ過ぎで結石になる?シュウ酸を減らす方法と適量の目安【管理栄養士監修】
緑黄色野菜の代表であるほうれん草は栄養豊富ですが、アクがあることでも知られますよね。ほうれん草を食べ過ぎると、このアクの成分が健康に影響するかもしれません。どのような影響があるのでしょうか。リスクを減らす方法や適量の目安とともに解説します。ぜひ参考にしてくださいね。
ほうれん草の栄養のメリット
ほうれん草(ほうれんそう)は栄養豊富なイメージがありますが、どのような栄養があるのでしょうか。具体的にみていきましょう。
メリット① 低カロリー
ほうれん草はその他の野菜同様、カロリーは低めです。茹でたほうれん草をたくさん食べてもカロリーの摂りすぎは問題にはならないでしょう。また、生のほうれん草でも冷凍ほうれん草でも、カロリーはほとんど変わりがありません。
生ほうれん草を茹でたもの…23kcal
冷凍ほうれん草を茹でたもの…26kcal
(100gあたり)[*1]
ただし、注意をしなければいけない点もあります。味付けに使用するドレッシングやタレなどに含まれる油や塩分です。カロリー面でいうと、特にドレッシングは脂質が豊富なのでかけすぎに注意しましょう。
メリット② 非ヘム鉄が豊富
茹でたほうれん草には100gあたり0.9mgの鉄が含まれます。
鉄には肉や魚介に含まれるヘム鉄と、野菜や大豆、卵黄に含まれる非ヘム鉄の2種類がありますが、ほうれん草に含まれるのは非ヘム鉄のほうです。非ヘム鉄はヘム鉄に比べると吸収率が低いという特徴があります。しかし、動物性たんぱく質やビタミンCと一緒に摂ることで吸収率を上げることができます。肉や魚などとともに、ほうれん草などの野菜も摂ると鉄不足の予防により効果的ですね。
鉄が不足すると体に酸素を運んでいる赤血球が減ってしまい、貧血(鉄欠乏貧血)によって集中力の低下や頭痛、食欲不振などの症状が起こりえます。また、疲労感や筋力低下といったことが生じる場合もあるため、色々な食品から鉄を摂り、不足しないように心がけることが大切です。特に女性は月経もあるので意識したいですね。
メリット③ カリウムが豊富
カリウムは水溶性なので、茹でることで減ってしまう栄養素ですが、ほうれん草は茹でた状態でも100gあたり490mgと豊富に含まれています。カリウムは体内の塩分濃度を調節する作用があるため、むくみの予防になったり、高血圧のリスクを抑える効果が期待できます。
ほうれん草の食べ過ぎのリスク
体に良い効果を持つほうれん草ですが、一方で食べ過ぎには注意が必要です。ほうれん草にはシュウ酸と呼ばれる成分が含まれおり、シュウ酸の過剰摂取は健康に悪影響を及ぼす場合があるためです。
シュウ酸の過剰摂取|尿路結石のリスクを高める
シュウ酸は野菜のアクやえぐみのもととなる成分の1つです。シュウ酸を摂り過ぎると尿路結石症のリスクを高めることが知られています。過剰なシュウ酸は尿と一緒に排泄されますが、この尿中のシュウ酸が結石のもとになるためです。
尿路結石の発症にはさまざまな原因が重なり合っていると考えられ、まだ解明されていない部分もありますが、シュウ酸を多く含む食品の過剰摂取はリスクを高める可能性があるので注意が必要でしょう。
<野菜類の100gあたりのシュウ酸量>
ほうれん草…800mg
キャベツ…300mg
ブロッコリー…300mg
レタス…300mg
さつまいも…250mg
なす…200mg[*2]
ほうれん草は食べない方がいい?
他の野菜と比べてもシュウ酸が多いほうれん草。いっそ食べない方がいいのでは?と思うかもしれません。しかし、尿路結石症の予防には偏った食生活をしないことも大切です。近年、尿路結石の発症に肥満の関係も指摘されています[*2]。肥満の予防という意味では野菜をしっかり摂ることも重要なのです。
そのため、尿路結石が心配だからといって野菜が不足したり種類が偏ってしまうのも、かえって体によくありません。まず、シュウ酸の少ない野菜はしっかり摂りましょう。
ほうれん草などのシュウ酸の多い野菜についても、ビタミンやミネラルなどの栄養が豊富に含まれるため、食べ過ぎに注意したり摂り方を工夫して、食生活に取り入れていくのが望ましいといえます。
シュウ酸のリスクを減らす方法
食べ方を工夫することで、ほうれん草などに含まれるシュウ酸を減らすことができます。
■方法①茹でる
シュウ酸は水溶性のため、減らすためには茹でるのが効果的です。茹でたあとに茹で汁は捨てて水気を絞るとシュウ酸は半分くらいになります。
なお、電子レンジだとシュウ酸がうまく溶け出さず、残ってしまう可能性があります[*3]。えぐみにもつながるので茹でるのがおすすめです。
■方法②カルシウムと一緒に摂る
シュウ酸をカルシウムと一緒に摂ると、腸内でシュウ酸とカルシウムが結合し、便として排出されます。これによりシュウ酸が血中に吸収されるのが抑えられ、尿中に含まれるシュウ酸を減らすことができます。
例えば、茹でたほうれん草をしっかり絞り、干しエビなどを砕いて上から散らしてもよいですね。ソテーにする場合も事前に茹でて絞ってから炒めましょう。最後に粉チーズなどを振りかければおいしくカルシウムをプラスできます。
飲み物から摂取するシュウ酸に注意
シュウ酸はほうれん草などの野菜以外にも、コーヒーやお茶などにも含まれます。習慣的に摂取する飲み物のほうが食品よりも過剰摂取につながりやすいため、注意が必要です。なかでも特に玉露には1,350mg、抹茶・煎茶には1,000mgと、ほうれん草よりも多く含まれます[*2]。
特に、尿路結石症にかかったことがあり、再発予防のために医師からシュウ酸の摂取を抑えるよう言われている人は、①しっかり茹でること、②茹でたあと絞ることを忘れないようにしましょう。併せてお茶の飲み過ぎにも注意してください。
ほうれん草はどのくらい食べていいの?
ほうれん草にはシュウ酸が多く含まれますが、摂取量に上限の目安があるわけではありません。シュウ酸が気になるものの鉄分などの栄養も摂れるので、野菜の1つとして上手に食事に取り入れたいものです。1日にどのくらいならば適量といえるのでしょうか。
適量の目安|小鉢1~2つ分くらい
厚生労働省の「健康日本21」によると、1日の野菜摂取量の目標は350g以上です[*4]。また、このうち緑黄色野菜は120g以上が望ましいとされます。
他の緑黄色野菜も一緒に摂ることを考慮すると、ほうれん草は1日70~140gくらいを目安にするとよいでしょう。ちょうど、小鉢1つ分程度のほうれん草の浸しが70g程度なので、1日の目安として小鉢1~2つと考えるとわかりやすいですよ。
その他の野菜などの食べ過ぎについてはこちら
<野菜など>
▶野菜 ▶トマト ▶玉ねぎ ▶キャベツ ▶ブロッコリー ▶人参 ▶きゅうり ▶大根 ▶ビーツ ▶かぼちゃ ▶セロリ ▶ニラ ▶ゴーヤ ▶おかひじき ▶春菊 ▶もずく ▶オクラ ▶もやし ▶ルッコラ ▶枝豆 ▶たけのこ ▶アボカド
<きのこ類>
▶きのこ ▶しいたけ ▶きくらげ
<芋類>
▶じゃがいも ▶山芋 ▶さつまいも ▶ヤーコン
まとめ
ほうれん草は鉄を多く含むので、肉や魚類とともにしっかり摂っていきたい野菜です。一方で、カロリーが低く体に良いからと過剰に摂取すると、シュウ酸の摂り過ぎにつながる可能性があります。あくまでいろいろな食品の1つとして適量の範囲で食べましょう。シュウ酸が気になる場合はしっかり茹でて絞ったり、カルシウムを一緒に摂るとより安心ですね。
(文:関水芳江 先生/監修:川口由美子 先生)
※画像はイメージです
[*1]文部科学省:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
[*2]日本医療機能評価機構:Mindsガイドラインライブラリ「尿路結石症診療ガイドライン2013年版」
[*3]農林水産省:消費者の部屋「ほうれんそうのお浸しを電子レンジで調理したが、アクが強くえぐみを感じた。アクが気になる場合は、茹でた方がよいのか教えてください。」
[*4]厚生労働省:健康日本21(第二次)
本来は「エネルギー」と呼びますが、本記事では一般的になじみのある「カロリー」と表記しています。
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、管理栄養士の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます